公開日:2026.07.29 更新日:2026.07.18
NEW不動産投資の利回り計算|表面・実質の違いと正確な計算方法・注意点
不動産の利回りを計算するときに確認すべきことの一つに「計算の前提条件」があります。前提条件が、満室想定の家賃なのか、実際の入居状況をもとにするのか、諸費用や修繕費を含めるのかによって、利回りは大きく変わります。
ここを知らずに利回りの数字ばかり見てしまうと、表面上は高く見えても、購入時の諸費用や管理費、空室期間など差し引いたあとに、手残りが少なくなるという事態に陥るかもしれません。
そこでこの記事では、実際の収支に近い形で利回りの良し悪しを判断できるように、不動産投資で使われる利回りの基本から、表面利回り・実質利回りの計算方法、計算に入れるべき費用、シミュレーション時の注意点まで解説します。
目次
不動産投資で重要な「利回り計算」の基本

不動産投資の利回りを計算するときは、まず計算で扱う「収入」と「費用」の範囲を整理することが大切です。同じ物件でも、満室時の家賃で計算するのか、実際の入居状況をもとにするのか、購入時の諸費用や運営コストを含めるのかによって、利回りの数字は変わります。
ここでは、利回り計算の基本となる以下の3点について学んでいきましょう。
- 利回りとは投資額に対する年間収益の割合である
- 表面利回りと実質利回りは使い分ける必要がある
- 広告の利回りは実際の手残りと異なることがある
利回りとは投資額に対する年間収益の割合である
利回りとは、投資した金額に対して、1年間でどれくらいの収益を得られるかを示す割合です。不動産投資では、年間の家賃収入を物件価格などの投資額で割って計算します。
たとえば、2,000万円の物件から年間120万円の家賃収入を得られる場合、単純計算の利回りは6%です。このように利回りを使うと、価格の違う物件でも「投資額に対してどのくらい収入を生むか」を比較しやすくなります。
ただし、この段階の利回りはあくまで大まかな目安であり、実際の運用では、家賃収入がそのまま手元に残るわけではありません。ここから税金や管理費、修繕費などを差し引いたうえで、どれくらい収益が残るのかまで確認する必要があります。
表面利回りと実質利回りを適切に使い分ける
不動産投資の利回り計算では「表面利回り」と「実質利回り」という2種類の利回りがあります。
表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割って求めた利回りをいいます。運営経費は反映されていませんが、計算しやすいため、物件広告や一覧比較でよく使われます。
実質利回りは、年間家賃収入から運営経費を差し引き、物件価格に購入時の諸費用を加えて算出した値をいいます。 管理費や修繕費、固定資産税などを反映できるため、購入後の手残りに近い収益性を確認しやすいのが特徴です。
広告の利回りは実際の手残りと異なることがある
広告に掲載されている利回りは、実際の手残りを示しているとは限りません。実際、満室時の想定家賃をもとにした表面利回りが掲載されていることが多く、実質利回りと大きな差があることもあります。
そのため、広告の利回りは物件を比較するための入口として考えましょう。具体的に比較検討をするなら、家賃収入、諸費用、運営コスト、空室リスクを入れて自分で計算し直す必要があります。
不動産投資で必要な利回りの種類と計算式

次に、不動産投資で用いられる利回りの種類と計算方法を見ていきましょう。ここでは以下の4種類を解説します。
| 利回りの種類 | 概要 | 計算式 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 物件価格に対する年間家賃収入の割合。大まかな目安を把握する際に使用。 | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 |
| 実質利回り | 諸費用や運営コストを差し引いた、より実態に近い収益性を確認する際に使用。 | (年間家賃収入 - 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100 |
| 想定利回り | 満室になった場合の年間家賃収入をもとにした収益性。一棟物件などで使用。 | 満室時の年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 |
| 現行利回り | 現在の入居状況で実際に得られている年間家賃収入をもとにした収益性。 | 実際の年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 |
表面利回りの計算方法
表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割って求める利回りです。管理費や修繕費、税金などの支出は含めず、物件価格に対してどれくらいの家賃収入を見込めるかを大まかに確認できます。
計算式は以下のとおりです。
- 表面利回り(%)=年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば、物件価格が2,000万円、年間家賃収入が120万円の場合、表面利回りは「120万円 ÷ 2,000万円 × 100」で6%となります。
注意点は、表面利回りには運用中にかかる費用が反映されていないことです。表面利回りはあくまで目安として扱い、気になる物件が見つかったら、実質利回りまで計算して確認しましょう。
実質利回りの計算方法
実質利回りは、年間家賃収入から運営経費を差し引き、購入時にかかる諸費用も含めて計算する利回りです。
計算式は以下のとおりです。
- 実質利回り(%)=(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100
たとえば、物件価格が2,000万円、購入時諸費用が150万円、年間家賃収入が120万円、年間経費が30万円の場合は、「(120万円 − 30万円)÷(2,000万円 + 150万円)× 100」で約4.2%となります。
なお、実質利回りを計算するときは、年間経費に何を含めるかを明確にしておきましょう。管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料、管理委託費、原状回復費などを入れると、より実際の手残りに近い数字になります。ただし、実質利回りにもローン返済は含めないのが一般的です。
想定利回りの計算方法
想定利回りは、満室になった場合の年間家賃収入をもとに計算する利回りです。主に一棟アパートや一棟マンションなど、複数の部屋がある物件で使われることが多く、満室時にどれくらいの収益を見込めるかを確認できます。
計算式は以下のとおりです。
- 想定利回り(%)=満室時の年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば、物件価格が5,000万円、満室時の年間家賃収入が600万円の場合、想定利回りは「600万円 ÷ 5,000万円 × 100」で12%となります。
ただし、想定利回りはあくまで満室を前提にした数字です。現在空室がある場合や、募集賃料が周辺相場より高く設定されている場合は、表示されている利回りどおりの収入を得られない可能性があります。
現行利回りの計算方法
現行利回りは、現在の入居状況で実際に得られている年間家賃収入をもとに計算する利回りです。満室想定ではなく、今の収入を基準にするため、購入直後の収益力を把握しやすい指標といえます。
計算式は以下のとおりです。
- 現行利回り(%)=実際の年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば、物件価格が5,000万円で、現在の年間家賃収入が480万円の場合、現行利回りは「480万円 ÷ 5,000万円 × 100」で9.6%となります。満室時の年間家賃収入が600万円なら想定利回りは12%ですが、現在2室が空室であれば、現行利回りとは差が出ます。
利回り計算に必要な諸費用

ここからは、実質利回りを計算する際に用いる諸費用を見ていきましょう。諸費用は大きく以下の2種類に分けられます。
- 購入時の初期コスト:物件を取得するために最初にかかる費用
- 年間のランニングコスト:物件を保有・運用し続けるために毎年かかる費用
購入時の初期コスト
購入時の初期コストは、物件を取得するために最初にかかる費用です。実質利回りを計算するときは、物件価格だけでなく、これらの諸費用も投資額に含めて考えます。
| 費用項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う手数料 | 取引額に応じた法定の上限額(例:物件価格2,000万円の場合は「物件価格×3%+6万円+消費税」) |
| 登記費用 | 所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる費用 | 固定資産税評価額や借入額に応じて数万円〜数十万円程度 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得したあとに課税される税金 | 固定資産税評価額×4%(標準税率)。ただし住宅の場合は3%に軽減(2029年3月31日まで)。宅地の場合は税率4%のまま課税標準が1/2に圧縮される特例あり(同期限まで)。別途、床面積等による軽減措置あり |
| 印紙税 | 売買契約書やローン契約書に貼る印紙代 | 契約金額に応じて1,000円〜数万円程度(※不動産売買契約書等の軽減措置は2026年度税制改正により2029年3月31日まで延長) |
| 融資関連費用 | 事務手数料、保証料、ローン契約費用など | 借入額の1〜3%程度、または数万円〜数十万円程度 |
| 火災保険料・地震保険料 | 建物にかける保険料 | 年1万〜10万円程度 |
| 司法書士報酬 | 登記手続きを依頼する際の報酬 | 5万〜15万円程度 |
なお、実際の金額は物件価格や固定資産税評価額、借入額、保険内容などによって変わります。
年間のランニングコスト
年間のランニングコストは、物件を保有し続けるために毎年かかる費用です。実質利回りを計算するときは、年間家賃収入からこれらの費用を差し引いて、実際の収益に近い金額を出します。
| 費用項目 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 管理委託費 | 管理会社に支払う管理手数料 | 家賃収入の3〜5%程度 |
| 修繕費 | 設備交換、原状回復、小規模修繕などの費用 | 年間家賃収入の5〜10%程度を見込む |
| 修繕積立金 | 区分マンションなどで毎月支払う積立金 | 月5,000〜20,000円程度 |
| 固定資産税・都市計画税 | 不動産を所有しているとかかる税金 | 固定資産税は課税標準額×1.4%(標準税率。自治体により異なる場合あり。住宅用地には小規模住宅用地等の課税標準の特例措置あり) |
| 火災保険料・地震保険料 | 保有期間中に継続してかかる保険料 | 年1万〜10万円程度 |
| 共用部の維持費 | 清掃費、電気代、設備点検費など | 月数千円〜数万円程度 |
| 広告料・募集費用 | 入居者募集時にかかる費用 | 家賃0.5〜2か月分程度 |
ランニングコストで見落としやすいのは、毎月発生する費用ではなく、数年に一度まとまって発生する修繕費や入居者募集費用です。毎年同じ金額が出ていくわけではありませんが、まったく見込まずに計算すると、想定と大きくずれる恐れがあるので気を付けましょう。
利回りの計算シミュレーション手順
ここからは、実際の数字を使って利回りを計算してみましょう。今回は、以下の条件の投資用物件を例に、表面利回りと実質利回りを順番に算出してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 2,000万円 |
| 年間家賃収入 | 120万円 |
| 購入時諸費用 | 150万円 |
| 年間経費 | 30万円 |
まずは年間家賃収入を物件価格で割って表面利回りを算出します。今回の例では、年間家賃収入が120万円、物件価格が2,000万円であるため、計算式は以下のようになります。
- 120万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 6%
次に、購入時諸費用と年間経費を入れて実質利回りを計算します。今回の例では、購入時諸費用が150万円、年間経費が30万円です。
まず、年間家賃収入から年間経費を差し引きます。
- 120万円 − 30万円 = 90万円
次に、物件価格に購入時諸費用を加えて、実際の投資額を出します。
- 2,000万円 + 150万円 = 2,150万円
この数字をもとに実質利回りを計算すると、以下のようになります。
- 90万円 ÷ 2,150万円 × 100 = 約4.2%
表面利回りでは6%だった物件でも、購入時諸費用と年間経費を入れると、実質利回りは約4.2%まで下がります。このように、費用を反映するだけで利回りの見え方は大きく変わります。
不動産投資の利回りを計算し、改善する具体的な手法

最後に、利回りを高めるための改善策を見ていきましょう。利回りは購入時点の条件だけで決まるものではなく、家賃設定や空室対策、管理コストの見直しによって改善できる場合があります。
利回り改善で考えたいのは、主に以下の2つです。
- 収益性を高めやすい物件を選ぶ
- 家賃・稼働率・コストを見直す
収益性を高めやすい物件を選ぶ
利回りを高めるには、運用中の工夫だけでなく、購入前の物件選びも重要です。もともと改善余地の少ない物件を選んでしまうと、家賃を上げたり空室期間を短くしたりする余地が限られます。
収益性を高めやすい物件の特徴には、以下のようなものがあります。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 家賃設定 | 周辺相場より低く、見直しの余地がある |
| 空室の理由 | 需要不足ではなく、募集条件や管理状態に原因がある |
| 建物・設備の状態 | 軽微な修繕や設備交換で入居付けがしやすくなる可能性がある |
| 管理コスト | 管理委託費や清掃費などに見直し余地がある |
| 購入価格 | 収支に合う価格まで交渉できる可能性がある |
たとえば、周辺相場より家賃が低い物件であれば、入居者の入れ替え時に賃料を見直せる可能性がありますし、空室の原因が古い設備や募集条件にある場合は、改善によって稼働率を上げられるかもしれません。
ただし、改善できそうに見える物件でも、修繕費が大きくなりすぎると利回りは下がります。そのため、購入前には改善後の家賃収入だけでなく、リフォーム費用や設備交換費を何年で回収できるかまで計算しておきましょう。
家賃・稼働率・コストを見直す
運用中に利回りを改善するには、家賃収入を増やす、空室期間を短くする、運営コストを抑えるという3つの視点で見直すことが大切です。
主な改善策は、以下のとおりです。
| 改善の方向性 | 具体策 |
|---|---|
| 家賃を見直す | 周辺相場や設備状況に合わせて、更新時や入れ替え時に賃料を調整する |
| 稼働率を上げる | 募集条件、広告料、内装、設備を見直して空室期間を短くする |
| コストを抑える | 管理委託費、保険料、清掃費、修繕費などを見直す |
| 修繕計画を立てる | 突発的な出費を減らすため、設備交換や大規模修繕の時期を把握する |
たとえば、空室期間が長い物件では、家賃を無理に維持するより、募集条件を見直して早く入居者を決めたほうが年間収入を確保しやすい場合があります。また、周辺相場より家賃が低い物件であれば、設備や内装を整えたうえで賃料を上げられるかもしれません。まずは現在の収支を見直し、どこに改善余地があるのかを明確にすることが大切です。
よくある質問
まとめ|不動産の利回り計算で押さえるポイント
不動産の利回りは、どの前提で計算されているかを確認することが大切です。広告の数字をそのまま受け取らず、購入時の諸費用や年間のランニングコストを入れて実質利回りを計算し直すひと手間が、購入後の想定外の出費や収支のズレを防ぐ判断材料になります。
「収支の見通しを立てながら、費用面のハードルを抑えて不動産投資を始めたい」とお考えの方は、アキサポにご相談ください。全国の空き家・古民家をリノベーションして賃貸物件として再生する仕組みで、初期投資を抑えながら現実的な収支計画を一緒に考えます。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。