公開日:2026.10.27
NEW譲渡契約書とは?種類・記載項目・注意点を整理

不動産や車、株式、債権などを譲渡することになり、「譲渡契約書とはどのような書類なのか」と初めて調べる方もいるでしょう。いざ契約書を用意しようとすると、何を書けばよいのか、自分の取引でも作成する必要があるのかなど、迷う点が出てきます。
譲渡契約書は、財産や権利を譲る際の条件や合意内容をまとめた書類です。譲るものによって記載する内容や注意点が変わります。
そこでこの記事では、譲渡契約書の基本的な意味から、作成する主な場面と種類、記載する項目、作成時の注意点、収入印紙や保管方法まで順に解説します。
目次
譲渡契約書とは

譲渡契約書とは、財産や権利などを一方から他方へ譲り渡す際に、譲渡する対象や条件など、当事者間の合意内容をまとめた契約書の総称です。
契約書には、何を譲渡するのかを明確にしたうえで、有償の場合は譲渡価格や支払方法、物を譲る場合は引き渡しの時期、権利を譲る場合は権利が移る時期や必要な手続きなどを定めます。
有償譲渡(売買)では、引き渡された財産に欠陥や数量不足があった場合に売主が負う「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の取り決めが欠かせません。民法上、買主は不適合を知った時から1年以内に通知する必要がありますが、契約書によって通知期限を短縮したり、特約で責任を免除したりすることも可能です。
譲渡契約書を作成する大きな目的は、誰が何を、どのような条件で譲渡したのかを明確にしておくことです。あらかじめ合意した内容を書面に残しておけば、後から「その条件は聞いていない」「そこまで譲るつもりではなかった」といった認識のずれを防ぎやすくなります。
また、譲渡後にトラブルが起きた場合でも、契約書に合意内容が残っていれば、当事者間で確認するための重要な資料になります。
なお「譲渡契約書」という一種類の決まった書式があるわけではありません。譲渡する対象によって、事業譲渡契約書、株式譲渡契約書、債権譲渡契約書などがあり、それぞれ記載する内容や注意点も異なります。
譲渡契約書を作成する主な場面
譲渡契約書は、財産や権利などを他者へ譲り渡す場面で作成されます。譲渡する対象は幅広く、事業や株式の譲渡、債権、不動産、車などの動産、知的財産などが挙げられます。
代表的な場面としては、以下のようなものがあります。
- 会社の事業の一部または全部を他社へ譲渡するとき
- 保有している株式を個人や法人へ譲渡するとき
- 売掛金や貸付金などの債権を第三者へ譲渡するとき
- 不動産や車、機械設備などを他者へ譲渡するとき
- 特許権や商標権、著作権などの知的財産を譲渡するとき
譲渡契約書の主な種類

譲渡契約書は、譲渡する対象が変われば、契約書に記載する内容や必要な手続きも変わるため、まずは自分の取引がどの種類に当てはまるのかを確認しておきましょう。
ここでは代表的な以下の5つを解説します。
| 種類 | 主な譲渡対象 | 備考・注意点 |
|---|---|---|
| 不動産・動産の譲渡契約書 | 土地、建物、車、機械設備、家具など | 引き渡し後の契約不適合責任などを明確にする |
| 事業譲渡契約書 | 会社の事業(設備、在庫、取引先との契約など) | 譲渡する範囲が多岐にわたるため内容が複雑になりやすい |
| 株式譲渡契約書 | 会社が発行した株式 | 譲渡制限株式の場合は会社の承認手続きが別途必要 |
| 債権譲渡契約書 | 売掛金、貸付金など | 債務者への通知や承諾、第三者に対する対抗要件などを確認する |
| 知的財産の譲渡契約書 | 特許権、商標権、著作権など | 権利の種類によって譲渡できる範囲や登録手続きが異なる |
不動産・動産の譲渡契約書
土地や建物、自動車、機械、家具などを他者へ譲る場合は、譲渡する対象や条件を明確にするため、契約書を作成しておくのが一般的です。
不動産では、所在地や地番、家屋番号などを記載して対象を特定し、譲渡価格や支払方法、所有権を移す時期、引き渡し条件などを定めます。取引後の認識違いを防ぐためにも、「どの不動産を、どの条件で譲るのか」がわかる内容にしておきましょう。
自動車や機械などの動産についても同様で、車台番号や製造番号などを使って譲渡する物を特定します。高額な物や代替のきかない物を譲る場合ほど、口頭だけで済ませず、条件を書面に残しておくと安心です。
事業譲渡契約書
事業譲渡契約書は、会社が行っている事業の全部または一部を、ほかの会社などへ譲渡するときに作成する契約書です。
事業譲渡では、設備や在庫、知的財産など複数の資産や権利が関係します。また、取引先との契約などは事業譲渡だけで自動的に移るとは限らず、相手方の承諾など個別の手続きが必要になる場合があります。そのため、何を譲渡し、何を残すのかを契約書で具体的に整理する必要があります。
契約書には、譲渡する事業の範囲や譲渡価格、支払方法、引き渡しの時期などを定めます。取引内容によって確認事項が多くなるため、ほかの譲渡契約書よりも内容が複雑になりやすい契約です。
株式譲渡契約書
株式譲渡契約書は、株主が保有している株式を、別の個人や法人へ譲渡するときに作成します。
契約書には、譲渡する株式の種類や数、譲渡価格、支払方法、譲渡日などを記載します。どの株式を、誰から誰へ移すのかを明確にすることが基本です。
譲渡制限株式の場合は、会社の承認が必要になります。そのため、契約書の内容だけでなく、定款や会社側で必要となる手続きもあわせて確認します。
債権譲渡契約書
債権譲渡契約書は、売掛金や貸付金など、他者へ金銭などを請求できる権利を第三者へ譲渡するときに作成する契約書です。
契約書には、債務者や金額、債権が発生した原因などを記載し、どの債権を譲るのかを特定します。似た内容の債権を複数持っている場合は、対象が曖昧にならないよう注意が必要です。
また、債権譲渡では、譲渡したことを債務者や第三者に主張するための手続きも確認が必要です。民法第467条では、債務者への対抗要件として、譲渡人から債務者への通知または債務者の承諾が定められています。債務者以外の第三者にも対抗するには、原則として、その通知や承諾を確定日付のある証書で行う必要があります。
知的財産の譲渡契約書
特許権や商標権、著作権などの知的財産を他者へ移す場合にも、譲渡契約書を作成します。
知的財産は目に見える物ではないため、どの権利を譲るのか、どこまでの範囲を譲渡するのかを契約書で明確にしておくことが大切です。たとえば著作物であれば、対象となる作品や権利の範囲が曖昧なままだと、後から利用方法を巡って認識が食い違うことがあります。
また、権利の種類によって、譲渡できる範囲や必要な手続きも異なります。たとえば、特許権や商標権では移転登録が必要となり、著作権では譲渡する権利の範囲を契約書で明確にしておくことが重要です。譲渡する側と受け取る側で、引き継ぐ権利と必要な手続きを確認しておきましょう。
譲渡契約書に記載する主な項目
譲渡契約書に記載する内容は取引によって異なり、すべての契約に共通する決まった項目があるわけではありません。一般的には、譲渡する対象や条件を明確にするため、以下のような項目を確認します。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 当事者 | 誰が譲渡する側・譲り受ける側なのか |
| 譲渡対象 | 不動産、動産、株式、債権、知的財産など、何を譲るのか |
| 譲渡価格 | いくらで譲渡するのか |
| 支払方法・支払時期 | 一括・分割などの支払方法や期限 |
| 引き渡し・譲渡の時期 | いつ対象を引き渡し、権利を移すのか |
| 費用の負担 | 登記費用や手続き費用などをどちらが負担するのか |
| 譲渡後の責任 | 契約後に問題が見つかった場合の対応や責任範囲 |
| 契約解除 | どのような場合に契約を解除できるのか |
| 損害賠償 | 契約違反によって損害が生じた場合の対応 |
| その他の特約 | 取引ごとに必要となる個別の条件 |
また、必要な項目は譲渡するものによって変わります。事業譲渡では譲渡する資産や契約の範囲、債権譲渡では対象となる債権、知的財産では譲渡する権利の範囲など、取引ごとに追加で定める内容があります。
そのため、譲渡契約書は共通項目を押さえたうえで、実際の取引内容に合わせて必要な条項を加えていくことが基本です。
譲渡契約書を作成するときの注意点

譲渡契約書を作成するときは、ひな形に必要事項を埋めるだけでなく、実際の取引内容に合っているかを確認することが大切です。特に、譲渡する対象や責任の範囲が曖昧なままだと、契約後のトラブルにつながりやすくなります。
ここでは、作成時に特に注意したいポイントを確認していきましょう。
譲渡対象を具体的に特定する
譲渡契約書では、まず「何を譲るのか」を具体的に特定する必要があります。対象が曖昧だと、契約後に譲渡範囲を巡って認識のずれが起こりやすくなります。
不動産であれば所在地や地番、家屋番号などを記載し、動産であれば車台番号や製造番号などを使って対象を明確にします。株式や債権、知的財産などについても、種類や数量、対象となる権利の範囲が分かるように整理しておきましょう。
複数の資産や権利をまとめて譲渡する場合は、別紙や一覧表を使って整理する方法もあります。契約書を読んだときに、第三者でも譲渡対象を判別できる程度まで具体化しておくことが重要です。
雛形をそのまま使わない
インターネット上には譲渡契約書の雛形が多くありますが、あくまで雛形は一般的な取引を想定したものです。実際に契約書を作成する際には、自分の取引内容に合わせて条項を確認し、必要に応じて修正する必要があります。
たとえば、譲渡価格の支払時期や引き渡しの条件、契約後に問題が見つかった場合の責任などは、取引ごとに内容が異なります。雛形をそのまま使うと、必要な取り決めが抜けていたり、反対に自分の取引には合わない条項が含まれていたりすることもあります。
そのため、雛形は契約書の構成や記載項目を確認するための参考として使い、それぞれの条項が自分の取引に適しているかを一つずつ確認しましょう。
高額・複雑な取引は専門家に相談する
譲渡する金額が大きい場合や、複数の権利や当事者が関わる場合は、専門家に相談しながら契約書を作成したほうが安心です。
たとえば、事業譲渡や株式譲渡、複雑な債権譲渡では、契約条件だけでなく、会社法上の手続きや税務、登記なども関係することがあります。不動産の譲渡でも、権利関係や登記の状況によって確認事項が増える場合があります。
どの専門家に相談するかは取引内容によって異なります。契約条項や法的なリスクについては弁護士、登記が関係する場合は司法書士、税金については税理士など、必要に応じて相談先を分けるとよいでしょう。
譲渡契約書に収入印紙は必要?

譲渡契約書に収入印紙が必要かどうかは、契約書の名称ではなく、実際にどのような取引内容が記載されているかによって決まります。すべての譲渡契約書に収入印紙が必要になるわけではありません。
たとえば、土地や建物などの不動産譲渡(売買)に関する契約書は「第1号の1文書」に該当し、記載金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。なお、不動産譲渡契約書のうち記載金額が10万円を超えるものは、租税特別措置法により印紙税の軽減税率が適用されます(現行の適用期限は2027年3月31日まで)。一方で、著作権の譲渡契約書などは非課税文書として扱われます。
一方、債権譲渡契約書は「第15号文書」に該当し、記載された契約金額が1万円未満なら非課税、1万円以上または契約金額の記載がない場合は1通につき200円です。
このように、同じ「譲渡契約書」でも、譲渡する対象や契約内容によって課税の有無や税額が変わります。契約書を作成するときは、名称だけで判断せず、どの課税文書に該当するのかを国税庁の印紙税額一覧表などで確認すると安心です。
譲渡契約書の保管方法
譲渡契約書は、合意した条件を確認するための資料としても利用するため、契約を締結したあとも、内容を確認できる状態で保管しておくことが大切です。
たとえば、原本は紛失しないようにファイルや金庫で保管し、閲覧用にコピーやスキャンデータを残しておく方法があります。複数の契約書を管理する場合は、契約日や取引相手、譲渡対象ごとに整理しておくと、あとから探しやすくなります。
また、税務や会計、会社法上の書類保存が関係する取引では、契約書を一定期間保管しなければならない場合があります。必要な保存期間は契約の種類や当事者の立場によって異なるため、法人取引や高額な契約では、税理士や専門家に確認しておくと確実です。
譲渡契約書を作成しなかったからといって、すべての譲渡契約が無効になるわけではありません。契約の種類によっては、当事者同士の合意によって成立するものもあります。
契約自体は口頭(諾成契約)でも有効に成立しますが、書面がないと合意内容を客観的に立証できません。さらに、不動産登記の移転手続き(不動産登記法)や、第三者への対抗要件具備(民法第467条・177条など)を進める上でも、契約書の作成は実質的に必須となります。
そのため、特に金額が大きい取引や、譲渡する対象・条件が複雑な場合は、口頭だけで済ませず、契約内容を書面に残しておくと安心です。
個人同士で財産を譲渡する場合でも、契約書を作成しておくことをおすすめします。
たとえば、車や高額な家具、機械などを知人同士で譲る場合、当初は問題がなくても、支払時期や引き渡し後の不具合などを巡って認識が食い違うことがあります。相手との関係が近い場合ほど、細かな条件を口約束で済ませてしまいやすいため注意が必要です。
契約書には、譲渡するものや金額、支払方法、引き渡し時期などを記載し、双方で内容を確認しておきましょう。
譲渡契約書は、取引の内容によっては電子契約で作成することもできます。電子契約では、紙に署名・押印する代わりに、電子署名などを利用して契約を締結します。
電子契約を利用すれば、契約書の印刷や郵送、原本の保管といった手間を減らせるのがメリットです。また、電子的に作成された契約書は、一般に印紙税の課税文書には当たらないため、紙の契約書のように収入印紙を貼る必要もありません。
ただし、契約の種類によっては書面や一定の方式が求められる場合もあります。電子契約を利用する際は、自分の取引が電子化できるか、必要な手続きや保存方法に問題がないかを事前に確認しておきましょう。
まとめ|譲渡する内容と条件を明確にして契約書を作成しよう
譲渡契約書を作成するときは、まず「何を、どのような条件で譲るのか」を整理することが大切です。不動産や動産、株式、債権など、譲渡する対象によって必要な記載内容や手続きは変わります。
契約書には、譲渡する対象だけでなく、金額や支払方法、引き渡しの時期、契約後の責任なども具体的に記載します。こうした内容をあらかじめ書面に残しておけば、契約後に認識が食い違ったときにも、双方で合意内容を確認しやすくなります。
雛形を利用する場合も、そのまま使うのではなく、自分の取引に合った内容になっているかを確認しましょう。高額な取引や権利関係が複雑な場合は、契約を結ぶ前に専門家へ相談し、必要な手続きまで含めて確認しておくと安心です。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






