公開日:2025.07.03 更新日:2025.08.12
空き家を放置するとどうなる?近隣トラブルとその回避策を徹底解説

親が住んでいた実家を相続したり、空き家の所有者が病院や施設に入院・入所したりなどで、空き家を放置してしまっているという方は少なくないのでは?全国的に増えている空き家は、近年では社会的な問題にもなっています。そこで、空き家を放置した場合に招く近隣トラブルについてご紹介。発生する金銭的なリスク、回避方法についても解説します。
空き家の放置が招く6つの近隣トラブルとは?

深刻化している日本の空き家問題。そのなかでも特に問題になっているのが、空き家の放置によるさまざまな近隣トラブルです。まずは、長いあいだ人の手で管理されていない状態によって起こりうる、代表的な近隣トラブルをご紹介します。
廃墟化し空き家が倒壊する
時間の経過によって空き家の老朽化が進むと、柱や壁、天井といった建物を支える構造的な骨組みの強度が低下します。これにより建物の倒壊が高まってしまい、近隣住宅や通行人を傷つけるなど、周囲を巻き込んでしまいかねません。
また、台風や積雪などの自然災害による倒壊の危険もあります。地震が起きやすい日本では、地盤の強い揺れによる倒壊のリスクも考えられるでしょう。特に、現行の建築基準よりも耐震性の低い旧耐震基準の建物は要注意。万が一、全壊や半壊を免れても、最悪の場合は近隣の人の命を危険にさらしてしまうリスクも考えなければなりません。
火災による延焼や屋根の飛散など
放置された空き家は、火災が起こりやすい傾向にあります。空き家で火災が起こる主な原因は、外部からの放火やタバコのポイ捨て、ガス漏れ、配線機器のトラブル、漏電などです。
このなかでも、空き家の火災の原因で特に多いのが意外にも放火です。住居者の居ない空き家は第三者が侵入しても気づかれにくく、放火のターゲットにされやすくなります。また、タバコのポイ捨てにより、伸び放題になっている雑草に引火してしまうケースも。ガス漏れや配線機器のトラブルでは、老朽化に気づかず放置し続けて、そこから火災に発展することもあるでしょう。
空き家が出火元となり、周辺の建物も巻き込んで延焼や屋根が飛散した場合は、近隣に迷惑をかけることになってしまいます。
伸びきった雑草による害虫や害獣の被害
空き家の敷地内に生える雑草を放置しておくと、地域の美観が損なわれるだけでなく、アリやハチ、蚊といった害虫の絶好の住処に。それらの虫を狙うネズミや野鳥、野良猫など、ほかの動物までも呼び寄せてしまうことになりかねません。
そうして敷地内で発生した害虫や空き家に住み着いた害獣が隣家に入り込み、近隣トラブルに繋がる可能性が高まります。また、雑草の花粉などで、アレルギー症状や健康被害を引き起こして、苦情の原因になることも考えられるため注意が必要です。
不法侵入など犯罪の温床になりやすい
屋根や外壁が傷んでいる、庭が荒れている、窓ガラスが割れている、ポストに郵便物が溜まっている……。このように人が住んでいる気配がない空き家は、侵入しても気づかれにくいだろうと思われ、空き巣に狙われやすくなります。
空き家に家具や家財を残したままにしている場合もあるでしょう。なかには、そのような私物を勝手に使用したり盗んだりといった目的を持っている不法侵入者もいます。
また、生活困窮者が空き家に長く住み着いたり、薬物の栽培や詐欺などの犯罪の拠点として利用されたりする可能性も。空き家の放置が犯罪の発生原因となってしまうのです。
近隣の資産価値を下げてしまう
空き家を放置し続けると、所有している空き家そのものの資産価値はさることながら、近隣エリアの不動産の資産価値にも大きな影響を与えてしまいます。
雑草が生い茂り、害虫や悪臭の発生で地域の美観が損なわれている状況では、周辺地域にある物件を購入したいと思う方は少ないでしょう。そのほかにも、空き家はさまざまなリスクが起こりやすいため、近隣に空き家があることを理由に値引きの交渉などが入るケースも想定できます。
これらの結果から、空き家のあるエリアは、不動産の売却や賃貸がむずかしいと判断されて、不動産市場において需要が低くなってしまうのです。
不法投棄されたゴミが近隣住民に大迷惑をかける
放置された空き家は人の出入りがないと判断されやすく、不法投棄されたゴミが近隣エリアに影響を及ぼし、トラブルに発展するケースも珍しくありません。空き缶やタバコの吸い殻、ガムの包み紙といった日常ゴミから、家具や家電、自転車、タイヤといった粗大ゴミまで、さまざまなものが不法投棄される可能性があります。それらはやがてゴミの中身が腐敗し、悪臭とともにコバエなどの害虫が大量発生することになります。
また、空き家にすでにゴミが捨てられていると、「あそこにはゴミを捨てて良い」と考える心理が生まれやすく、さらなる不法投棄を招き、ゴミ屋敷化する恐れもあり、早期対処が求められます。
法律上、不法投棄されたゴミであっても、空き家の管理責任は空き家の所有者にあるため、責任を問われてしまいかねません。そうなる前に手を打つことが必要です。
空き家の放置による金銭的リスクとは?

空き家を放置し続け、その空き家が罰金や罰則の対象となるのは避けたいもの。ここからは、金銭的なリスクについて解説します。
固定資産税・都市計画税がかかり続ける
不動産を所有していると税金がかかりますが、人が住んでいない空き家も例外ではありません。居住者の有無に関係なく、不動産のひとつである資産となります。そこに課される税金が固定資産税です。場合によっては、都市計画税が課されることもあります。
・固定資産税
固定資産税とは、国内にある不動産に課される地方税(普通税)のこと。不動産の所在地を管轄する市町村に市町村税として納めます。
・都市計画税
都市計画税とは、市街化区域内に土地や家屋を持っている人に限られる地方税(目的税)のこと。都市計画事業や土地区画事業の費用に充てるための市町村税(東京23区の場合は都税)です。
さらに2023年3月には、空き家の固定資産税に関わる法改正がありました。これにより、特定空家に指定されると、住宅用地特例が解除されるため、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
空家対策特別措置法が課せられ行政指導を受ける
空き家の放置が社会的に大きな問題となっている今。この状況を回避するために、国が定めたルールがあります。それが「空家等対策の推進に関する特別措置法」、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」とされ、特定空家に対する行政指導や命令の法的根拠となります。
周辺地域に悪影響を及ぼす可能性がある「特定空き家」と判断されると、物件の所有者は空き家を適切に維持・管理をするよう、自治体から助言、指導、勧告といった行政指導を受ける場合があります。
さらに勧告しても状況が改善されない場合、自治体は命令を出すことができます。従わない場合は「空家等対策特別措置法」に基づき、50万円以下の罰金が科されることになります。
参照元:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)| 国土交通省
倒壊による損害賠償
人が住まず管理されていない空き家は、換気不足によって湿気がこもりやすくなり、劣化のスピードが速まります。特に木造住宅では、木材の腐食やシロアリ被害などが進みやすくなるでしょう。柱や壁、土台の強度が低下することで、空き家が倒壊することが考えられます。
空き家を放置し続けたことで物件が倒壊し、隣家や通行人に被害を与えてしまった場合には、民法717条に基づき、倒壊などによる他人への損害については、空き家の占有者または所有者が損害賠償責任を負うことになります。
「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」
参照元:民法 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任 第七百十七条|e-Gov法令検索
劣化した空き家は非常にもろく、台風や積雪などの自然災害をきっかけに、近隣トラブルや重大事故に発展する可能性は低くありません。空き家の放置は、とてもリスクのある行為といえます。
空き家トラブルを回避するには?

空き家の放置は近隣トラブルを招きやすくなるだけでなく、空き家の維持管理にかかるコストなど、金銭的な負担は少なからず発生します。そのため、早期に具体的な対応策を検討・実行することが、被害やコストの抑制に直結します。最後に、空き家による近隣トラブルを防ぐための具体的な対策方法をご紹介します。
賃貸物件にする
空き家といっても、想い出が詰まった家を手放したくない…という人もなかにはいるはず。そんな方におすすめなのが、空き家を賃貸物件にすること。この方法は、管理の手間が省けるうえに家賃収入を得られるため一石二鳥です。将来的に自分や子供が住みたいとなった時に、選択肢を残しておくこともできます。空き家の築年数や立地などが賃貸物件としてニーズの高い条件であれば、家賃を高く設定することもできるでしょう。
一方で、空き家を賃貸物件として活用する前に、リフォームを行わなければならないケースがあります。老朽化が進んだ空き家は、大規模なメンテナンスが必要になることも。なるべく少ない費用で空き家を魅力的によみがえらせるためには、リフォームや賃貸物件に詳しい相談先を見つけることが大切です。
そのままの状態で売却する
なるべく時間と手間をかけずに空き家トラブルを回避するなら、不動産会社や買取業者などに直接売却するのもひとつの手。基本的には解体や修繕の費用が掛からず、現状のままで売却できるため、少しでも手間なく空き家をどうにかしたいという方におすすめです。すぐにまとまった資金を得られるため、現金化して家族で平等に分配することも検討できます。
また、光熱費や保険料がかからず、固定資産税の納税が不要になります。定期的に掃除をする必要もなく、わずらわしい維持管理も回避できます。
空き家を解体して更地化し、土地として売却する
良い条件で売却できるのは、空き家の立地が良かったり築年数が浅かったりなど、買い手がつきやすい状態である場合に限ります。そのままでは買主がつきにくい条件の場合におすすめなのが、空き家を解体して更地にした状態での売却です。土地の状態が一目で分かりやすいうえに、買主がすぐに土地を自由に使える更地の需要は高く、一般的には売却に繋がりやすいといえます。
ただし、空き家の解体・撤去には費用がかかります。そのうえ更地にしてしまうと固定資産税の優遇が受けられなくなるため、支払う税金が増えてしまいます。仮に更地にした土地が売れ残ってしまった場合、納税し続けなければならないリスクも考えなければいけません。土地の需要が確実にあることを確かめてから、解体を検討するようにしましょう。
自分たちで住む
所有している空き家の状態が良く、軽微なリフォームで再生できる場合は自分たちで住むという選択肢があります。自分で住んでしまえば、日々の生活のなかで自然と掃除や管理が必要になるため、近隣トラブルに繋がるリスクは低くなるでしょう。
しかし、空き家の築年数が古く老朽化が進んでいる場合は、リフォームの費用がかさんでしまいます。シロアリの被害などで柱が腐食している場合は、倒壊のリスクがあるため長く住むことはできません。さらに耐震性や断熱性は、自分では判断しにくいため、プロにチェックしてもらうことも必要です。
空き家管理代行サービスを活用する
空き家の放置リスクを抑える手段として注目されている「空き家管理代行サービス」とは、空き家の所有者に代わって専門業者が空き家の管理を行うことです。空き家が遠方にあったり、仕事や育児で管理がむずかしかったりする場合におすすめです。一般的に空き家代行サービスでは、外壁や庭木、雨漏り、カビなどの確認、郵便物の管理や簡易清掃といったサポートを行っています。さまざまな近隣トラブルを回避できるうえに、空き家の傷みを抑えることもできます。
空き家を活用して収益化を図る
空き家を有効活用して収益化を図る方法もあります。例えば以下のような方法があります。ただし、集客にはターゲット層がアクセスしやすい立地にあるのかどうかがポイントになります。
・駐車場
駅や観光地など、人が集まる場所へのアクセスが良い
・資材置き場
近くに工場や土木会社があり、資材置き場として利便性が高い
・民泊やレンタルスペース
周囲に競合となるホテルや旅館、施設が少なく交通アクセスが良い
また、利用者とのトラブルに備えたリスク管理や、効率的でスムーズな運用体制に整えることも、空き家を活用して収益化を図る場合の秘訣といえるでしょう。
眠っている空き家を対処して近隣トラブルを回避
空き家を放置し続けることにメリットはありません。売却か賃貸か、それとも土地活用か。むずかしい選択を迫られますが、近隣トラブルを回避するためにも、できるだけ早い段階での決断がおすすめです。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。