公開日:2025.07.29 更新日:2025.07.29
NEW空き家の売却ガイド~費用・税金・手続きの流れから有効活用まで徹底解説

空き家の売却を検討している方の中には、固定資産税やメンテナンス費用、防犯や近隣トラブルなどの心配事を抱えている方も多いのではないでしょうか。売却はこれらの課題解決に有効な方法ですが、進め方が分からないと、第一歩が踏み出しにくいですよね。
そこで本記事では、空き家の売却を検討している方に向けて、必要な費用や税金、手続きの流れをわかりやすく解説。さらに、売却後の活用方法や知って得する制度も紹介します。将来に向けた一歩を踏み出すために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
空き家を売却するメリットとデメリット

空き家には維持をする手間がかかったり放置するリスクがあったりするため、早く売却したいと思っている方は多いと思います。
しかし、空き家の売却は必ずしもベストな対応とは限りません。以下に空き家売却のメリットとデメリットをまとめたので比較してみましょう。
空き家売却のメリット
- 維持管理が必要なくなる
- 固定資産税や維持管理費を支払わなくてよくなる
- 現金化できる
空き家売却のデメリット
- 物件を手放す必要がある
- 継続的な収入につながらない
- 売却手続きに手間・時間・費用がかかる
- 意外と税金がかかる
売却の大きなメリットは、日常的な維持管理と、固定資産税や維持費といった「所有するだけでかかるコスト」から解放されることです。自分の手を離れることで、経済的・精神的な負担が軽くなるのは嬉しいポイントです。
一方、デメリットはメリットの裏返しとなっています。物件を手放す必要があるので、将来的に価値が出ても対応できませんし、収入が得られるのは一度だけです。
また、仲介手数料や譲渡所得税、契約書の印紙代など、意外と諸費用が多く発生することも覚えておく必要があります。
空き家を売却する主な方法と選び方

空き家を売却する代表的な方法として、以下の選択肢が挙げられます。
- そのまま売却する
- 更地にして売却する
- リフォーム・リノベーションをしてから売却する
- 不動産会社の買取を利用する
- マッチングサイトや空き家バンクを活用する
売却方法を選ぶポイントで重要なのは「自分の悩みを解決できるか」「物件の特徴とマッチしているか」「メリット・デメリットに納得できるか」です。
これらのポイントを理解せずに方法を選んでしまうと、あとから思わぬ損をしたり、高く売れるチャンスを逃したりする可能性があります。
その点を踏まえたうえで、各売却方法の基本的な特徴を見ていきましょう。
そのまま売却する場合の特徴
空き家を現状のまま売る方法は、リフォームや解体工事を行わないので、初期費用を少なく抑えることができ、売却手続きを始めるまでの時間も比較的短いです。お金・時間・手間をなるべくかけずに空き家を手放したい方に向いています。
ただし、空き家の老朽化が進んでいる場合は、なかなか買い手が付かなかったり、売却価格が低くなったりするリスクがあります。物件に特筆すべき魅力がない場合は、長期戦になることも覚悟しておきましょう。
購入希望者が現れた場合は、内見時の説明や物件情報の開示をなるべく丁寧に行い、市場に合った価格を提示することが重要です。
更地にして売却するメリット・デメリット
更地にして売却するメリットは、住宅に限らず、店舗や駐車場、倉庫など、幅広い目的で土地を探している人にアプローチできることです。土地が整っているうえに空き家を解体する手間と費用を節約できるので、すぐに建築に取り掛かりたい人からすれば理想的な状態といえるでしょう。
一方のデメリットは解体費用がかかる点です。また、更地にすると、固定資産税の「住宅用地の特例」が適用されなくなり、税額が最大で6倍に跳ね上がるリスクがあります。すぐに売れる見込みがない場合、更地にする前に固定資産税対策をしっかり行っておく必要があります。
リフォームやリノベーション後に売却する方法
空き家をリフォームまたはリノベーションしてから売却する方法は、物件の魅力を回復させる効果が見込めます。売却価格を高められる可能性があるので、高く売りたい方には魅力的な方法だといえます。
ただし、工事費や時間がかかりすぎると、費用対効果が見合わなくなる可能性も出てきます。あらかじめ相場との兼ね合いや投資回収の見込みをしっかりと確認しておきましょう。
不動産会社への買取依頼
不動産会社に直接買い取ってもらう方法は、スピーディーな現金化を重視したい方におすすめです。仲介を挟まないので、不動産会社との間で条件が整えば、すぐ売却することができます。
ただし、一般的に買取価格は売却価格よりも低くなることには注意が必要です。再販売をする必要があることから概ね売却価格の70%程度が相場といわれています。
マッチングサイトを活用する売却方法
空き家のマッチングサイトとは、所有者が自由に物件を掲載できるウェブサービスです。不動産会社を通さずに全国の買い手と直接つながることができるため、掲載料や手数料を抑えられるメリットがあります。
一方で、問い合わせ対応や内覧対応、契約手続きは自己責任で行う必要があるため、慎重に行わないとトラブルに発展する恐れがあります。
中には「アキサポ」が運営している「空き家の掲示板」のように、商談時に不動産会社が立ち会ってくれるサービスもあります。要所要所で専門家を頼って、安全な取引を心がけましょう。
空き家売却にかかる主な費用

空き家を売却する際に発生する主な費用は、大きく以下の2種類に分類されます。
- 仲介手数料をはじめとした諸費用
- リフォームや解体で発生する費用
特に気をつけたいのが仲介手数料やリフォーム・解体費など、物件の状態や売却方法によって大きく変動するコストです。事前に正しい額を把握しておかないと、売却後に「思ったより手元に残らなかった」という事態になりかねません。
それぞれどのような点に注意すべきか、具体的に見ていきましょう。
仲介手数料をはじめとした諸経費
不動産会社を通じて売却する場合は、以下のような諸経費が発生します。
- 仲介手数料
- 登記簿謄本・印鑑証明書などの取得費用
- 書類の郵送費や交通費などの実費
中でも特に大きな負担となるのが仲介手数料です。これは不動産会社に支払う成功報酬で、売却価格が400万円を超える場合には「売却価格 × 3% + 6万円(+消費税)」が上限と定められています。
また、登記手続きの際に必要となる登記簿謄本や印鑑証明書の取得費用は、1通あたり数百円程度ですが、複数枚が必要になることもあります。あらかじめ多めに見積もっておくと安心です。
加えて、郵送費や役所への移動にかかる交通費などの実費も軽視できません。1回ごとの金額は少額でも、手続きのたびに発生するため、最終的に想定より高額になるケースもあります。
リフォームや解体で発生する費用
売却前に建物の老朽化が目立つ場合、リフォームや解体が必要になることもあります。水回りの改修だけでも100万円以上かかることがあり、屋根や外壁まで手を加えると数百万円以上かかる場合も出てきます。
解体費用は規模によって変わりますが、木造住宅で120〜300万円程度が相場です。ただし、地中埋設物やアスベストが見つかると追加費用が発生することがあります。
空き家を売却する際に負担する税金と節税策

空き家の売却にあたっては税金の負担も考慮する必要があります。売却によって得られた利益(譲渡所得)に対して課される税金のほか、契約書や登記にかかわる税も把握しておきましょう。
ただし、一定の条件を満たせば控除や軽減措置を活用することで税負担を減らすことも可能です。そこでここでは、代表的な税金とその節税策について紹介します。
空き家の売却にかかる譲渡所得税・印紙税・登録免許税の基礎知識
まず空き家の売却にかかる税金の全体像を知りましょう。空き家の売却には主に以下の税金がかかります。
- 譲渡所得税・住民税
- 登録免許税
- 印紙税
譲渡所得税と住民税は、空き家とその土地を売却して得た売却益に対して課税されます。物件ごとに個別に計算する必要があるので、事前に税理士や専門家に確認しておくと安心です。
また、登録免許税は各種登記を行う際に課される税金で、土地及び建物それぞれにかかります。売買による所有権移転の場合は、どちらも不動産価額の2%となっています。
ただ、居住用住宅の売買の場合は軽減措置が用意されているので、節約のために制度を確認しておきましょう。以下の記事で詳しく解説しています。
そして、印紙税は契約額に応じて400円~60万円が課されます。該当する額の収入印紙を契約書に貼り付けます。
空き家の売却に使える特別控除や軽減税率の活用方法
空き家の売却に使える特例制度として代表的なのが「居住用財産の3,000万円特別控除」です。これは、自分が住んでいた家を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度ですが、以前住んでいた空き家でも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば適用されます。
また、空き家の所有期間が10年を超えている場合は、長期譲渡所得に対して軽減税率の特例が使えることもあります。具体的には、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分については10%、6,000万円を超える部分については15%+600万円が適用されます。
相続した空き家の売却で利用できる特例制度
相続した空き家を売却する際には、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例制度を利用できる場合があります。これは、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できるというものです。
この制度の対象となる基本条件は、以下の3つの条件に当てはまる場合です
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
たとえば、1980年(昭和55年)に建てられた親が住んでいた一戸建てを相続したものの、空き家になってしまっている場合、この特例の対象になる可能性があります。
なお、特例の適用を受けるには、基本条件に加えて細かな要件に該当する必要があります。売却を検討している場合は国税庁のウェブサイトをよく確認してから動き出しましょう。
No.3306:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
空き家の売却手続きの流れと注意点

空き家を売却する際には、名義や書類の確認から契約、引き渡しまで、いくつかの段階を順に踏む必要があります。特に相続によって取得した空き家は、登記や所有者情報の整理に時間がかかるケースもあるため、早めの準備が肝心です。以下では、売却の基本的な流れと各段階での注意点をわかりやすく解説します。
売却前の準備:名義変更や必要書類を確認しよう
まず最初に確認したいのが、空き家の所有者情報です。登記名義が故人のままになっていることも多く、相続登記を済ませておかないと売却することはできません。なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されており、正当な理由なく怠った場合は過料の対象となる可能性があるため、注意が必要です。
登記簿謄本や公図、固定資産税の納税証明書などを用意し、法務局や市役所で名義や物件情報をチェックしましょう。
また、空き家の相続人が複数いる場合には、遺産分割協議書の作成が必要になることがあります。これらの書類の準備や法的手続きには想像以上に時間がかかるため、スケジュールには余裕をもたせておくと安心です。
物件の売り出し:不動産会社を選ぶポイントと比較のコツを知ろう
名義や書類の確認が済んだら、次は売却に向けて物件を整える段階に入ります。まずは空き家の状態をチェックし、庭の草刈りや室内の清掃、不要な家具の処分などを済ませておきましょう。第一印象を良くしておくことで、内覧時の評価が大きく変わります。
この段階で特に重要なのが不動産会社の選定です。不動産会社によって対応力や提案力、得意な物件などが異なるので、必ず複数の不動産会社に査定を依頼して、査定額や担当者の対応を比較しましょう。
不動産会社は査定額の高さだけで判断せず、次のような観点から比較するのがポイントです。
- その地域の相場や売却事例に詳しいか
- 査定額に明確な根拠を示してくれるか
- 担当者の対応が丁寧で誠実か
- 質問への回答が具体的で、レスポンスが早いか
中には、相場より明らかに高い金額を提示して受注を狙い、のちに値下げを前提にした長期掲載へ持ち込むケースもあるため注意が必要です。金額の妥当性はもちろん、担当者との相性や信頼感も重視しましょう。
売買契約:契約内容の具体的な取り決めに注意
買主が決まったら、売買契約の締結に進みます。契約書には、売買価格・引き渡し時期・手付金・違約金といった金額に関することに加えて建物に付帯する設備の有無やその状態、境界線の明示、残置物の取り扱いなど、物件の現況に関する内容も記載しておきましょう。
特に空き家の場合、長期間使われていないことによる建物や設備の劣化があることも多いため、不具合があれば必ず買主に伝え、契約書に反映させておきましょう。状況に応じて、事前にインスペクション(建物状況調査)を行っておくと、トラブル回避や価格交渉の参考になります。
引き渡し:売主・買主の双方が納得のいくやり取りを
引き渡しの段階では、売主と買主が一緒に建物や設備の現況を確認し、建物の状態や設備の動作確認などを行います。これらの確認結果は、あとから「言った・言わない」のトラブルにならないように現況確認書や引渡確認書として文書に残すと安心です。
また、引き渡しに関して、残代金の支払いや、鍵の受け渡し、登記申請の書類提出といった重要なやり取りが多く行われます。不動産会社や司法書士のサポートを受けながら、必ず正確に手続きが進むようにしましょう。
まとめ~空き家を上手に売却して有効活用につなげよう
空き家の売却は慣れない手続きが続くだけでなく、費用や税金面にも注意しなくてはならないので、多くの方が不安に思うことでしょう。だからこそ、今回紹介したように全体像を把握してから進めていくことが欠かせません。
また、売却方法ごとのメリットとデメリットや節税方法を知っておくことも、損をしないために重要なことです。実際にどの方法が適しているのか、具体的にどの程度節税できるのかなどは専門家に相談するのがベストなので、不動産会社や税理士としっかりコミュニケーションを取って進めていきましょう。
空き家の売却は大きなお金が動く可能性がある大切なステップです。空き家の有効活用に向けて、まずは自分に合った方法を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。