公開日:2025.09.30 更新日:2025.09.25
【2024年改正対応】生前贈与で土地の名義変更をする全知識|かかる税金や手続き方法を解説

生前贈与は、財産の一部または全部を生きているうちに譲渡する手続きのことで、土地の名義変更もそのひとつです。相続と比べてどのようなメリットや税金の違いがあるのか、そして具体的な手続きはどのように進めるのか、疑問をお持ちの方は多いでしょう。
本記事では、令和6年の生前贈与ルール改正点を含め、土地贈与に際して知っておくべき税金や手続きを網羅的に解説。制度ごとの特徴を理解し、家族の将来に合わせた選択を検討してみてください。
目次
生前贈与で土地を譲渡するとは?基本的な仕組みとメリット・デメリット

まずは、生前贈与によって土地を譲ることの基本的な仕組みと、そのメリット・デメリットを整理しましょう。
生前贈与とは、財産を所有している人が存命中に、自分の資産を特定の相手に譲り渡す行為です。土地の生前贈与では、相続時と異なり贈与する側と受け取る側が直接手続きを進められるため、お互いに内容を確認しながら進められる点が大きなメリットです。特に不動産は金額が大きく、後々トラブルが発生しやすいので、相続開始前に名義を確定できることは安心につながるでしょう。
一方、生前贈与には贈与税や登録免許税、不動産取得税などが発生する可能性があり、相続を選んだ場合と比べてコスト面が高くなることがあります。また、生前に譲り渡された財産が将来的に“特別受益”として扱われ、他の法定相続人との不公平感を生むケースも見られます。
これらの問題を回避するためにも、生前贈与を選択する際は、費用負担や家族間の合意形成をしっかり行うことが重要です。
令和6年改正:生前贈与ルールの主な変更点

令和6年から生前贈与のルールに改正が加えられます。暦年贈与や相続時精算課税制度でどのように変わるのか、ポイントを押さえておきましょう。
暦年課税と相続時精算課税制度は、どちらかを選択すると基本的に変更はできません。改正前は、贈与者が亡くなる前3年間に贈与された財産を相続財産に加算する「持ち戻し」の期間が問題になっていました。改正後はこの期間が延長された点が大きな変更点です。
これにより、暦年課税か相続時精算課税制度を明確化することで、生前贈与と相続を一体的にとらえやすくなり、また“駆け込み贈与”の影響を受けにくくする狙いもあると考えられます。
相続開始前贈与の持ち戻し期間はどう変わる?
暦年贈与では、改正前は被相続人が亡くなる前3年以内の贈与分を相続税の課税価格に加算していましたが、改正後は7年以内に延長されました。これにより、贈与税に加えて、相続税の計算に持ち戻される資産の範囲が拡大し、受贈者にとっては節税効果が薄れるリスクも考えられます。
一方で、贈与税は1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額に対してかかりますが、該当期間の贈与に対する課税には110万円の基礎控除額が適用されます。
相続時精算課税制度の改正ポイント
相続時精算課税制度には、特別控除(累計2,500万円)までは贈与税がかからないという大きなメリットがある一方、相続発生時にこれまでの贈与分をすべて清算しなくてはなりません。
しかし、改正によって2024年1月1日以降に相続時精算課税制度を選択して贈与を行った場合、年間110万円以内であれば贈与税はもちろん、相続税もかからなくなりました。これは、特別控除(累計2,500万円)とは別枠の扱いです。
この年間110万円以下の贈与については、相続開始前7年以内の加算対象(持ち戻し)にもならないため、計画的な生前贈与を行う上で非常に有利です。
土地贈与にかかる2つの贈与税計算方法

生前贈与は、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選択するかで、贈与税の計算方法が異なります。どちらの方が税負担を軽減できるか、長期的な視点で趣味レーションした上で判断するようにしましょう。
暦年課税制度の仕組みと注意点
暦年課税制度では、毎年110万円までの基礎控除額があり、この範囲内であれば贈与税がかかりません。ただし、高額資産を一括で贈与する場合は基礎控除の恩恵が小さくなるうえ、複数年にわたって計画的に贈与しないと、その都度かかる税負担が増える可能性があります。また、贈与を分散させる場合は贈与契約書を整理し、税務調査でも問題がないよう証拠を残しておくこともポイントです。
相続時精算課税制度を使った節税のポイント
相続時精算課税制度を選択すると、贈与時には2500万円まで非課税になる一方、相続が開始した段階でそれまでの贈与がすべて持ち戻されます。この仕組みにより生前の税負担は抑えやすくなりますが、相続時の税額が大きくなる可能性もあるため、後々の家族計画や財産総額を踏まえて検討することが重要です。特に土地の評価額が高い場合は相続時の負担が予想以上に大きくなることもあるため、専門家への相談を含め慎重に判断しましょう。
孫への生前贈与は有効?相続税の2割加算と教育資金贈与との違い
子ではなく孫に直接土地を贈与する場合、世代を飛び越えることで相続税の大幅な軽減が期待できる反面、税率が高くなるリスクや、特別受益として扱われる問題が生じる場合も考慮しておかなくてはなりません。
また、教育資金に特化した贈与では一定の非課税枠が設定されているものの、土地のような資産性の高い財産を直接贈与するケースとは区別されます。孫への贈与を検討する際は、幅広い制度を調べたうえで総合的に検討するようにしましょう。
土地の生前贈与にかかる税金・費用を徹底解説

土地を生前贈与するときに発生する可能性のある税金や費用はどのくらいかかるのでしょうか?資金繰りのミスマッチや想定外の出費を回避するためにも、あらかじめ確認しておきましょう。
贈与税・不動産取得税・登録免許税の仕組み
- 贈与税:実際に贈与が行われた財産価値に基づいて課税される税金
- 不動産取得税:土地や建物を取得したときに都道府県が課す税金
- 登録免許税:法務局で名義変更登記を行う際に必要となる税金
贈与税は、贈与を受けた財産価値に基づいて課税されますが、基礎控除や特別控除などを活用して節税を図ることも可能です。不動産取得税や登録免許税は固定資産税評価額をもとに税率が決まるため、事前に正確な評価額を把握しておくようにしましょう。
名義変更の諸費用と専門家への依頼コスト
土地の生前贈与を行った場合、不動産の名義変更登記は2024年4月1日から義務化されています。自身で行うことも可能ですが、複雑な法律が絡むため、司法書士へ登記手続きを依頼するケースも少なくありません。
その場合の費用は、案件の難易度や登録免許税の計算基準によって変わりますが、だいたい5万円~8万円程度が相場です。
そのほか、税理士への贈与税申告業務の依頼なども行う場合は、その費用も考慮しておくようにしましょう。
家族間トラブルを防ぐために押さえておきたいポイント

生前贈与はできる限り家族間での対立を避け、円満に進めたいもの。ここでは、家族観トラブルになりやすい「特別受益」と「定期贈与」についてご紹介します。
特別受益が問題になるケース
特別受益とは、特定の相続人が被相続人から生前に受けた贈与を相続時に考慮する制度です。土地の生前贈与が特別受益として扱われた場合、相続時にほかの相続人から不公平感が生じやすくなります。
穏便に相続手続きを進めるためにも、遺言書に明確な意図を記しておく、事前に家族全員と合意形成を図るなどの対策を講じておくことが大切です。
定期贈与とみなされるリスク
毎年同じような金額を連続して贈与すると、税務署に定期贈与と判断されて基礎控除や特例を受けにくくなる恐れがあります。土地の場合も、契約書の内容や贈与のタイミングを不自然に分割していると同様の指摘を受けやすいため、計画的かつ正当な理由をもって贈与を行うようにしましょう。
名義変更手続きの流れ

生前贈与であっても、不動産の名義変更登記は法務局で行い、贈与契約書や各種書類の提出が必須です。もし必要書類が不足すると、手続きがスムーズに進まず余分な時間がかかることになります。
土地の名義を実際に変更する際に必要な手順とポイントをまとめたので、順を追って確認していきましょう。
贈与契約書の作成方法
贈与契約書には、贈与日や贈与の内容(土地の所在地・面積・評価額など)を明確に記載し、贈与者と受贈者の両者が署名捺印を行います。口約束だけでは後にトラブルが生じる可能性が高いため、必ず書面で作成することが重要です。契約書を公正証書にすることで証拠能力を高めることもできるため、高額資産の贈与であれば検討しましょう。
贈与税の申告・納税手順
贈与税は、原則として贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告し、納付まで完了する必要があります。申告時には、贈与契約書の写しや贈与財産の評価額を示す資料を添付し、税務署に提出します。幸い暦年課税で基礎控除内ならば贈与税はかかりませんが、相続時精算課税を利用する場合は不可欠の手続きとなるため、漏れのないように進めてください。
土地の名義変更登記に必要な書類
土地の名義変更には、贈与契約書のほかに固定資産税評価証明書、贈与者の権利証や受贈者の住民票、戸籍謄本などが必要です。権利証が紛失している場合は法務局で手続きを行う対処策がありますが、時間と追加費用がかかります。
書類への不備や記載ミスを防ぐためにも余裕をもって準備を進め、必要に応じて司法書士や税理士にも相談するとよいでしょう。
相続による土地の名義変更と比較:どちらがお得?

土地の名義変更が発生する主な要因となるのが、相続と生前贈与です。税金や手間の面から、どちらが有利か考えてみましょう。
一般的に相続による名義変更の場合、特定の控除や特例が使いやすかったり、遺産分割の結果次第で最終的な負担が減る可能性があります。一方で、生前贈与は親が生きているうちに手続きを完了するため確実に財産を渡したいときに有効です。どちらを選択するかは家族構成や資産総額、将来の不動産評価額などを踏まえ、総合的に判断しましょう。
小規模宅地等の特例で相続の税負担を抑える
小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たす宅地を相続した場合に、相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主に居住用や事業用の宅地が対象で、贈与では活用できないため、相続で名義を引き継ぐメリットは大きいといえます。ただし、細かな要件が定められており、特例が適用されるかどうかは事前に確認しておくようにしましょう。
認知症対策・トラブル回避の観点から考える
高齢の親が認知症になってしまうと、遺産分割や不動産の管理・処分に支障が出ることがあります。その場合、生前贈与で早いうちに相続を済ませておけば、意思能力がしっかりしている段階で手続きを完了でき、遺産絡みのトラブルも回避しやすくなるでしょう。
家族信託など他の選択肢の場合はどうなる?
土地の名義変更が発生するケースには、ほかにも家族信託などの方法があります。家族信託は信頼できる家族が財産を管理する仕組みで、信託財産を受託者に名義変更することで財産管理の柔軟性が高まる点がメリットです。
生前贈与と家族信託を組み合わせることも可能で、節税効果や争族回避を狙いつつ、認知症対策や財産管理をスムーズに計画しやすくなります。ただし、家族信託は設定費用や管理の手間がかかるため、専門家と相談しながら全体設計を行うことが重要です。
生前贈与と土地の名義変更に関するQ&A

生前贈与について多くの方が気になるポイントをQ&A形式でまとめました。
Q: 生前贈与と相続では、どちらが税金を抑えやすいですか?
A: ケースバイケースですが、土地評価額が高い場合は相続の特例を使う方が有利となることがあります。逆に、早めに名義を確定しトラブルを回避したい場合は生前贈与が効果的です。
Q: 相続時精算課税制度を選ぶときに注意すべきことは?
A: 相続時精算課税制度は大きな非課税枠を使える反面、相続時にまとめて清算するため、将来の相続税負担が増える可能性があります。総合的に家族構成や資産額を考慮するようにしましょう。
Q: 認知症になった後でも生前贈与はできますか?
A: 原則として、本人に十分な意思能力が認められなければ贈与は難しくなります。そのため、認知症が進む前に早めに手続きを済ませることをおすすめします。
まとめ|土地の生前贈与はアキサポに相談を
生前贈与による土地の名義変更は、相続開始前に財産を確定させるメリットがある一方、贈与税や不動産取得税などの費用負担が気になる点も見逃せません。さらに、家族間のトラブルを避けるためには特別受益のルールや贈与契約書の作成、専門家の活用など、複合的な視点から準備しておくことが大切です。
もし土地の生前贈与や名義変更でお困りの際は、ぜひ「アキサポ」へご相談ください。アキサポは、空き家・土地に関する幅広いご相談に対応しており、生前贈与にも対応可能。贈与に必要な登記手続きや書類作成はもちろん、税金負担を軽減するための特例制度や、相続との違いを踏まえた最適な贈与プランの提案まで、ワンストップでサポートいたします。
「贈与を早めに行うことで税金対策をしたい」「将来の相続を見据えて家族に土地を渡したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。