公開日:2025.06.11 更新日:2025.06.04
NEW土地の名義変更|相続・売買・贈与・離婚ごとの手続きと費用を解説

土地の名義変更は、土地の所有権を新しい所有者に変更し、売買や相続等を完了させる重要な手続きです。けれども、名義変更を何度も経験することはあまりないため、いざその場面に直面すると何から手をつければよいのかわからないという方も多いはず。
そこで本記事では、土地の名義変更が必要となるケース別の背景や手続きの流れ、登記にかかる期間や費用の目安までをわかりやすく解説します。
目次
土地の名義変更とは?いつ・なぜ必要か

日本では土地や家屋などの不動産は、すべて登記簿によって所有者情報が管理されており、これを「不動産登記」と呼びます。登記簿の内容を証明する書類としては「登記事項証明書(登記簿謄本)」があり、法務局で取得することが可能です。
では、この不動産登記の名義変更はどのようなシーンで必要になるのでしょうか?
相続・売買・贈与・離婚などケース別の背景
名義変更が必要になる場面は、主に相続・売買・贈与・離婚によって土地を取得したとき。
相続で故人から不動産を引き継ぐ場合、2024年4月から名義変更が義務化されています。相続人が複数いる場合には、代表者がまとめて手続きを進めることも可能です。
不動産売買では、買主と売主の合意のもと、売買契約書とともに所有権移転登記を行います。
贈与では親から子どもへの不動産の移転などが典型例で、贈与契約書を交わした上で登記申請が行われます。
そして、離婚時の財産分与でも、土地や建物の名義を変更する場合があり、離婚協議と並行して、各種名義変更の準備も進めておく必要があります。
各ケースによって必要書類や流れは異なりますが、いずれも正確な登記が不可欠です。
名義変更しないデメリット(登記未了リスク・売却不可など)
名義変更を行わないままでいると、さまざまな不利益が生じます。
まず、民法では登記を行わなければ第三者に対して自らの所有権を主張できないと定められており、登記は所有権を公的に証明する重要な手段です。登記が済んでいない不動産は、売却や担保設定ができず、資産としての活用に大きな制限がかかってしまいます。
特に相続登記は2024年以降義務化されており、所有権取得から3年以内に登記しなければ最大10万円の過料が科される可能性も。また、住所や氏名の変更登記も義務となり、違反した場合は5万円以下の過料が発生します。
こうした法的・実務的なリスクを避けるためにも、名義変更は速やかに行うようにしましょう。
名義変更に必要な手続きと流れ

名義変更に必要な手続きと流れについて、ご紹介します。
不動産登記の仕組みと登記簿の読み方
不動産登記とは、土地や建物の権利関係を公的に記録する制度で、法務局が管理しています。登記がなされることで、不動産の所有者や抵当権の有無などが第三者にも明確に示され、取引の安全性が保たれます。
登記簿は「表題部」「権利部(甲区・乙区)」の3つから構成されています。
- 表題部:所有者や所在地、面積、構造など不動産の基本情報を記載
- 権利部(甲区):所有権に関する事項
- 権利部(乙区):所有権以外の権利に関する事項
名義変更を行う際には、この登記簿の内容を正確に読み取ることが重要です。
所有権移転登記の手順(法務局への申請)
土地の名義変更を行うには、「所有権移転登記」の申請が必要です。
<手続きの流れ>
1.必要書類をそろえる
2.登記申請書を作成する
3.不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請
4.登記識別情報通知を受け取る
通常、所有権移転登記は申請してから完了までの期間は、1~2週間程度が目安。売買、相続、贈与、離婚、どのケースでも大まかな流れは同じですが、事前準備や必要な書類が異なります。
必要書類の一覧と取得方法
土地の名義変更に必要な書類一覧を、ケース別にまとめました。
【相続による名義変更の場合】
- 戸籍謄本(被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本)
- 相続人の現在の戸籍謄本(相続人が複数いる場合は全員分)
- 相続人の住民票(不動産を相続する人)
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票(被相続人の登記上の住所とつながりがわかるもの)
- 遺産分割協議書(法定相続以外の割合で名義変更する場合)
- 各相続人の印鑑証明書(遺産分割などを行っている場合)
- 対象となる不動産の固定資産評価証明書
【売買による名義変更の場合】
- 登記原因証明情報(売買契約書など)
- 贈与者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 住民票(不動産を購入した人)
- 登記識別情報または登記済証(権利証、対象となる不動産のもの)
- 対象となる不動産の固定資産税評価証明書
【贈与による名義変更の場合】
- 贈与契約書(贈与があったことを証する書類)
- 印鑑証明書(贈与する人(登記名義人)の発行から3カ月以内のもの)
- 住民票(不動産の贈与を受けた人のもの)
- 登記識別情報もしくは登記済証(権利証。対象となる不動産のもの)
- 対象となる不動産の固定資産税評価証明書
【離婚(財産分与)による名義変更の場合】
- 財産分与協議書(財産分与があったことを証する書類)
- 印鑑証明書(財産分与する人(登記名義人)、発行から3カ月以内のもの)
- 住民票(財産分与を受けた人のもの)
- 登記識別情報または登記済証(権利証。対象となる不動産のもの)
- 対象となる不動産の固定資産税評価証明書
- 戸籍謄本(離婚したことがわかるもの)
住民票や印鑑証明書、戸籍謄本、固定資産評価証明書は各市区町村の役場で、登記済証は法務局にて取得可能です。
一方、遺産分割協議書や財産分与協議書には、法定の書式が定められておらず、自由形式で作成が可能です。書き方は司法書士など専門家に相談するほか、法律事務所などのWEBサイトでテンプレートが公開されていることもあるので、こちらも参考にしてみてください。
土地の名義変更方法と費用をケース別に解説|相続・売買・贈与・離婚

相続・売買・贈与・離婚のケース別に、土地の名義変更のポイントと費用相場をまとめました。
相続による名義変更(遺産分割協議・相続登記)
遺言書がない場合や相続人が複数人いる場合は、まず遺産分割協議を行い、誰がその土地を相続するかを決定する必要があります。全員の合意を得られたら「遺産分割協議書」を作成し、これをもとに相続登記を申請します。
費用としては、登録免許税として対象不動産の固定資産税評価額の0.4%が課税されます(相続登記の場合)。不動産の相続評価額やその他貯金額によっては相続税がかかることもあります。また、戸籍謄本や戸籍抄本、戸籍の附票・固定資産税評価証明書など必要書類を収集するための実費も考慮しておきましょう。
売買による名義変更(売買契約書・登記申請)
不動産の売買によって名義変更を行う場合は、売り主側は所有権移転登記を行わなくてはなりません。その際に必要な書類のひとつが、登記原因証明情報です。これは、登記の原因となる事実または法律行為(不動産登記法第5条2項)のことで、売買によるものであることを証明するものなので、必ず用意しておくようにしましょう。
費用面では、売買契約書にかかる印紙税、不動産の評価額に応じた登録免許税(通常2%、土地は一時的に1.5%)、売却益が出た場合の譲渡所得税、不動産取得者に課される取得税などがかかります。加えて、必要書類の取得費用や不動産会社への仲介手数料なども発生します。
贈与・離婚による名義変更(贈与契約書・財産分与)
贈与による名義変更では、贈与契約を明文化することが重要。口頭だけの贈与契約は原則として取り消しが可能になってしまうため、贈与契約書として書面で作成しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
離婚に伴う財産分与では、民法において夫婦間の財産は「特有財産」以外を除いて、名義を問わず共有財産と判断されることがあり、当事者の合意が基本ですが、合意できない場合は家庭裁判所での調停等が必要になります。贈与の場合と同様、財産分与協議書を作成して書面化しておくことも必須です。
贈与や離婚による名義変更でも、印紙代や登録免許税、譲渡所得税が発生するほか、必要書類取得にかかる実費も見込んでおかなくてはなりません。また、贈与の場合は贈与税・不動産取得税も必要になります。
土地の名義変更にかかる税金と登録免許税

土地の名義変更を行う際には税金がかかります。具体的にどのような税金が課されるのか、確認していきましょう。
不動産取得税・相続税・贈与税との違い
不動産取得税は、購入や贈与、建築など「所有権の取得」に対して課される国税で、取得時の1回のみ支払いが必要です。贈与による取得では、不動産取得税に加えて贈与税も課税対象となります。ただし、一定の非課税枠や特例制度もあります。一方で、相続で不動産を得た場合、相続税はかかりますが、不動産取得税はかかりません。
登録免許税の計算方法と税率
登録免許税とは、法務局で登記手続きを行う際に国へ納める税金のこと。建物の新築に伴う「表題登記」や、売買・相続・贈与による「所有権移転登記」の際に発生します。
この税金を求める計算式は以下の通りです。
登録免許税=固定資産税評価額×税率
税率は、不動産の種別や名義変更の理由によって変わります。例えば、土地の名義変更であれば税率は以下のようになります。
【土地の所有権の移転登記*】
内容 | 税率 |
売買 | 1,000分の20** |
相続、法人の合併または共有物の分割 | 1,000分の4 |
その他(贈与・交換・収用・競売等) | 1,000分の20 |
*課税標準は固定資産税評価額
**令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合は1,000分の15
節税対策としての特例活用やタイミング
不動産の名義変更は、行うタイミングや特例活用によって、納める税額が大きく変わり、特に相続や贈与の場合、これが顕著です。
たとえば、生前贈与では毎年110万円までの基礎控除を利用して、課税対象とならない範囲で少しずつ贈与する方法があります。ただし、土地や建物のような高額資産ではこの方法は手間や費用がかかることが多いため、その場合は代わりに「相続時精算課税制度」を活用する選択肢も。これは、贈与時には贈与税がかからず、相続の際にまとめて精算する制度で、最大2,500万円まで非課税とされます。
また、相続時には「小規模宅地等の特例」を利用することで、同居していた土地の評価額を大幅に減額でき、相続税を軽減することが可能。
節税の観点で考えると、生前贈与と相続のどちらがよいかはケースバイケースになるため、専門家に相談の上、慎重に検討するようにしましょう。
土地の名義変更を専門家に依頼する場合

土地名義の変更は専門的な内容も多いため、専門家に依頼することも少なくありません。専門家に依頼するのか、それとも自分で行うのか、以下を参考に検討してみてください。
司法書士・行政書士の違いと費用目安
司法書士と行政書士は、よく混同される場合がありますが、役割には明確な違いがあります。
行政書士は戸籍謄本の取得や遺産分割協議書といった書類の作成は可能ですが、不動産の名義変更や相続登記そのものを行うことはできません。一方の司法書士は、書類の作成から登記手続きまでをまとめて任せられます。
司法書士の報酬の目安は5万円~10万円程度ですが、地域や依頼内容によって変動することも。代理で手続きをしてもらうには委任状など、代理権限の証明書類も必要になる点も押さえておきましょう。
自分でやる/依頼する、それぞれのメリット・デメリット
司法書士は、あくまで本人の代理として名義変更を代行しているだけなので、所有者自身が手続きを行うことも可能です。
自力で名義変更を行えば、専門家への報酬が不要となり、費用面では大きなメリットがあります。しかし、手続きには多くの時間と労力が必要です。また、名義変更は法律で厳密にルールが定められており、必要書類の収集や申請書の作成には正確性が求められます。特に登記すべき不動産の見落とし(登記漏れ)などの不備が生じ、後々のトラブルの要因となるケースも少なくありません。
よくあるトラブル事例と防止策
土地の名義変更でよくあるトラブルの事例をご紹介します。
- 登記簿上の住所と死亡時の住所が違う
登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合には、両者の住所の変遷をつなぐ住民票の附票や戸籍の附票などの証明書類を用意する必要があります。 - 自筆証書遺言の検認を受けていない
自筆証書遺言に基づいて登記を行う際には、家庭裁判所での検認が必要不可欠。検認を受けていない遺言書では、登記手続きができない。 - 登記漏れ
物件の敷地以外にも、私道やゴミ置き場、共有の駐車場などの持ち分の登記が漏れてしまうケース。売却や建て替え時に大きな支障となる。
上記のようなトラブルを防ぐためには、専門家のサポートを得ることが最適解。できるだけ早く相談し、適切な方法で手続きを進めるようにしましょう。
まとめ|名義変更は早めの対応と専門家の活用がカギ

土地の名義変更を行う場合、なるべく早く対応すること、そして必要に応じて専門家のサポートを得ることが大切です。
ケース別の手続き要点を再確認
土地の名義変更のやり方は、取得の経緯によって異なります。
相続・売買・贈与・離婚、それぞれのケースに必要な手続きや書類を確認し、適切に進めることが重要です。また、書類の準備や申請に時間がかかるケースも見られ、特に相続による名義変更の場合は期限も決められているため、早めの対応をおすすめします。
アキサポで相続・名義変更の相談が可能です
土地の相続や名義変更に迷ったときは、「アキサポ」に相談するのも方法のひとつ。アキサポでは、空き家に関する悩みに寄り添い、利用者一人ひとりに合わせた解決プランを提案する空き家活用のプロ。名義変更や相続をはじめとする、土地の取得にまつわる相談にも対応可能です。
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