公開日:2025.11.28 更新日:2025.11.14
NEW「一軒家あげます」は本当?無料譲渡物件の実態と探し方
時折見かける「一軒家あげます」という言葉、本当にそんな話があるのかと疑問に思いますよね? じつはこの言葉の裏には、空き家をめぐる切実な問題があるのです。
近年、空き家問題が深刻化するなかで、維持費や税金の負担を理由に「お金はいらないから引き取ってほしい」と考える所有者が増えています。特に地方ではこのような悩みが多く、中には維持できずに放置されたままになっているケースもあるほどです。
では、そんな「一軒家あげます物件」を譲り受けるとしたら、どのような点に注意すべきなのでしょうか。この記事では、無料で一軒家を譲り受ける仕組みや探し方、実際にかかる費用や注意点をわかりやすく解説します。
目次
なぜ無料で譲りたいのか:増え続ける空き家と所有者の事情

全国で空き家が増え続けている背景には、維持し続ける負担が想像以上に大きく、早く手放したいと考える所有者が少なくないという切実な事情があります。税金や修繕費、管理の手間などが積み重なり、「お金はいらないから引き取ってほしい」と願う人が出てくるのも無理はありません。
特に築年数の古い家や需要の少ない地域の物件は買い手がつきにくく、自分で使わない場合は「維持するほど損をする」状態に陥ってしまいます。資産であるはずの家が負担へと変わる。そんな現実が、所有者を無料譲渡という選択に向かわせているのです。
では、空き家をそのまま放置した場合、どのような問題が生じるのでしょうか。次の項目では、相続後の管理負担や地方物件ならではのリスクについて詳しく見ていきます。
相続後の維持費や管理の負担
相続によって取得した不動産は、所有しているだけで固定資産税や修繕費といったコストがかかり、生活費とは別に継続的な支出を抱えることになります。特に遠方の実家などは、通って掃除や点検を行うのが難しく、気づかないうちに老朽化が進んでしまうことも少なくありません。
空き家を維持する際に発生する主な費用は以下のとおりです。
空き家を維持する際にかかる費用目安
| 費用項目 | 内容 | 年間の目安 |
| 固定資産税・都市計画税 | 所有している限り毎年発生。評価額や立地によって変動 | 10万〜20万円程度 |
| 修繕・補修費 | 屋根・外壁・雨どいなどの補修、白アリ・カビ対策など | 5万〜30万円程度 |
| 管理・清掃費 | 定期的な換気・草刈り・ごみ処分など。遠方の場合は代行業者を利用 | 3万〜10万円程度 |
| 光熱費・水道基本料 | 空き家でも最低限の契約維持が必要 | 5万円程度 |
| 火災・損害保険料 | 放置中の火災・災害に備える保険 | 3万〜6万円程度 |
こうした費用を合計すると、年間で20万〜50万円前後の維持費がかかるケースも珍しくありません。
しかも、掃除や点検を怠れば建物の傷みが進み、修繕費がさらに膨らむ悪循環に陥ります。
その結果、「持ち続けるより手放したほうが現実的だ」と考える人が増えているのです。
遠隔地や地方物件の放置リスク
地方にある実家を相続したものの、誰も住まずにそのまま残しているというケースは決して珍しくありません。都心から離れた地域では、交通の便が悪かったり、周辺に買い物施設や医療機関が少なかったりと、利便性の低さから使われないまま放置されてしまうことも多いのが現実です。
しかし、空き家を長期間放置すると、雨漏りや外壁の劣化、害虫の発生などが急速に進み、最悪の場合は倒壊や火災などの事故につながるおそれがあります。こうした危険な空き家は、防災や防犯の観点からも地域全体に悪影響を及ぼし、景観の悪化や治安の低下を招く原因にもなります。
さらに、空き家の状態が悪くなりすぎると、自治体から倒壊の危険や衛生上の問題がある空き家である「特定空家」に指定される可能性もあります。特定空家に指定されると、将来的に固定資産税の軽減措置が解除されたり、行政代執行による強制解体が行われたりする恐れがあります。
無料譲渡物件を探す具体的な方法

「一軒家を無料で譲ります」といった情報は、一般の不動産サイトではほとんど見かけることがありません。では、無償譲渡物件はどこで見つけることができるのでしょうか。
代表的なのは、自治体が運営する空き家バンクと、個人が情報を掲載している掲示板・SNSの2つです。これらの情報は、不動産ポータルサイトなどには掲載されないことがほとんどのため、かなり見つけにくくなっています。
では、これらの方法で無料譲渡物件を見つけるにはどうすればよいか、それぞれのコツを詳しく見ていきましょう。
自治体運営の空き家バンクを活用する
無料譲渡物件を探すうえで、最も現実的な方法のひとつが自治体が運営する「空き家バンク」を活用することです。空き家バンクの物件は不動産情報サイトに掲載されないことが多いため、掘り出し物に出会える可能性もあります。
探し方は、住みたいエリアや関心のある自治体の空き家バンクへアクセスして「譲渡価格:0円」の物件を見つければOKです。自治体によっては条件検索ができない場合もありますが、そのような場合ほど最後まで閲覧されずに残っている可能性があります。根気強く全物件を調べてみましょう。
空き家バンクを活用する最大のメリットは、行政の支援制度とセットで動けることです。たとえば、移住希望者向けの支援金や、耐震改修・リフォームに使える補助金を併用すれば、初期費用を大きく抑えて新生活を始めることも可能です。
民間サイト・掲示板やSNSで探す
近年では、無料譲渡物件の情報が個人のSNSや不動産系掲示板などに直接掲載されるケースも増えています。自治体を介さないぶん情報の更新が早く、条件交渉や見学のスケジュールを柔軟に調整しやすいのが大きなメリットです。特にX(旧Twitter)やFacebookの地域コミュニティグループなどでは、「空き家譲ります」「家を使ってくれる人を探しています」といった投稿が見つかることがあります。
ただし、これらの方法は個人間のやり取りになるため、通常の物件以上に建物及び敷地の状態や契約条件を慎重に確認する必要があります。掲載写真だけでは実際の老朽化や設備不良が分からないことも多いため、現地での内覧や書面でのやり取りを必ず行うようにしましょう。契約形態も口約束は絶対に避け、贈与契約書または売買契約書を作成し、署名・押印のうえで所有権移転登記を行う必要があります。不動産登記法上、登記をしなければ第三者に対して所有権を主張できないため、法的保護を受けるには登記が不可欠です。
無料でもかかる費用と注意点

無料譲渡物件であっても、費用をまったくかけずに住み始めるのは難しいです。特に古い住宅では、リフォームや修繕にかかる費用が想像以上に大きくなることもあり、甘く見積もっていると後から負担が膨らむこともよくあります。
また、無償で譲り受けたとしても、登記や税金などの手続き費用は避けて通れません。
では、無料譲渡物件で実際にどのような費用がかかるのか、そしてどんな点に注意すべきなのかを見ていきましょう。
リノベーション・修繕費用
築年数が経過している住宅では、屋根や壁の修繕、水回り設備の交換など、想像以上に多くの部分で工事が必要になります。
特に長年人が住んでいなかった家は、見た目がきれいでも内部の配管や柱が傷んでいることが多く、購入後すぐに大規模な修繕が必要になるケースも少なくありません。
主な改修内容と目安費用をまとめると、次のようになります。
| 施工箇所 | 施工内容及び費用相場(万円) |
| 屋根 | ・スレート屋根の塗り替え(戸建て):20~80 ・金属屋根の重ね葺き(戸建て):90~250 ・瓦屋根の交換(戸建て):70~120 |
| 外壁 | ・外壁材の重ね塗り(戸建て):50~150 ・サイディングの上貼り(戸建て):80~200 |
| 窓 | ・内窓の追加:6~12 ・シャッター式雨戸への交換(戸建て):70~150 |
| 内壁 | ・壁クロスの貼り換え:6~30 ・壁クロスの珪藻土化:18~30 |
| 床 | ・畳の交換:6~12 ・畳のフローリング化:15~60 ・畳クロスの貼り換え:6~30 ・段差の解消:8~20 |
| トイレ | ・温水洗浄便座の設置:8~16 ・トイレ全体の改装(タンク式):20~100 ・タンクレストイレへの交換:30~50 |
| 浴室 | ・バスタブの交換:14~20 ・システムバスの交換(マンション):50~100 ・システムバスの交換(戸建て):60~150 ・高効率給湯システムの設置:55~100 |
| 洗面所 | ・洗面化粧台の交換:20~50 ・洗面所の改装:20~100 |
| キッチン | ・IHコンロへの交換:18~80 ・ガス給湯器の交換:20~50 ・システムキッチン(I型)の交換:40~80 ・システムキッチンの交換(壁付→対面):75~200 ・キッチン全体のリフォーム:80~400 ・アイランドキッチン:300~450 |
| 居室系内装 | ・オール電化への改修:100~200 ・床暖房の敷設:50~150 ・リビングに収納棚を作る:40~90 ・和室の洋室化:50~200 ・和室の洋室化(バリアフリー仕様):70~300 ・ダイニングの改修:100~200 ・リビングの改修:200~400 ・天然素材を用いた室内全体のエコリフォーム:300~1,000 ・ホームシアター:300~500 |
| その他内装 | ・火災報知機の取り付け:4~10 ・手すりの設置:1~20 ・モニタ付きインターホンの設置:8~16 ・廊下の改修:20~100 ・階段の改修:20~100 ・バルコニーの改修(マンション):20~100 ・バルコニーの改修(戸建て)20~200 |
| その他外装 | ・雨どいの交換(戸建て):5~40 ・シロアリ防止処理(戸建て):15~30 ・耐震補強(金物仕様/戸建て):20~60 ・玄関の改装(戸建て):20~150 ・耐震補強(基礎から/戸建て)100~200 |
| 外構 | ・ウッドデッキの新設(戸建て):10~80 ・太陽光温水システム(戸建て):20~80 ・太陽光発電システム(戸建て):200~300 |
| 間取りや建物全体に関すること | ・2室を1室にまとめる:50~80 ・増築:300~2,000 ・躯体以外の部分を前面リフォーム:500~2,500 ・建物の一部を賃貸部屋化:800~2,000 ・二世帯住宅化:800~2,500 ・減築:800~2,600 ・古民家再生:1,200~3,000 ・曳き家・移築:800~ |
出典:部位別リフォーム費用一覧(国土交通省)
もちろん、実際の金額は家の状態や施工業者によって大きく変わりますが、最低でも100万円前後、全面的なリノベーションでは500万円以上を見込んでおくと安心です。
また、費用を抑えるコツとして、自治体のリフォーム補助金や耐震改修の助成制度を活用する方法もあります。
こちらの記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
名義変更の諸費用や各種税金
無料で譲り受けたとしても、不動産を所有する以上は各種の税金や登記手続きの費用が発生します。 「タダでもらったのに思ったよりお金がかかる」と感じる人も多い部分ですが、あらかじめ仕組みを知っておけば、想定外の出費を防ぐことができます。
主な税金や手続きの費用は次のとおりです。
| 費用項目 | 内容 |
| 登録免許税 | 不動産の名義を自分に変更する際にかかる税金。土地・建物共に、贈与を受けた場合は固定資産税評価額の2.0%がかかる(売買の場合は0.4%) |
| 不動産取得税 | 不動産を取得したときに都道府県に支払う税金。住宅用家屋の贈与を受けた場合は固定資産税評価額の4%が課せられるが、現在は3%の軽減税率が適用されている |
| 司法書士報酬 | 登記手続きを依頼した場合の報酬。手続きの複雑さにより変動する。通常は10~30万円程度 |
| 固定資産税 | 所有者となった翌年度から毎年発生する。土地・建物の固定資産税評価額の1.4% |
これらを合計すると、名義変更の費用が10万〜30万円前後と、さらに翌年度から固定資産税が毎年10万~20万円かかることになります。特に、土地の評価額が高い場合や建物が複数ある場合は負担が大きくなるため、事前に評価額を確認しておきましょう。
譲り受け時に押さえておく手続きと法的注意点

無料で一軒家を譲り受ける場合でも、タダなら簡単だろうと思い込まず、通常の不動産売買と同じように、契約書の作成や登記などをしっかり進めていきましょう。
これらの手続きを省略してしまうと、後から思わぬ費用やトラブルに発展することがありますし、最悪の場合は所有権の移転がうまくいかず、正式な所有者として認められない可能性も出てきます。
では、具体的にどのような点に気を付ければよいのか、実際の手続きで押さえておきたいポイントを2つ紹介します。
贈与契約・売買契約の違いと向いているケースを理解する
無料譲渡を行う際は、民法上の贈与契約として扱うのが一般的です。形式上「1円」などの名目上の売買にしても、対価性が乏しい場合は相続税法第7条により「みなし贈与」として贈与税の課税対象となります。したがって、贈与契約書を作成し、贈与税申告を前提に進めるのが適切です。
それぞれの特徴を簡単にいうと、「身内間でお金のやり取りを伴わない場合」は贈与契約、「第三者への譲渡や、片付け・解体など何らかの負担を相手に引き受けてもらう場合」は名目上の売買契約が向いています。
固定資産税・都市計画税の負担を理解する
譲渡を受けて名義が自分に変わると、翌年度からは固定資産税と都市計画税の納税義務が発生します。これは、毎年1月1日時点の固定資産課税台帳上の所有者に課税される仕組みで、引き渡しのタイミングに関係なく、所有者として登録されていればその年の税金を支払う必要があります。
ただし、住宅用地には課税標準の軽減措置があり、200㎡以下の小規模住宅用地は最大で6分の1、200㎡超の一般住宅用地は3分の1に評価額が軽減される制度があるため、多くの場合、実際の負担額はもう少し少なくなります。
ただし、空き家が長期間放置されて「特定空家」に指定されている場合は、軽減措置の適用が除外されているケースがあります。この点もあらかじめチェックしておいてください。
訪問・内覧前に確認しておきたいポイント
空き家を現地でチェックする際には、建物そのものの状態と周辺の暮らしやすさの両方を確かめることが大切です。たとえば、屋根や外壁のひび割れ、水回りの劣化などは補修費に直結しますし、周囲にスーパーや病院、交通機関がどの程度そろっているかで、日々の快適さは大きく変わります。
そこでここでは、現地確認の際に特に注目しておきたい建物の安全性と周辺環境のチェックポイントについて詳しく見ていきましょう。
建物の耐震性や修繕履歴を確認する
必ず確認しておきたいのが、建物の耐震性や修繕履歴といった、安全性に直結する項目です。築年数が古い家は、現行の耐震基準を満たしていない場合が多く、構造の状態によっては大規模な補強工事が必要になることもあります。
特に1981年5月31日以前に建築確認を受けた住宅は、建築基準法施行令改正前の「旧耐震基準」で設計されています。現行基準では震度6強〜7程度の地震にも耐えられる性能が求められているため、旧基準の建物では、耐震改修促進法第6条に基づく耐震診断の実施が推奨されています。
また、これまでにどのような修繕や改築が行われてきたのかを確認しておくことも大切です。屋根の張り替えや外壁塗装、シロアリ防除などの履歴が残っていれば、どの部分がメンテナンス済みで、どこに劣化が進んでいるかを把握できますし、こうした情報があるだけで、将来的な修繕計画や費用の見通しが立てやすくなります。
周辺環境・インフラ状況と利便性のチェック
建物の安全性を確認できたら、次に注目したいのが周辺環境や生活インフラの利便性です。
どんなにリフォームで家がきれいになっても、暮らしの基盤となる環境が整っていなければ、長く住み続けるのは難しくなります。
まず確認しておきたいのは、交通アクセスと日常生活に必要な施設の位置です。最寄り駅やバス停までの距離、道路の幅や整備状況、そしてスーパー・病院・学校・郵便局などが近くにあるかどうかを実際に歩いて確かめておくと安心です。
特に地方の物件では車移動が前提となるケースが多いため、駐車スペースの有無や、冬季の除雪状況、街灯の有無などもチェックしておくとよいでしょう。
また、上下水道や電気・ガスといったインフラの整備状況も重要なポイントです。古い家の中には、まだ井戸水や浄化槽を使っている物件もあり、上水道や公共下水道への切り替えが必要になる場合もあります。切り替え工事には数十万円規模の費用がかかることもあるため、事前に役所や水道局で設備状況を確認しておくと安心です。
まとめ・総括|無料の一軒家を有効活用するポイント
一軒家あげますという話は、うまく活用すれば「家」という大きな資産を得られるチャンスになりますが、修繕費や税金などの負担を十分に検討しないと、自分が負担を肩代わりするだけになってしまうおそれがあります。
「タダだから得」と決めつけず、費用や手続き、法的リスクを総合的に把握したうえで、本当にもらっても大丈夫かを判断しましょう。
自分だけで判断が難しいと感じた場合は、自治体の空き家バンクや不動産会社、行政書士・税理士などの専門家に相談してみましょう。専門家のサポートを受けることで、契約手続きや税金の扱いを正確に進められるだけでなく、リフォーム補助金などの支援制度を知るきっかけになる場合もあります。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。