公開日:2025.12.03 更新日:2025.11.19
NEW【住宅解体】の基礎ガイド|手続き・費用・流れを完全網羅
住宅を解体すると決めたとき、多くの方が最初に気にするのは費用・手続き・具体的な流れではないでしょうか。
解体工事は「建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)」に基づく届出や、建物の安全性、近隣環境への配慮が求められるため、事前の準備と情報収集が欠かせません。
また、法的な届出や相続などの複雑な問題が絡むこともあります。それらをスムーズに進めるためには、実際にどのような流れで作業するか、どのくらいの費用がかかるかを明確にしておくことが欠かせません。
本記事では、解体工事の目的や必要性、費用相場、そして法的手続きや解体後の流れまでを幅広く解説します。事前準備を整え、トラブルなく解体を終えるための基礎知識としてお役立てください。
目次
住宅解体とは?工事の目的と必要性

まずは解体工事の基礎知識として、どのような建物が解体の対象になるのか、そして古い家を取り壊す主な理由について押さえておきましょう。
住宅解体とは、老朽化した住宅や使用されなくなった建物を安全かつ適正に取り壊し、敷地を更地に戻す工事を指します。建物が老朽化すると、雨漏り・シロアリ被害・構造劣化などのリスクが増すため、耐震診断や建物状況調査(インスペクション)を行い、必要に応じて解体を検討することが望ましいとされます。
解体工事には、重機を用いた全解体のほか、リフォームに伴う部分解体(内装や壁面のみの撤去など)も含まれます。
また、「建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)」により、防音・防じんシート設置義務の明文規定はなく、これは「騒音規制法」および「振動規制法」に基づく行政指導・条例対応に該当します。これを怠ると、「廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)」などに基づき罰則を受ける可能性もあります。さらに、延べ床面積80㎡を超える解体工事の場合、「建設リサイクル法」により市区町村への事前届出が必要となります。
依頼主と解体業者が工期・範囲・近隣対応などを事前に十分協議しておくことで、安全かつ円滑な作業進行が可能となります。
解体のタイミングは、構造の老朽化だけでなく、土地の利用計画や資産価値なども踏まえて判断されます。たとえば、売却や建て替えのために更地にすれば資産活用の幅は広がりますが、「地方税法」に基づく住宅用地の固定資産税軽減措置が解除されるため、税負担が増す点には注意が必要です。
解体工事の定義・対象となる建物
解体工事は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など多様な構造の建築物が対象となります。
一般住宅だけでなく、倉庫・事務所・店舗なども対象に含まれることがあります。また、一部の壁や床を撤去する部分解体も「建設業法」における解体工事業の範囲に含まれます。
古い家を解体する主な理由
古い住宅を解体する主な理由は、安全性を確保できないほど老朽化が進んでいるケースです。現行の「建築基準法」に基づく耐震基準(1981年改正以降)に適合しない住宅は地震時の倒壊リスクが高く、安全な住環境を次世代に残す目的で解体を選ぶ例も少なくありません。
さらに、「空き家対策特別措置法」に基づき、特定空家に指定される前に解体を進めるケースもあります。相続や売却に備えて土地を有効活用する動きが広がっています。
解体工事前に知っておきたい手続きと法律

解体工事を始める前には、法律に基づく届出や許可申請が必要です。特に建設リサイクル法や近隣住民への対応は見落としがちなので注意しましょう。
解体工事は、「建設リサイクル法」および各自治体の条例によって、複数の届出や申請が求められます。特に一定規模(木造で延べ床面積80㎡以上、鉄骨造・RC造で500㎡以上)の解体工事では、「建設リサイクル法」第10条に基づき、工事着手の7日前までに市区町村へ届出を行う必要があります。届出を怠ると、同法第27条により50万円以下の罰金が科される場合もあり、工事の遅延につながるおそれがあります。
また、解体現場では大型車両や重機の出入りが多いため、「道路交通法」第77条に基づく道路使用許可を視野に入れた交通計画を立てておくことが重要です。さらに、「騒音規制法」「振動規制法」に則った対策内容を事前に説明しておくと、近隣への影響を最小限に抑え、トラブルを未然に防ぐことができます。
法令や手続きを正確に理解しておくことで、工事を円滑に進められるだけでなく、追加費用や近隣トラブルのリスクも軽減できます。手続きをすべて業者任せにせず、依頼主自身が届出書類や申請内容を把握しておく姿勢も大切です。
建設リサイクル法による届け出
「建設リサイクル法」により、木造で延べ床面積80㎡以上、鉄骨造・RC造で500㎡以上の解体工事では、市区町村への事前届出と分別解体が義務付けられています。
提出書類には工事計画書や請負契約書の写しなどが含まれ、届出を怠ると建設リサイクル法により50万円以下の罰金が科されることがあります。法令に沿った手続きを確実に行いましょう。
道路使用許可申請の必要性
解体現場では車両や重機の出入りが多く、敷地が狭い場合は道路の一部を一時的に使用するケースもあります。その際は、「道路交通法」第77条に基づき、所轄警察署へ道路使用許可を申請し、車両の停留位置や作業時間を明確にしておく必要があります。許可が得られないと工事が停止するリスクもあるため、早めの対応が欠かせません。
近隣住民への説明とトラブル回避
解体工事中は騒音・振動・埃が発生しやすく、周辺住民からのクレームにつながることがあります。工事前に近隣へのあいさつや説明会を実施し、誠実な対応を取ることでトラブルを未然に防ぎやすくなります。特に工事期間・作業時間・解体方法などを明示しておくと、住民の理解を得やすく、円滑な作業につながります。
ライフラインの停止と残置物の処理
解体工事に着手する前に、水道・電気・ガスなどのライフラインを停止する手続きを行う必要があります。停止時期を誤ると工事が中断したり、基本料金が無駄に発生するおそれがあるため、供給会社との連絡は計画的に進めましょう。
さらに、建物内部の残置物を残したままにすると、撤去費用が上乗せされるケースもあります。事前に不用品を処分しておくことで、費用の増加を防ぎ、スムーズな着工が可能となります。
解体工事の流れと段取り

解体工事は、足場・養生の設置から本体解体、廃棄物の運搬・処理までを段階的に進めます。ここでは、その具体的な流れと作業の要点を確認していきましょう。
工事の工程は大きく「準備作業」「本体解体」「後片付けと廃材処理」の3段階に分かれます。まず、周囲の安全を確保するために足場を設置し、「労働安全衛生法」に基づく防音・防じんシートなどの養生を実施します。重機で建物を解体した後は、「建設リサイクル法」に基づき、発生した廃棄物を分別・再資源化し、適正な処理施設へ運搬して完了となります。
工事期間は建物の構造や広さ、天候などによって左右されますが、木造住宅の場合はおおむね1〜2週間程度が目安です。鉄骨造やRC造の場合は解体機材や工程が増えるため、期間も長くなる傾向にあります。アスベストが含まれる場合は専用の除去作業が必要になり、さらに日数と費用がかかることが多いです。
段取りを誤ると工事全体のロスが発生したり、近隣とのトラブルを招いたりするため、専門業者との打合せを入念に行うことが大切です。特に廃棄物の種類によって処理方法や費用が異なるため、どのように分別しどんな施設へ運搬・処理するのかをあらかじめ確認しておきましょう。
準備工事|足場・養生の設置
解体工事では、周辺への騒音や埃の飛散を抑えるために足場の設置と養生が欠かせません。足場は作業員の安全を確保するだけでなく、「労働安全衛生規則」においても設置が義務付けられており、重機作業の安全範囲を見極めるうえでも重要な役割を果たします。
一方、外壁や屋根まわりに防音・防じんシートを設置する養生作業は、「騒音規制法」「振動規制法」に基づき、近隣への影響を最小限に抑えるポイントとなります。
家屋本体の解体と廃棄物処理
足場や養生作業が完了したら、重機や手作業による本体の解体に移ります。木造住宅では重機を用いた一括解体が多く、鉄骨造やRC造の場合はガス溶断やハンマーを併用しながら安全に進めます。
解体で発生した木くず・コンクリート・鉄筋などは、「建設リサイクル法」および「廃棄物処理法」に基づき分別処理され、認可を受けた処分場やリサイクル施設へ搬出されます。
アスベスト含有物の扱い方
古い建物には、アスベストを含む建材が使用されている場合があります。アスベストは発がん性物質であり、「石綿障害予防規則」により、専門資格を持つ作業主任者が防護具と集じん装置を用いて除去作業を行うことが義務付けられています。
また、アスベスト含有が疑われる段階で事前調査を専門業者に依頼し、除去費用や工期を見込んで計画を立てておくことが重要です。「大気汚染防止法」に基づき、届出や作業基準の遵守も求められます。
解体後に必要な手続き|建物滅失登記と税金
解体工事が完了したら、法律上の手続きとして建物滅失登記を行う必要があります。併せて税金への影響がどのように変わるのかを確認しましょう。
解体後は、法務局に対して建物が取り壊されたことを正式に登記抹消する滅失登記の手続きを行わなければなりません。これを怠ると、不動産登記簿上では建物が存在し続けることになり、売買や相続などの際にトラブルが発生する恐れがあります。
また、固定資産税は更地になると住宅用地としての優遇措置がなくなり、金額が上昇する可能性があります。解体後の土地を有効活用して賃貸や駐車場経営を検討するなど、固定資産税増加分をどう負担するかも考慮しておくと良いでしょう。
建物滅失登記の流れと提出書類
建物を解体した後は、管轄の法務局に対して「不動産登記法」に基づき、建物が取り壊された事実を届け出る滅失登記を申請します。これを怠ると、登記簿上では建物が存在したままとなり、売買・相続・融資などの場面で権利関係が不明確になり、取引トラブルの原因となるおそれがあります。
申請には、解体業者が発行する「解体証明書」または「建物滅失証明書」、確認申請書の写しなどを添付します。登記申請は司法書士に依頼するのが一般的ですが、「不動産登記規則」により所有者本人による申請も可能です。
登記手続きが完了すると、建物は登記簿から正式に抹消され、法律上も「存在しない建物」として扱われます。これにより、今後の土地取引や再建築がスムーズに行えるようになります。
固定資産税への影響
固定資産税は、「地方税法」に基づき、土地や建物などの固定資産に対して課される税金です。住宅が建っている場合は「住宅用地特例」により、税率が最大6分の1まで軽減されます。
しかし、建物を解体して更地となると、この優遇措置が翌年度から適用されなくなり、固定資産税が上昇するのが一般的です。そのため、解体後の土地をどのように活用するか、再建築・売却・駐車場経営などを早い段階で検討し、税負担増加への対応策を計画しておくことが重要です。
土地活用の方向性を明確にしておくことで、税務面・資産運用面の両方で無駄のない判断が可能となります。
相続した家を解体する際の注意点

相続した家を解体する際は、「不動産登記法」や「民法」に基づき、登記名義の整理や法定相続人全員の同意が得られているかなど、多角的な確認が欠かせません。
相続した家を解体する場合は、まず登記名義の変更が完了しているか確認することが最優先となります。相続登記が未了のままだと、「建設リサイクル法」に基づく届出における「発注者」資格を証明できず、解体契約の主体が不明確となるおそれがあります。
さらに、共有名義の建物を解体する場合、「民法」第251条により、共有者全員の同意が必要です。意見がまとまらず工事が進められない場合は、相続人間で協議を行い、書面による合意形成を図っておくことが重要です。
名義と相続登記の確認
相続登記が未了のままだと、解体後の「建物滅失登記」にも影響が及び、手続きが複雑化するおそれがあります。そのため、相続の段階で名義変更を行い、登記識別情報・戸籍謄本・遺産分割協議書など必要書類を確認しておくことが基本です。
また、2024年4月施行の改正「不動産登記法」により、相続登記は義務化されました。相続から3年以内に登記を行わないと過料の対象となるため、早めの対応が不可欠です。
法定相続人の同意と未相続でも解体可能?
共有状態の建物を解体する場合は、原則としてすべての相続人から書面による明確な同意を得る必要があります。同意を得ずに解体を行うと、損害賠償請求や共有物滅失に関する訴訟に発展するおそれがあります。
理論上、相続登記が未了の状態でも解体は可能とされていますが、後に相続人から異議を申し立てられるケースも少なくありません。そのため、「遺産分割協議」や「相続登記」を完了させてから解体を進めるのが安全策です。法的整理を確実に行うことで、余計なトラブルを避けつつ、相続資産としての土地活用もスムーズに行えます。
住宅解体の費用相場と内訳

解体費用は、建物の構造・敷地条件・残置物の有無などによって大きく変動します。加えて、自治体の補助金制度や金融機関のリフォームローンを上手に活用することで、費用を抑えることも可能です。
一般的な住宅解体の費用は100万〜300万円前後が目安で、坪単価では木造3〜4万円、鉄骨造3〜5万円、RC造(鉄筋コンクリート造)で3〜8万円ほどが相場とされています。建物の老朽度や立地条件によっては、足場設置・養生・残置物処理などの追加費用が発生し、総額が上がる場合もあります。
アスベストや特殊廃棄物を含む場合は、「大気汚染防止法」および「石綿障害予防規則」に基づく専門調査と除去作業が義務付けられています。これにより別途費用が発生するため、事前に調査を依頼して内容を把握しておくことが重要です。
見積書を確認する際は、廃棄物処理・足場・搬出費などの内訳を細かくチェックし、複数業者から相見積もりを取ることで、適正価格の判断がしやすくなります。
坪単価の目安と費用が変動する要因
建物の構造によって解体の難易度や使用する重機が異なるため、坪単価にも差が生じます。
木造住宅は躯体が比較的解体しやすい反面、鉄骨造やRC造は溶断やコンクリート破砕が必要になるため、費用も高めに設定されやすいです。さらに、解体現場が狭小地で重機が侵入できない場合などは手作業が増え、作業時間と人件費がかさむことも費用増の原因となります。
補助金・ローンの活用方法
自治体によっては、「空家等対策特別措置法」に基づき、老朽化した家屋の除却を支援する補助金制度を設けています。条件を満たせば、数十万円規模の助成金を受けられることもあるため、自治体の公式サイトや窓口で最新情報を確認しましょう。
また、解体費用を一括で負担できない場合は、「リフォームローン」や「解体専用ローン」などの民間融資を利用する方法もあります。補助金やローンを組み合わせることで、資金負担を分散させながら解体を進められます。
無理のない費用計画を立てるためには、補助金・融資制度それぞれの条件や返済負担を比較し、総合的に検討しておくことが重要です。
信頼できる解体業者を選ぶポイント

安心して解体工事を任せるためには、「建設業法」に基づく許可や保険加入の有無を確認し、複数社から見積もりを取って比較検討することが大切です。
解体工事は「労働安全衛生法」および「建築物の解体等作業指針」に基づき、安全第一で行われなければなりません。不適切な施工は近隣の建物損傷や人身事故を招くおそれがあり、業者選びの段階から慎重な判断が求められます。
信頼できる業者を選ぶには、「建設業法」「建設リサイクル法」に基づく解体工事業の登録・許可を持ち、「廃棄物処理法」に沿った適正な処理体制を整えているかを確認しましょう。また、工事中の事故や損害に備えて損害賠償保険に加入しているかも重要なチェックポイントです。
複数の業者から見積もりを取得し、費用内訳や追加費用の有無を比較すれば、相場とかけ離れた金額や不明瞭な項目を見抜きやすくなります。さらに、担当者の説明が丁寧かどうか、対応スピードが誠実かどうかも、信頼できる業者を見極める手がかりになります。
許可・保険加入のチェック
解体業者は、「建設業法」または「建設リサイクル法」に基づき、国土交通大臣または都道府県知事からの登録・許可を受けていなければなりません。許可番号(建設業許可票)や登録証明を提示してもらい、必要に応じて自治体や国のデータベースで照会するのが確実です。
また、作業中の事故や第三者への損害に備えて、「請負業者賠償責任保険」や「労災上乗せ保険」などに加入している業者を選ぶと安心です。保険加入証明書を確認し、補償内容も併せてチェックしておくとより確実です。
複数見積もりの比較と追加費用
解体工事の見積もりでは、「工事一式」とだけ記載された総額ではなく、廃棄物処理費・手作業費・足場設置・養生・交通誘導員費用などの内訳を詳細に確認することが重要です。
特にアスベスト除去(「大気汚染防止法」対象)や残置物撤去など、追加作業が必要な場合には、その費用が最初から見積もりに含まれているかを比較しておきましょう。
費用面だけでなく、担当者の対応の丁寧さ、これまでの施工実績、口コミや評判などを総合的に判断することで、信頼度の高い解体業者を選びやすくなります。
まとめ・総括
住宅解体を円滑に進めるためには、「建設リサイクル法」や「不動産登記法」などの法的知識に加え、費用相場や相続手続きなど幅広い理解が欠かせません。全体像を把握しておくことで、安心かつ適正な解体工事を実現できます。
住宅解体は、老朽化対策・土地活用・相続整理など多様な目的で行われますが、その過程では法的手続き、近隣対応、費用検討など多面的な準備が求められます。解体前には、「建設リサイクル法」に基づく届出や「道路交通法」に基づく道路使用許可、さらに近隣住民への説明などを適切に行いましょう。
費用は、建物構造・敷地条件・アスベストの有無などによって変動します。一般的な相場は100万〜300万円前後が目安です。複数社から相見積もりを取り、「建設業法」に基づく許可や保険加入状況を確認したうえで、信頼できる業者を選定することが重要です。
また、工事完了後には「不動産登記法」に基づく建物滅失登記を行い、「地方税法」に基づく固定資産税の扱いにも注意しましょう。これらの手続きを怠ると、売却や相続の際に思わぬトラブルにつながる場合があります。
解体工事は、単なる撤去作業ではなく、法律・税制・安全管理が複雑に関わるプロセスです。各要素を総合的に検討し、法令遵守と安全対策を徹底しながら、スムーズで安心できる解体工事を進めていきましょう。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。