公開日:2026.02.13 更新日:2026.02.16
NEW不動産投資の節税効果はいくら?損益通算や減価償却の仕組みを徹底解説
不動産投資における節税の本質は、単なる「納税額の圧縮」ではありません。
真の目的は、手残りのキャッシュ(キャッシュフロー)を最大化し、長期にわたる安定運用の原資を確保することにあります。税負担が読めないまま走ると、黒字のつもりでも納税で資金繰りが苦しくなったり、逆に節税を意識しすぎてキャッシュが残らない投資になったりしやすいからです。
では、節税を「再現性のある武器」として使うには、どんな点を理解しておけばいいのでしょうか。本記事では、減価償却・青色申告特別控除・損益通算の3つを軸に、節税効果が出やすい人の目安や、物件タイプごとの効き方の違い、法人化・相続まで含めた判断ポイントを説明していきます。
目次
なぜ不動産投資は節税になるのか?3つの主要な仕組み

不動産投資で節税効果を得られるのは、家賃収入から必要経費を差し引いて、課税所得を圧縮できる可能性があるからです。
実際にお金が出ていく支出だけでなく、減価償却のように「帳簿上で経費になる項目」も対象になるため、手元のキャッシュを大きく減らさずに課税所得だけを圧縮できる余地があるのが大きな特徴です。
具体的には、主に以下の3つの方法があります。
- 減価償却を活用した所得の減額
- 青色申告特別控除による所得の減額
- 国が定めた損益通算で住民税・所得税を軽減
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却を活用した所得の減額
減価償却とは、建物や設備の購入費を耐用年数に分けて毎年の経費として計上する方法です。計上できる年数は建物の構造(木造・鉄骨・RCなど)や設備の種類ごとに法定耐用年数が定められており、その年数に沿って毎年の償却費が決まります。
減価償却の対象は原則として建物・設備で、土地は対象外です。そのため購入価格が同じでも、建物割合が大きい物件や設備が多い物件ほど、償却費が出やすくなります。
青色申告特別控除による所得の減額
青色申告特別控除とは、青色申告を行う事業者が一定の要件を満たしたうえで申告すると、所得から最大65万円を差し引ける制度です。不動産所得でも青色申告を選べるため、帳簿付けと申告体制を整えることで、結果として課税所得を抑えやすくなります。
ただし、規模や帳簿の付け方によって控除額が変わり、事業的規模でない場合は控除が小さくなるケースもあります。
青色申告特別控除を受けるには、税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、期限内に青色申告を行う必要があります。
なお、最大65万円の控除を受けるためには、e-Taxによる申告または電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。これらを満たさない場合でも、要件に応じて55万円または10万円の控除が適用されます。
なお、不動産所得では「5棟10室」がよく目安として語られます。これは、不動産賃貸が事業的規模かどうかを判断する際の基準として挙げられるものですが、数や室数を満たしていれば自動的に青色申告特別控除が利用できるわけではありません。合わせて実態として継続的に管理・運営しているかもチェックされます。
損益通算による給与所得等との合算・税還付
損益通算とは、ある所得で出た赤字を、別の所得の黒字と相殺できる仕組みです。不動産所得の損失は、所得税法第69条に基づき給与所得等と損益通算が可能です。ただし、別荘などの「生活に通常必要でない資産」の貸付けによる赤字や、土地取得に要した借入金の利子相当額は通算できない点に注意が必要です。不動産所得が赤字の場合、その赤字に含まれる「土地取得のための借入金利子」については、損益通算の対象外(租税特別措置法)となる点に十分注意してください。
たとえば不動産所得が赤字になった場合、一定の条件を満たせば給与所得などと相殺でき、合計の課税所得が減る分だけ所得税・住民税が軽くなることがあります。ただし、損失の内容によっては通算に制限がかかる場合もあるため、事前に税理士に確認しておくと安全です。
節税効果が出やすいのは、そもそも税率が高い層になります。所得税は累進課税なので、同じ赤字額でも高所得の人ほど圧縮インパクトが大きくなりやすい傾向にあります。
節税効果は所得税率が大きく上がる「課税所得900万円以上」で実感しやすい

不動産投資の節税が「課税所得900万円以上」で効きやすいと言われるのは、所得税の税率がこのラインで大きく上がるからです。所得税の税率は以下のようになっています。
| 課税所得(目安) | 所得税率 |
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
695万円超〜900万円以下は23%ですが、900万円を超えると33%に跳ね上がります。なお、ここでいう課税所得900万円は給与収入から給与所得控除や社会保険料控除、基礎控除などを差し引いた後の金額なので、給与収入にすると各種控除の状況にもよりますが、おおむね1,200万〜1,500万円程度が目安になります。
不動産投資の節税は「圧縮できた課税所得に、どれだけ高い税率がかかっているか」で効き方が変わります。課税所得が900万円を超える人は、所得税率が33%のゾーンに入るため、減価償却などで課税所得を圧縮できたときの効果が大きくなりやすいです。
たとえば33%帯で課税所得を100万円圧縮できれば、所得税だけで約33万円の軽減になります。200万円なら約66万円、300万円なら約99万円と、圧縮できる金額が大きいほど節税額も積み上がっていきます。
所得が低い人は不動産投資が節税にならない場合も
課税所得が低い場合は、そもそもの所得税の負担が小さいため、所得を圧縮しても減る税額が限定的になりがちです。イメージが湧きやすいように、課税所得を100万円圧縮できた場合の税率帯ごとの節税額を見てみましょう。
- 課税所得300万円帯(所得税10%):10% × 100万円 = 10万円
- 課税所得600万円帯(所得税20%):20% × 100万円 = 約20万円
- 課税所得800万円帯(所得税23%):23% × 100万円 = 約23万円
- 課税所得1,000万円帯(所得税33%):33% × 100万円 = 約33万円
つまり、同じ100万円の圧縮でも、課税所得300万円帯(約10万円)と1,000万円帯(約33万円)では、節税額が約23万円も差が出る計算になります。課税所得が低いほど圧縮による税額の減り方が小さくなりやすく、節税効果を実感しにくいかもしれません。
物件選びで変わる不動産投資の節税効果

不動産投資の節税効果は「どの費用が、いつ、どれだけ経費になるか」で決まります。特に差が出やすいのは、減価償却できる元本となる建物の割合と、減価償却の年数に関わる耐用年数です。
ただし、節税だけを狙って不動産の種類を選ぶと、修繕や空室で手残りが削られることもあるため、節税効果と運用コストのバランスをセットで見るようにしましょう。
木造・築古物件|減価償却率の高さが魅力
木造や築古物件は、耐用年数の関係で初期から減価償却費を作りやすいのが特徴です。帳簿上の経費を出しやすいぶん、損益通算と組み合わせた節税効果が見えやすく「所得を圧縮できる年」を作りやすいタイプといえます。
一方で、築年数が古いほど、給排水や屋根外壁、防水、設備などの修繕が必要になりやすく、修繕費がかかるリスクも高くなります。節税で数字が整っていても、修繕が重なると手残りが薄くなるので、購入前にインスペクションや修繕履歴を確認しましょう。
新築物件|節税が「効く年」と「効かない年」の差が出やすい
新築は、築古に比べて法定耐用年数が長く、減価償却はゆるやかに進むため、1年あたりの節税インパクトは控えめになりやすいです。また、減価償却は毎年一定ペースで出るのに対し、取得時の諸費用や設備の更新費用は発生する年が偏りやすいため、結果として「経費が厚い年」と「薄い年」が生まれ、節税の体感に差が出るケースもあります。
ただし、新築は当面の修繕負担が抑えられ、入居付けも比較的スムーズに進みやすい強みがあります。そのため、節税を主目的にするより、運用を安定させて家賃収入を積み上げ、結果として税負担も読みやすく整えていくという考え方と相性が良いです。
区分マンション|節税より「手間の少なさ」が特徴
区分マンションは、節税を狙うよりも小さく始めて堅く回す投資といったところです。節税目的で無理に赤字を作る発想は避け、キャッシュが残るかで判断しましょう。建物部分は減価償却できますが、一棟ほど規模が大きくないため、損益通算で課税所得を大きく削るのは難しいです。
その代わり、管理や修繕は管理会社や管理組合が進めるため、運用負荷を抑えやすい魅力はあります。
一棟アパート|節税効果を出しやすいが運用の粗が損に直結する
一棟アパートは、減価償却に加えて、管理委託費・修繕費・募集費・金利なども動くため、損益通算につながる赤字(帳簿上の赤字)を作りやすく、節税効果を実感しやすい投資方法です。
ただし、運用がうまくいかないと損が膨らみやすい構造である点には注意が必要です。たとえば、空室が数戸出ると家賃収入が大きく落ちますし、原状回復や広告費が重なると利益は一気に細くなります。節税で税金が軽くなっても、キャッシュが減れば意味がないため、一棟ではとくに稼働率を落とさない運営の精度が重要です。
相続税・贈与税対策としての不動産投資|評価額圧縮のメリット
不動産投資は相続税や贈与税でも節税効果を発揮することがあります。
まず相続税の計算では、預金や現金は原則そのままの金額で評価されますが、不動産は土地なら路線価、建物なら固定資産税評価額をベースに評価されるため、実勢価格(市場価格)より低めの評価になりやすく、その分税額を減らせる可能性があるのです。
不動産の相続税評価額は時価の7〜8割程度に抑えられる傾向がありますが、令和6年(2024年)1月1日以降の相続・贈与から適用される「マンション建物の相続税評価額の計算」の改正(いわゆるタワマン節税規制)により、実勢価格との乖離が大きい物件は評価額が時価の約6割まで引き上げられることになりました。
また贈与税においては、早めに資産を移転して将来の相続財産を減らすという対策に活用できます。現金を贈与すると贈与額がそのまま課税対象になりますが、不動産で贈与する場合は、相続と同様に評価額ベースになるので贈与税の圧縮が期待できます。
ただし、贈与税は相続税より税率が高くなりやすく、タイミングや移転方法を誤ると節税どころか負担が増えることもあります。さらに、不動産を贈与すると、固定資産税の支払いや修繕・管理といった責任も受贈者側に移るため、「税金が減るか」だけでなく「誰が運用できるか」まで含めて設計する必要があります。
法人化をすると不動産投資の節税効果が高くなる?

所得税は累進課税で最大45%まで上がる一方、法人は利益に対して法人税や地方法人課税などが課せられます。国税部分の税率は23.2%が目安ですが、実際の負担率は所在地や規模、所得金額によって変わるため「税率が下がるか」ではなく具体的な手残りで判断するのが基本です。
たとえば、課税所得が1,800万円超〜4,000万円以下の人は所得税率が40%、4,000万円超では45%になります。一方、法人税率は原則として23.2%です。仮に「同じ利益1,000万円」が出た場合、個人では所得税率40%帯で約400万円、45%帯で約450万円の所得税負担が生じます。
一方、法人の場合は法人税だけでなく地方法人税・法人住民税・事業税なども含めた実効税率で判断する必要があり、条件によってはおおむね30%前後になるケースもあります。
そのため、法人化の判断は税率差だけでなく、社会保険料や維持コストを含めた手残りベースで行うことが重要です。
社会保険料負担や手続きコストがかかる点は注意
法人化する際には税率だけで考えずに「税金以外の固定コスト」も考えましょう。特に注意すべき点は以下のとおりです。
- 代表者・役員は原則として社会保険の対象になり、社会保険料の負担が増えるケースがある
- 法人設立時に登記をはじめとした費用がかかる
- 毎年の決算・申告が必要になり、税理士費用や記帳体制などの維持コストが発生する
つまり法人化は「税率が下がるか」よりも、社会保険料や運用コストを含めても最終的に手残りが増えるかで判断するのが現実的です。税率差で数十万円得しても、固定コストで相殺されることは普通に起きるため、法人化前に数年スパンのシミュレーションを作っておくと安全です。
売却のタイミングは「デッドクロス」を意識しよう
デッドクロスとは、減価償却費が小さくなる一方で、元金返済や修繕などの支出が残り、税金とキャッシュフローのバランスが崩れやすくなる局面を指します。帳簿上は利益が出ているのに、実際のキャッシュが増えないという状態が起きやすいのがこのタイミングです。
デッドクロスの怖いところは、帳簿上の利益に対して多額の税金が発生するにもかかわらず、手元の現金がローン返済に消えていく「黒字倒産」に近い状態に陥る点にあります。
償却が進んで経費が減ると、同じ家賃収入でも課税所得が増え、税金が重くなるうえに、老朽化による修繕も発生して、キャッシュフローが一気に苦しくなる恐れがあります。
最適な売却時期を見極めるためのポイント
物件を売却するタイミングを決める際に、特に考慮したいのは以下の2点です。
- 資産価値:いま売ったらいくらで売れるか
- 運用価値:持ち続けたらいくら手元に残るか
具体的なチェックポイントとして、以下のような点も見ておきましょう。
- 減価償却の残り年数:償却が薄くなるほど課税所得が増えやすく、手残りが落ちる入口になりやすい
- ローン残高と返済比率:返済が家賃収入を圧迫している状態だと、償却が薄くなった瞬間に苦しくなる恐れがある
- 修繕のタイミングと設備の寿命:まとまった修繕が起こる時期を見積もり、資金計画を立てる
- 家賃下落と空室リスクの兆候:周辺の募集賃料、人口動態、供給の増減、競合物件の設備更新など
- 売却益(または損)と手残りの総合判断:持ち続けた場合の累計手残りと比較して、売却とどちらが合理的かを見る
デッドクロスは、気づいたときには選択肢が減っていることが多いのが怖いところです。償却が効いているうちから、売却・借り換え・リフォームによる家賃維持などの選択肢を並べ、定期的に「いま売る場合」と「持つ場合」を比較しておくと、最適なタイミングを取りやすくなります。
まとめ:正しい知識と計画的な運用が節税の鍵
不動産投資による節税は、表面的な知識のみで実行すると、出口戦略やキャッシュフローで思わぬ損失を招く恐れがあります。再現性を担保するために「何の経費が、いつ効いて、どの税率帯に刺さるのか」をセットで考えるのが基本です。
特に大切なポイントは「節税額だけでなく手残りも同時に見ること」「物件タイプごとの特徴を織り込むこと」「法人化や相続は税率だけで決めず、社会保険料や維持コストなども含めて設計する」ということです。
節税は目的ではなく、長期運用を安定させるための調整弁です。減価償却が薄くなるデッドクロスも見据えて、定期的に「持つ場合」と「売る場合」を比較できる状態にしておくと、節税と資産形成を両立させやすくなります。
空き家や築古物件の再生は、建物比率を高く設定できる場合があり、節税効率が高い傾向にあります。「アキサポ」では、活用にお困りの不動産をリフォームして収益化するお手伝いをしているので、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。