公開日:2026.03.31 更新日:2026.03.24
NEW実家じまいとは?費用相場・補助金・進め方の手順を徹底解説
実家じまいを検討し始めても、「何から手をつければいいのか」「誰に相談すべきか」と足が止まってしまう方は少なくありません。親が施設に入った、相続が発生した、家が空いたなどのタイミングで動こうとしても、作業の膨大さを考えると手が止まりがちですよね。
そこでこの記事では、実家じまいの意味を押さえつつ、何を確認すれば前に進むのかを整理し、売却・賃貸・解体といった出口までつなげるための考え方と段取りを、迷いやすいポイントから順に解説します。
目次
実家じまいとは?

実家じまいとは、親や祖父母が住んでいた実家を子や孫が整理して、解体や売却をすることです。近年、相続をきっかけに空き家が発生しやすくなっていることに加え、子世代が遠方で暮らしていて定期的な管理が難しいことや、建物の老朽化で修繕費やトラブル対応の負担が増えやすいことなどから、近年行う人が増えています。
実家じまいの大まかな作業は、家族・親族で方向性を話し合い、名義や建物の状態などの現況を整理したうえで、不用品整理・遺品整理を進め、売却・賃貸・解体などの処分方法を選び、契約と必要な手続きを実行するという流れになっています。
片付けだけで終わらせず、不動産としての出口を決めて「今後の管理負担を終わらせる」状態に持っていくことが実家じまいのゴールになります。
実家じまいを検討・決断するタイミング
実家じまいを検討・決断する主なタイミングには以下のようなものがあります。
- 親が亡くなった場合
- 親が施設に入居した場合
- 相続した実家を維持するのが困難な場合
つまり、「住まいの機能が失われたとき」や「維持・管理コストがメリットを上回ったとき」が、実家じまいに踏み切るべき分岐点と言えます。それぞれの選択肢について、どのような状況や課題が考えられるか、具体的に見ていきましょう。
親が亡くなった場合
親が亡くなった場合は実家が空き家になりやすく、実家じまいが選択肢に入ってきやすいタイミングです。一度相続をしてから売りに出すケースもあれば、相続の際に売却してから相続人たちで分けるケースもあります。「実家じまい」というとなじみがない言葉に聞こえますが、相続手続きの中で行われていることは多いです。
相続が絡んでくると、実際に動き出す前に権利関係を整えないと動けないという特徴が出てきます。たとえば相続人が複数いる場合、誰が家を引き継ぐのかで意見が割れやすく、話し合いがまとまらないと売却も解体も進められません。遺品整理だけ先に始めると、あとから「勝手に処分された」「価値のある物がなくなった」と不信感につながることもあります。
親が施設に入居した場合
親が施設に入居して、家に戻ってこられる見込みが薄い場合も、実家じまいを検討するタイミングの一つです。
もちろん、本人や家族にとって気持ちの整理が追いつかないことも多く、簡単に割り切れる話ではありません。とはいえ、実家を空き家のまま維持していると固定資産税や火災保険、草木の手入れなどの負担が続き、老朽化が進むほど修繕や近隣対応のリスクも増えていきます。
戻って住む可能性が現実的に見込みにくいのであれば、売却して介護費用や生活費に充てるという判断が必要になることもあるでしょう。退所して生活に戻れる可能性がある場合は、実家を残すのか、子ども夫婦の家で同居するのかといった選択肢も含めて、暮らし方そのものを再設計する視点が必要になります。
相続した実家を維持するのが困難な場合
相続した実家を維持し続けるのが難しくなった場合も、実家じまいを検討するタイミングです。家はたとえ空き家でも管理費用や手間がかかり続けますし、さらに遠方で管理が難しいのであれば、近隣に迷惑をかける可能性も踏まえて、早めに方向性を決めたほうがよいでしょう。
また、いつまでも実家をどうするか決まらないと「いつかやらなきゃ」という気持ちが頭の片隅に残りますし、放火や不法投棄、無断侵入などのリスクも出てきます。精神的な負担から解放されるためにも、早めに方向性を検討することが大切です。
実家じまいにかかる主な費用

実家じまいにかかる主な費用は以下のとおりです。
- 不用品の処分・片付け費用
- 売却時に発生する仲介手数料
- 家の解体費用
- 引っ越しや転居に伴う費用
ここではそれぞれの費用について、どのような費用項目があるか、それぞれの相場はいくらくらいかを解説します。
不用品の処分・片付け費用(相場)
不用品の処分・片付け費用は、片づける量と、自分でできる範囲で大きく変わります。間取りや荷物の量からある程度の相場は算出できますが、思い出の品をどうするかという悩みもあるので、一概に「すべてお任せ」とはいかないことが多いです。
主な費用項目
- 粗大ごみ・家電リサイクル料金(冷蔵庫・洗濯機・テレビなど)
- ごみ処理券、処分場への持ち込み費用
- レンタカー/軽トラ代、梱包資材
- 業者依頼の場合:仕分け・搬出・運搬・処分・簡易清掃(オプションで供養、消臭など)
相場の目安
- 自力処分(少量):数千円〜数万円
- 業者依頼(目安):
- 1R〜1K:3万〜10万円程度
- 1DK〜1LDK:5万~15万円程度
- 2DK~2LDK:10万〜30万円程度
- 3DK以上:20万程度〜(※荷物量や搬出経路による)
売却時に発生する仲介手数料
実家を売却する際には不動産会社に支払う仲介手数料や、売買契約に伴う印紙代・登記費用、必要に応じて測量や残置物撤去などの費用が発生します。なお、仲介手数料の額は宅建業法に基づいて上限額が定められています。
主な費用項目
- 仲介手数料
- 契約書の印紙代(売買契約書)
- 住所氏名変更登記、抵当権抹消、相続登記などの諸費用(該当する場合)
- 測量・境界確定費用(必要な場合)
- ハウスクリーニング/残置物撤去(任意だが影響大)
仲介手数料の額
- 「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税」が上限(売買価格400万円超の場合)
- 例:売買価格1,000万円 → 39.6万円
家の解体費用(相場)
解体費用は主に「構造・広さ・立地」で決まります。加えて、ブロック塀や庭木、物置など付帯物の撤去なども影響してきます。
主な費用項目
- 本体解体
- 廃材の運搬・処分
- 付帯工事(庭木、塀、カーポート、物置、浄化槽など)
- 整地費用
- アスベスト調査・除去(必要な場合)
相場の目安
- 木造:3万〜5万円/坪
- 鉄骨造:4万〜7万円/坪
- RC造:6万〜10万円/坪
引っ越しや転居に伴う費用(相場)
親の施設入居や住み替えが伴う場合は、追加で引っ越しや転居に伴う費用がかかってきます。ここを見落とすと、実家じまい全体の資金計画が崩れやすいので注意しましょう。
主な費用項目
- 引っ越し代(距離・荷物量で変動)
- 賃貸の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)
- 家具家電の買い替え、カーテンなど生活備品
- 施設入居の場合:入居一時金・保証金(施設による)
- ライフライン移設・解約費用、住所変更の手続きコスト
相場の目安
- 引っ越し代(1~2人):5万〜15万円程度
- 施設入居費:月額費用+一時金
実家じまいに使える補助制度・税金控除制度

「実家じまい」そのものを対象にした補助制度というのはありませんが、空き家を対象にした補助制度や、相続に伴う減税制度や国庫帰属制度などを利用できる場合があります。
ここでは、実施主体を地方自治体と国に分けて、利用できる可能性がある補助制度を見ていきましょう。
地方自治体の補助制度(解体・リフォーム補助・空き家バンク)
多くの自治体では、老朽化した空き家の撤去や流通を進めるために、解体費や改修費の一部を補助しています。ただし、自治体ごとに制度名や金額、要件が異なる可能性があるので注意しましょう。
老朽危険家屋解体撤去補助金
老朽化に伴って、倒壊や部材の飛散といった危険性がある空き家の解体費用を補助する制度です。多くの自治体が実施しています。補助割合は3~5割程度、上限額は50万円前後に設定されていることが多いです。
ただし、補助金額は自治体による差が大きいので、具体的な額は実家のある自治体に確認しましょう。
空き家バンク
空き家バンクは、自治体の空き家対策窓口で「売りたい・貸したい空き家」を登録し、移住希望者や地域で住まいを探している人に向けて情報を公開する仕組みです。自治体が間に入って物件情報を整理したり、内覧の調整や移住支援制度とセットで案内したりするケースもあり、一般の不動産サイトとは違うルートで「家を必要としている人」に届きやすいのが特徴です。
実施主体は自治体ですが、自治体自体は不動産仲介ができないので、具体的に交渉や仲介を行う段階になったら不動産会社が請け負うケースが一般的です。
空き家バンクが向いているケース
- 相場より高くは売れなくても、必要としている人に届けば成立しそうな家
- 移住希望者向けに、賃貸・譲渡も選択肢に入れたい場合
- 早く処分したいが、買取だと価格が厳しいときの代替案
国の制度(3,000万円控除・国庫帰属)
国が用意している補助制度は自治体のように「工事費を直接補助する」のではなく、制度で税負担を軽くしたり、不要な土地を手放すルートを用意したりといった特徴があります。細かな要件が定められていますが、該当すれば大きなメリットを受けられる可能性があります。
3,000万円控除(空き家の譲渡所得の特別控除)
相続した実家を売却する際、一定要件を満たすと売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる制度です。
主な要件は以下のとおりです。
- 建築時期:1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物
- 建物種別:一戸建て(マンションは対象外)
- 居住状況:相続開始直前まで、被相続人が 一人で居住していたこと
- 売却価格:1億円以下
- 売却までの対応:耐震リフォームをするか、解体して更地にする(いずれか)
- 売却期限:相続から3年目の12月31日までに売却
この制度の適用を受けるには、確定申告時に「被相続人居住用家屋等確認書」などの必要書類を添付する必要があります。確認書は自治体で発行手続きが必要になるので、早めに用意しておきましょう。
相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を、一定の要件と負担金(※)の納付のもとで国に引き取ってもらう制度です。建物がある場合は、原則として解体して更地にする必要が出てきます。
売却が難しく、管理だけが続いている土地を持っている場合や、相続人が遠方で、草刈りやクレーム対応が現実的にできない場合などに向いています。
ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、要件確認と手続きに時間がかかる点は覚えておきましょう。あくまで売却か解体が基本で、もう一つの選択肢として使える可能性がある程度に理解しておいてください。
※ 国がその土地を管理するために要すると見込まれる10年分の標準的な管理費用の一部に相当する金額を、申請者が国に納める費用。宅地や田畑は原則20万円だが、ただし市街地の宅地などでは面積に応じた算定がされる仕組みになっている。
実家じまいの進め方と主な手順

実家じまいを完了させるには、物理的な片付けだけでなく、建物の名義や相続の状況などの権利関係もクリアにする必要があります。これらを一気に進めるのは難しいので、まず全体を5ステップに分解して、順番に進めていくのが現実的です。
一般的な流れは以下のとおりです。
- 1.親族間での意思疎通と合意:相続人全員で現状の課題を共有し、暫定的なゴール(売却・活用・解体)を話し合う
- 2. 状態の把握と専門家への相談:名義や相続の状況、建物及び敷地の状態などを確認し、必要な専門家に相談する
- 3. 費用の見積もり:片付け・売却・解体・測量など、想定される費用を洗い出し、相見積もりで金額と条件を揃えて比較できる状態にする
- 4. 不用品整理・遺品整理:重要書類を確保したうえで「残す・売る・譲る・捨てる」の基準で仕分けを進める
- 5. 手続きの契約と実施:売却・賃貸・解体それぞれの契約と登記・引渡しまでを段取りで管理します。
なかでもしっかり決めておきたいのが、1の合意形成です。ここが曖昧なままだと、誰が窓口になるのか、費用をどう負担するのか、どのタイミングで決断するのかが決まらず、片付けだけが先行して途中で止まりやすくなります。
いきなり全部を決めるのは難しいので、まず窓口になる人を決めて査定や見積もりを行い、具体的な数字が見えてきたら再度相談をするという方法でもOKです。
後悔しない実家じまい・遺品整理の3つのポイント
実家じまい・遺品整理を行ううえで大切なポイントは「揉めない段取り」と「捨ててはいけない物の確保」を先に固めることです。特に相続が絡む場合、形見分けや処分の進め方ひとつで親族間の不信感につながることもあります。
そこでここでは、特に意識すべき3つのポイントを紹介します。
形見分けは独断で進めない
形見分けを独断で進めるとトラブルの元になりがちです。特に価値がありそうな物は、形見というより相続財産として扱われる可能性があるため、勝手に譲ったり捨てたりすると誤解が生まれやすいです。
特に以下の点には注意しましょう。
- 高価なものは鑑定に出す:貴金属や骨董品など、価値がありそうな物や判断がつかない物は、一旦よけて鑑定・査定を検討する
- 譲る前に報告する:親族に形見を譲る場合は、後から「勝手に処分された」と思われないよう、事前に連絡・共有してから進める
どうすればいいか分からない場合は保留しておくのが基本です。迂闊な行動で不和を生んでしまうと、その後の遺品整理が進みにくくなる恐れがあります。
片付けの効率化に業者を活用する
自分や親族以外でもできる片付けには、業者を活用すると時間と体力の負担を大きく減らせます。特に、遠方で何度も通えない場合や、期限が決まっている場合は現実的な選択肢になるでしょう。
依頼先となる業者とそれぞれの特徴は以下のとおりです。
- 遺品整理業者:仕分け・搬出・処分まで一括で依頼できる
- 不用品回収:家具家電など大型の処分をまとめて進めやすい
- 買取業者:売れる物を現金化し、片付け費用の一部に充てられる
処分する前に最終確認をする
実家じまいは、片付けが終盤になるほど疲れが溜まり、うっかり重要な物を捨ててしまうリスクが上がりやすいです。そのため、物を処分する際には必ず最終確認をするクセをつけましょう。
たとえば、以下のようなタイミングで最終確認をします。
- 処分前の最終チェック:貴重品・書類・形見・残す物が混ざっていないかを、処分直前にもう一度確認する
- 写真で記録:処分前に部屋や押し入れを撮っておくと「何をどう片付けたか」の説明がしやすくなる
遺品整理は、片付けであると同時に、親族間の信頼を守る作業でもあります。だからこそ、最初にルールを決め、迷った物は保留し、最後に確認するという流れの徹底が大切になってくるのです。
まとめ
実家じまいは、片付けの問題に見えますが、実際は「合意・名義・お金」の3点をそろえて初めて動き出す作業です。それだけに動き出しが複雑で、想定されるタスクの量に圧倒されてしまいがちなのです。
だからこそ頑張って片付けることよりも、判断に必要な材料を先に集めることが大切になってきます。①窓口役を決める、②名義と相続関係・重要書類をそろえる、③売却・賃貸・解体それぞれの費用感をざっくりでも把握するという3つを押さえるだけで、家族内で話が進みやすくなります。
自分たちだけで難しいと感じる場合は、不動産会社や司法書士などの専門家に早めに相談しましょう。専門家の知識と経験で、ゴールまでのガイドラインを引いてくれるはずです。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。