公開日:2026.10.08 更新日:2026.09.25
NEW空き家の残置物とは?定義・処分・費用・注意点

空き家の残置物(ざんちぶつ)とは、以前の居住者が退去したあとも、建物や敷地内に残された家具・家電・生活用品のことです。残置物は単なる不用品とは限らず、所有権や契約が関係するため、自己判断で処分すると相続人や買主とのトラブルにつながる可能性があります。
そこでこの記事では、残置物の定義や具体例、問題になりやすい場面、放置するリスク、処分方法と費用相場を解説。「自分でどこまで片付ける?」「勝手に捨てても大丈夫?」とお困りの方へ、売却や相続をスムーズに進めるポイントをご紹介します。
目次
空き家の残置物とは?定義と具体例

残置物とは、以前の居住者が退去したあとも、建物内や敷地内に残されている家具・家電・衣類・日用品などのことです。
空き家にある残置物の代表例としては、タンスやベッドなどの家具、冷蔵庫・洗濯機・テレビといった家電、食器や衣類、工具、アルバム、仏壇などがあります。屋外の自転車や植木鉢、物置・倉庫に残された荷物なども残置物に含まれることがあります。
一見すると不要と思えるものでも、所有権は元の居住者にあります。そのため、無断で処分すると法的トラブルになる恐れがあります。
残置物の具体例と付帯設備との違い
| 分類 | 該当する主な品目 | 不動産売却時の扱い |
|---|---|---|
| 残置物(動産) | 家具、家電、衣類、日用品、移動できる物置・植木鉢 | 原則として売主(所有者)が撤去・処分する |
| 付帯設備 | 給湯器、換気扇、システムキッチン、洗面台、造り付け収納 | 建物の一部(設備)として買主へ引き渡す |
| 判断に注意が必要な物 | エアコン、照明器具、後付けの物置、ビルトイン以外のコンロ | 売買契約書(付帯設備表)で残留か撤去かを明確にする |
残置物になりやすいのは、家具・家電・日用品・趣味用品といった、持ち運びができる「動産」です。
一方、建物に備え付けられた給湯器や換気扇、インターホン、造り付け収納、キッチン、洗面台などは、付帯設備として扱われるのが一般的です。
判断に迷いやすいのが、エアコン・照明・物置・コンロなどは、建物と一体で機能する設備(従物)とみなされるか、単なる私物(動産)かです。 不動産売買では、これらを「付帯設備表」に記載して引渡すか、あるいは「残置物(撤去対象)」とするかを契約時に書面で明確に区分します。
空き家の残置物が問題になりやすい3つの場面
相続・売却・解体では、残置物を「誰が処分するのか」「費用を誰が負担するのか」が問題になることがあります。所有権や撤去するタイミングも含め、関係者との認識がずれるとトラブルにつながることも。
ここでは、特に注意したい3つの場面を紹介します。
相続|残置物の処分をめぐり相続人同士でトラブルになる
相続した空き家では、残された家具や家電をめぐり、相続人同士で意見が分かれることがあります。
さらに、室内の荷物には現金や通帳、貴金属、重要書類、形見などが混ざっていることも。不要に見えるものでも遺産に含まれる可能性があるため、一人の判断で処分するとトラブルの火種になりかねません。
相続人が多かったり遠方に住んでいたりすると、処分方針の話し合いだけで時間がかかってしまいます。長年放置された空き家では大量の荷物が残っているケースもあり、相続をきっかけに残置物の扱いが大きな負担となることがあります。
売却|残置物の撤去費用や引き渡し条件が問題になる
空き家を売却する際は、残置物を誰が撤去し、処分費用を負担するのかが問題になりやすいポイントです。
家具や家電が大量に残っていると、買主が片付けの手間や費用を負担に感じ、価格交渉につながることもあります。また「売主が撤去すると思っていた」「その家具は残してもらう予定だった」など、認識の違いから引き渡し時にトラブルになるケースも。
家財で床や壁が隠れていると、内覧時の印象が悪くなるだけでなく、雨漏りやシロアリ被害などの欠陥を見落としやすくなります。 その結果、買い手がつかなかったり、想定外の指値(大幅値引き)を要求されたりする原因になります。
解体|残置物の撤去で追加費用や工事の遅れが発生する
空き家を解体する場合、建物の解体費用とは別に残置物の撤去費用がかかるケースがあります。「解体するなら家の中の家具もまとめて処分してもらえる」と考えていると、予定していなかった出費につながることも。
また、残置物の量や種類によっては、撤去が終わるまで解体工事を始められない場合があります。家電や危険物など、解体業者では処分できないものが残っていれば、別途対応が必要になることもあるでしょう。
残置物が多いほど撤去にかかる費用や時間も増え、解体工事の着工が遅れる可能性があります。追加費用とスケジュールの遅れにつながりやすいことが、解体前の残置物で問題になりやすいポイントです。
空き家の残置物は誰が処分する?費用負担の基本ルール

空き家の残置物は、原則としてその所有者が処分します。家具や家電などには所有権があるため、第三者が勝手に処分するとトラブルになる可能性があるためです。
ただし、不動産の売却方法や解体工事の契約内容によっては、買主や不動産会社、解体業者が撤去を引き受けるケースもあります。誰が処分し、費用を負担するのかは契約によって異なるため、ケース別に見ていきましょう。
仲介で売却|売主が残置物を処分する
不動産会社の仲介で空き家を売却する場合、売主が引き渡しまでに残置物を撤去するのが基本的です。
ただし、売主による片付けが難しい場合は、買主との合意によって残置物を残したまま引き渡すケースもあります。その場合は、残す家具・家電などを明確にしたうえで、処分費用の負担や引き渡し後の扱いを契約書の特約などに記載します。
残置物の扱いが曖昧になっている場合「撤去されると思っていた」「残してもらう予定だった」と売主・買主の認識が食い違う原因に。品目や数量、設置場所などをリストや写真で共有し、引き渡し時の状態を明確にしておくとトラブル防止につながります。
不動産会社が買取|残置物ごと買い取ってもらえるケースもある
不動産会社による買取では、残置物がある状態のまま物件を買い取ってもらえるケースがあります。売主自身で大量の家具や家電を片付ける必要がなく、相続した空き家が遠方にある場合などにも利用しやすいのがメリットです。
ただし、不動産会社が残置物を処分する場合、その費用を差し引いて買取価格を決めることがあります。そのため、売主が自分で処分費用を支払わなくても、結果的に売却価格が低くなるケースがある点は押さえておきましょう。
また、不動産会社によって買取できる物件の状態や残置物への対応範囲は異なります。大量の薬品やタイヤなど、処分が難しいものは対象外となるケースもあるため、査定時に残置物の状態も伝えておきましょう。
解体工事をする|所有者が残置物の処分費用を負担する
空き家を解体する場合も、基本的には建物の所有者側が残置物の処分費用を負担します。解体業者によっては残置物の撤去まで依頼できますが、建物の解体とは別料金になるケースもあります。
また、解体業者がすべての残置物を処分できるとは限りません。室内の家具だけでなく、庭や物置の荷物、家電リサイクル法の対象となる家電などがある場合は、対応範囲によって別途処分が必要になることもあります。
家庭から出る家具やゴミの処分・運搬には、自治体からの「一般廃棄物収集運搬業許可」が必須。 「産業廃棄物収集運搬業許可」や「古物商許可」しか持たない業者が家庭の不要ゴミを有償運搬することは違法(廃棄物処理法違反)です。不法投棄された場合、依頼主がトラブルに巻き込まれるリスクもあるため、委託先の許認可状況を必ず確認しましょう。
空き家に残置物を放置するリスク

「売却や解体が決まってから片付ければいい」と残置物を長期間放置すると、処分の手間が増えるだけでなく、売却や解体が予定どおり進まなかったり、建物の管理状態が悪化したりする原因になります。
ここでは、残置物を放置することで生じる主なリスクを見ていきましょう。
売買・解体|契約トラブルや追加の撤去費用が発生する
「引き渡しまでに残置物を撤去する」と取り決めていたにもかかわらず、家具や家電などが残っていると、契約内容に沿った引き渡しができなくなる可能性があります。撤去に時間がかかれば、引き渡しや決済の延期、追加の処分費用をめぐるトラブルにつながることも。
解体でも同様に、残置物が残っていることで工事を始められず、工期が延びるケースがあります。特に庭や物置、屋根裏、床下などの荷物を見落としていると、見積もり後に残置物が見つかり、撤去費用が追加される可能性があります。
空き家管理|建物の劣化や害虫・特定空家等のリスク
家具や衣類、ゴミが大量に残された空き家は、掃除や換気がしにくく、湿気やカビ、悪臭、害虫などが発生しやすくなります。長期間放置すれば、建物の状態が悪化する原因にもなりかねません。
また、屋外に残置物が散乱していると、不法投棄を招いたり、放火など防犯・防災面のリスクが高まったりする可能性もあります。悪臭や害虫が周辺に広がれば、近隣住民とのトラブルに発展することもあるでしょう。
窓ガラスの破損やゴミ放置などで周辺環境に害を及ぼすと、改正空家対策特別措置法に基づき「管理不全空家等」や「特定空家等」に指定されます。 自治体からの勧告を受けると、固定資産税の優遇措置(住宅用地特例による最大6分の1の減額)が解除され、翌年度から税負担が更地同等(実質最大約6倍・本則課税水準)に跳ね上がります。
空き家の残置物の処分方法と手順は?
空き家の残置物は、いきなり捨て始めるのではなく、家の中に何があるのかを把握してから順番に整理するとスムーズです。
| 手順 | 作業内容 | ポイント |
|---|---|---|
| STEP 1:現地状況の把握 | 室内・物置・庭を含め残置物の量と種類を確認する | スマホで写真を撮っておくと見積もりがスムーズ |
| STEP 2:貴重品・書類の回収 | 現金、通帳、権利証、貴金属、思い出の品を取り分ける | 相続手続きに必要な書類を誤処分しないよう注意 |
| STEP 3:残置物の仕分け | 「手元に残す」「売る・譲る」「処分する」の3つに分類 | 資産価値の有無を慎重に確認する |
| STEP 4:処分方法の確定 | 自治体処理、専門業者依頼、買取サービス等を決定 | スケジュールと費用にあわせて選定する |
| STEP 5:搬出・撤去実行 | 品目や法令に沿って適切に搬出・処分する | 無許可業者へ依頼しないよう注意 |
空き家の残置物を処分する3つの方法
仕分けが終わったら、残置物の量や種類、片付けにかけられる時間に合わせて処分方法を選びます。
自分で処分する
自分で処分する場合は、自治体の可燃・不燃ゴミや粗大ゴミに出すほか、自治体のルールに沿って処理施設へ持ち込む方法があります。
業者に依頼するより費用を抑えやすいため、残置物が少ない場合に向いています。一方、大型家具の運び出しやゴミの分別には手間と時間がかかるため、荷物が大量にある場合や空き家が遠方にある場合は負担が大きくなりやすいのがデメリットです。
業者に依頼する
残置物が大量にある場合や片付ける時間が取れない場合は、業者に依頼する方法があります。仕分けや搬出などをまとめて任せられるため、片付けにかかる負担を減らせるのがメリットです。
ただし、対応範囲や料金体系は業者によって異なります。見積もりを取る際は、どこまで作業してもらえるのか、費用の内訳や追加料金が発生する条件までチェックしましょう。
売る・譲る
まだ使える家具や家電、ブランド品、骨董品などは、捨てる前に売却や譲渡を検討する方法もあります。リサイクルショップや買取業者、フリマサービスなどで現金化できれば、残置物を減らしながら処分費用の負担を抑えられます。
ただし、すべての残置物に値段がつくとは限りません。売却や解体の予定がある場合は期限を決め、売れないものは別の方法で処分するなど、並行して片付けを進めるとよいでしょう。
家電・パソコンは法令に沿って処分する
残置物のなかには、自治体の通常のゴミ回収とは異なる方法で処分するものがあります。エアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(衣類乾燥機)の4品目は「家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)」により、自治体の粗大ゴミとしては捨てられません。
購入した店舗や買い替え先の店舗へ引き取りを依頼するほか、指定引取場所へ自分で持ち込むなど、決められた方法で処分します。その際、家電リサイクル料金や収集・運搬料金がかかる場合があります。
パソコンは自治体の粗大ゴミとは処分方法が異なり、メーカーによる回収などを利用できます。処分前には、パソコン内に残った写真や住所、各種アカウントなどの個人情報が流出しないよう、データの消去も必要です。
空き家には購入時期や購入店が分からない古い家電が残っていることもあります。処分方法が分からない場合は、自治体の案内などを確認し、品目に合った方法で処分しましょう。
空き家の残置物処分にかかる費用相場と高くなるケース
残置物の処分を業者に依頼する場合、費用は部屋の広さだけでなく、荷物の量や種類、搬出のしやすさなどによって変わります。間取り別の目安は次のとおりです。
| 間取り | 費用目安 | 作業人数の目安 |
|---|---|---|
| 1R ~ 1K | 2万円 ~ 8万円程度 | 1 ~ 2名 |
| 2DK ~ 3LDK | 10万円 ~ 30万円程度 | 2 ~ 4名 |
| 戸建て(一軒家) | 20万円 ~ 50万円以上 | 3 ~ 6名 |
※上記はあくまで目安です。残置物の量や種類、作業内容などによって実際の費用は異なります。
処分費用が高くなりやすい傾向としては、次のような特徴があります。
- 家具や家電など残置物の量が多い
- エレベーターがなく、階段での搬出が必要
- トラックを建物の近くに停められない
- 廊下や玄関が狭く、大型家具を搬出しにくい
- 家電リサイクル法の対象となる家電が複数ある
- 庭や物置、倉庫など屋外にも残置物がある
- 分別や仕分けから業者へ依頼する
たとえば同じ3LDKでも、すでに分別されていて搬出しやすい物件と、大量の荷物が残り階段で運び出す物件では、必要な作業人数や時間が異なります。そのため、間取りだけで処分費用を判断しないことがポイントです。
業者から見積もりを取る際は、総額だけでなく「どこまで料金に含まれているか」も比較しましょう。残置物の搬出・処分だけでなく、家電リサイクル料金や清掃、養生などが別料金になるケースもあります。
複数の業者から同じ条件で見積もりを取り、作業範囲や追加料金が発生する条件まで比較するとよいでしょう。
残置物を残したまま空き家を売却する方法
残置物を残したまま空き家を売却する方法には、残置物ごと引き取ってくれる買主を探すほか、不動産会社や買取業者に直接買い取ってもらう方法があります。
売主が家具や家電を撤去する手間を省けるため、遠方にある空き家や、早く手放したい物件では選択肢のひとつです。
残置物の扱いを契約書に明記する
残置物を残したまま引き渡すことが決まったら、家具や家電など対象となるものをリストにまとめ、必要に応じて写真も用意します。そのうえで、次のような内容を契約書や特約に記載しましょう。
- 残したまま引き渡す家具・家電などの範囲
- 引き渡し後に残置物を処分する人
- 撤去・処分費用を負担する人
- 残置物の所有権をどのように扱うか
- 残置物に関する売主・買主それぞれの責任範囲
相続した空き家の残置物で注意すべきポイント

相続した空き家の残置物には、現金や貴金属など財産的な価値があるものや、相続手続きに必要な書類が含まれていることがあります。そのため、通常の不用品と同じ感覚で処分するのは避けたいところです。
特に、相続人が複数いる場合や相続放棄を検討している場合は、残置物の処分がその後の手続きに影響する可能性があります。片付けを始める前に、次のポイントを押さえておきましょう。
相続人の同意なく残置物を処分しない
空き家に残された家具や家財などが相続財産に含まれる場合、一人の相続人だけで処分すると、ほかの相続人とのトラブルにつながる可能性があります。一見すると処分しても問題なさそうなものでも、ほかの相続人にとっては残しておきたい品であるかもしれません。
相続人が複数いる場合は、残置物の状態を写真や動画で共有し、話し合ってから片付けを進めましょう。
また、通帳や印鑑、不動産の権利関係が分かる書類、保険・税金関係の書類などが見つかった場合は、ほかの残置物と分けて保管します。誤って捨てないよう、処分前に貴重品や重要書類が残っていないか確認しておきましょう。
相続放棄を検討している場合は残置物を処分しない
相続放棄を検討している場合は、残置物を自己判断で処分しないよう注意が必要です。
遺品や家財を処分すると、遺産を自分のものとして受け継ぐ意思表示とみなされ、「法定単純承認(民法921条)」が成立することがあります。 ひとたび成立すると、亡くなった方の多額の借金もすべて背負うことになり、後から相続放棄を家庭裁判所に申し立てても受理されません。形見分けの範囲を超える家財の廃棄や売却は、絶対に独断で行わないでください。
相続放棄には、原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内という期限があります。残置物の処分を急ぐ前に相続するか放棄するかを検討し、判断に迷う場合は弁護士などの専門家へ相談しましょう。
まとめ|空き家の残置物は状況に合わせて適切に処分
空き家の残置物は、家具や家電などの不用品に見えても、所有権や相続が関係するため自由に処分できないケースがあります。まずは誰の所有物なのかを整理したうえで、処分を進めることが基本です。
処分方法は、自治体の回収や業者への依頼、買取などさまざま。残置物の量や売却・解体までの期限、処分費用を比較しながら、自分に合った方法を選びましょう。
また、残置物を残したまま売却する場合は買主との合意を契約書に残し、相続放棄を検討している場合は自己判断で処分しないよう注意が必要です。状況に合った方法で片付けを進め、余計な費用やトラブルを避けながら、空き家の売却・活用につなげていきましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






