公開日:2025.07.28 更新日:2025.07.29
NEW家の傾きを直すには?補助金・保険の活用と修繕費用を徹底解説

家が傾くと、構造上の危険だけでなく、健康被害や資産価値の低下を招きます。この記事では、傾きの主な原因や、利用できる補助金、火災保険・地震保険の適用範囲、修繕方法と費用相場、そして傾いた家の売却選択肢までを総合的に解説します。
公的支援制度や保険を上手に活用すれば、修繕費用の負担を軽減できる可能性があります。「家が傾いていて、建て替えたいけれどお金がない」とお悩みの方は、まずは現状把握と支援制度の確認から始めましょう。
目次
家の傾きの基礎知識|症状と放置リスク

家の傾きは、軽微な症状から始まります。しかし、気づかずに放置してしまうと、より大きなダメージを招きかねません。ここでは、初期症状と放置した場合のリスクについて見ていきましょう。
家の傾きは、床のわずかな傾斜や段差など、日常の小さな違和感として現れることが一般的です。初期段階では気づきにくいこともありますが、進行するとドアや窓の建て付けが悪くなり、開閉が困難になるなど、明らかな不具合へとつながっていきます。
放置すれば耐震性が低下し、地震時の倒壊リスクが高まるだけでなく、住む人の健康にも影響を与える可能性があります。さらに、修繕費が膨らみやすくなるため、早期の点検と対策が非常に重要です。
また、家が傾いている状態では住宅の資産価値が大きく下がることもあります。建て替えやリフォームを検討する際には、傾きの修正を行っていないと、買い手から敬遠される原因となるでしょう。
ドアや窓の開閉不良は傾きの初期サイン
家の傾きは、ドアや窓の開閉がスムーズにいかなくなるといった形で初期段階に現れやすいです。
たとえば、ドアが床に擦れるようになったり、鍵がかかりにくくなったりする場合は、建物の歪みが原因である可能性があります。これらの症状を発見したら、できるだけ早く住宅診断士や地盤調査の専門業者に相談し、傾きの度合いや原因(土台沈下・不同沈下など)を調査してもらうことが重要です。
家の傾きがもたらす健康被害や耐震性への影響
家の傾きは、単なる構造問題ではなく、生活の質や安全性に直結する重大な課題です。建物が安全に使えない状態になる前に、初期症状を見逃さず、早期の点検・補修を検討することが、修繕費用の抑制にもつながります。特に傾きが目立ち始めた場合には、耐震補強やジャッキアップ工法による修正など、状況に応じた適切な対策を検討する必要があります。
家が傾く原因とは?地盤・老朽化・シロアリなどを解説

家の傾きの主な原因には、地盤沈下・老朽化・シロアリ被害・施工不良などがあり、これらが複合的に影響するケースも少なくありません。特に築年数が長い木造住宅では、複数の要素が同時進行していることも考えられるため、専門家による診断と原因の特定が非常に重要です。
また、新築時に地盤調査や適切な基礎工事がなされていない場合、数年以内に傾きが顕在化するリスクがあります。さらに、気候変動や土地条件の変化により、10年単位でゆるやかに傾きが進行する事例も見られます。
地盤沈下・液状化
地盤が不均等に沈下することで、建物が一方向に傾く現象が起こります。これは地震による液状化現象や、水はけの悪い軟弱地盤、埋立地・造成地で特に多く見られます。こうしたリスクは、地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験など)を通じて早期に把握できるため、必要に応じて地盤改良や杭打ちなどの対策を講じることが重要です。
老朽化・施工不良
建物は年数の経過とともに劣化が進み、基礎や柱の歪み・沈み込みが起こることで傾きや構造的なゆがみが生じます。特に施工段階での基礎配筋ミスやレベル調整不良があった場合、早期から不具合が現れるリスクがあります。施工時の図面や瑕疵担保責任保険の記録があれば、状況の把握と対応に役立ちます。
シロアリ被害
シロアリによる被害は、住宅の構造躯体である土台や柱を内側から侵食し、建物の荷重バランスを崩す要因となります。目視では発見が難しく、基礎の一部が沈下することで家全体が傾くケースも少なくありません。定期的な防蟻処理とプロによる点検が、長期的な傾きリスクの回避につながります。
家の傾きが補助金対象となる条件家の傾きに使える補助金|災害支援制度と申請条件を解説

家が傾いた場合、特定の条件を満たせば補助金の対象になることがあります。ここでは代表的な制度や認定基準を確認しましょう。
傾きの原因が自然災害(地震・台風・土砂崩れなど)に起因している場合は、「被災者生活再建支援制度」などを活用できる可能性があります。この制度は、住宅の被害が大規模半壊以上と認定された世帯に対し、再建費用の一部を支援するものです。この支援を受けるためには、自治体が発行する罹災証明書が必要となります。
補助金の申請には、申請期限・提出書類・写真記録などが厳格に定められており、これらの要件を満たさない場合や期限を過ぎた場合は、支援を受けられなくなる可能性があります。家を建て替えたいけれどお金がないと悩む方は、家の傾きが災害によるものか不明な場合でも、早めに市区町村役場の防災担当窓口や、損害保険会社の災害査定窓口へ相談するのが有効ですし、罹災証明書について確認してみましょう。
被災者生活再建支援制度の概要
この制度は、自然災害によって住宅に大きな被害を受けた世帯を対象に支給される公的な支援金制度で、「被災者生活再建支援法」に基づいて実施されています。東日本大震災や大規模水害などの事例では、被害の程度に応じて「基礎支援金」や「加算支援金」が支給され、再建方法により金額が異なります。家の傾きについても、被害状況が一定の判定基準を満たしていれば、支援対象となることがあります。
災害時の傾き認定基準と支給事例
災害によって住宅が傾いた場合、罹災証明書の発行を受けるためには、市区町村が定める被害認定基準を満たす必要があります。たとえば、罹災証明書において全壊、大規模半壊、半壊などの被害区分に応じて支援の対象範囲が決まり、支援金の額も異なります。過去の災害では、住宅の傾きが原因で大規模半壊と認定され、支援金や補助金を受給できた事例も確認されています。被災の程度は調査時に正確に申告することが重要です。
家の傾きに活用できる保険|地震保険・火災保険

補助金だけでなく、保険を利用することで修繕費用を大幅に抑えられる可能性があります。ここでは地震保険と火災保険の補償内容を確認しましょう。
家の傾きが地震などの自然災害によって生じたものである場合、地震保険の適用可否を確認することが有効です。多くの火災保険では、地震や津波による被害は補償対象外となっており、地震保険への加入がなければ保険金は支払われません。契約時に地震保険とのセット加入や、特約の有無を確認しておくことが重要です。
また、火災保険には契約内容によっては、風災・雪災・水災などの補償が含まれる場合があります。ただし、圧密沈下や不同沈下など、地盤由来の傾き被害については、地震や風災など明確な自然災害によるものと認められない限り、補償対象外となるケースが多く見られます。契約内容を定期的に確認し、不足があれば地震保険などの加入を検討するのが望ましいでしょう。
地震保険の補償範囲と認定基準
地震保険は、地震・噴火・これらによる津波が原因となる建物や家財の損害を補償対象としています。家の傾きが地震による構造的損壊と判定された場合、損害の程度に応じて保険金が支払われる可能性があります。
認定基準は火災保険とは異なり、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」といった区分により判定されます。損害の程度は建物の主要構造部(基礎・柱・壁など)の被害状況に基づき、保険金額の一定割合(例:30%・60%・100%など)が支払われる形式です。
火災保険で補償されるケースとは
火災保険は基本的に、火災・落雷・破裂・爆発などによる被害を補償する保険ですが、契約によっては風災・雪災・水災といった自然災害もオプションで補償対象となります。ただし、地震に起因する損害については、地震保険に未加入であれば補償対象外です。
したがって、住宅の傾きが自然災害によるものであれば、火災保険と地震保険を適切に組み合わせることで、補償範囲を広げ、万一の事態に備えることができます。
補助金・保険の申請に必要な書類と手続きの流れ

補助金や保険を受けるには、所定の書類の提出と正式な手続きが欠かせません。スムーズに進めるためにも、あらかじめ必要書類と申請の流れを把握しておくことが重要です。手続きの遅れや書類の不備によって、支給が遅れたり申請期限を過ぎたりするリスクもあるため、早めの準備が求められます。
自治体や保険会社に連絡を取る際は、「住宅がどのような被害を受けたのか」「傾きに気づいた時期」「被害の進行状況」などを具体的に説明できるよう、記録を残しておくと手続きが円滑に進みます。
補助金の申請では、所定の申請書類のほかに、所有者確認書類や修繕見積書などが求められる場合があります。不備があると再提出が必要となり、手続き全体が遅延する可能性があるため注意が必要です。
保険金の請求手続きにおいても、被害状況を証明する資料の提出が不可欠です。傾いた建物の全景・近景の写真、破損箇所の詳細写真、診断業者の調査報告書、工事見積書などをそろえておくことで、客観的な証拠として認定されやすくなります。
罹災証明書・被害届などの取得方法
災害時に家が傾き、被災者生活再建支援制度などを利用する場合、まずは役所や自治体に被害の届け出を行い、罹災証明書を取得する流れになります。自治体職員による現地調査が行われ、被害認定の等級が決定されるケースが一般的です。
罹災証明書の交付までには日数を要する場合があり、災害直後は申請が集中するため、早めの届け出が推奨されます。証明書の写しは、補助金申請・保険請求の両方に使用されることが多いため、大切に保管してください。
補助金と保険の併用は可能?
原則として、補助金と保険金の併用は可能です。補助金は公的支援制度であり、地震や風水害などで住宅に重大な損害があった場合に支給されます。一方、保険金は民間事業者との契約に基づく支払いであり、補助金と目的が重複しない限り、併用が認められるのが一般的です。
たとえば、補助金により住宅の再建費用の一部をまかない、保険金で残りの自己負担分を補填するという形が取られることがあります。ただし、自治体ごとの運用方針や保険会社の契約内容によって制約が異なる場合があるため、事前に確認しながら進めることが大切です。被害認定の等級や支給上限額に注意しつつ、計画的な申請を心がけましょう。
傾いた住宅の修繕費用はいくら?工法別に比較・解説

傾いた家を修繕する方法には複数の工法があり、工期や費用もさまざまです。ここでは代表的な修繕方法と目安の費用を紹介します。
家の傾きを直す工法は大きく分けて、建物の土台を持ち上げる方法(ジャッキアップなど)、地盤を補強する方法(薬液注入など)、そして建物自体を補強する方法(耐震補強等)の3つに分類されます。選択のポイントは、傾きの根本原因と建物構造、地盤の状態、さらに予算や工期といった要素を総合的に検討することです。
実際の修繕費用は、数十万円から数百万円台が一般的ですが、傾斜の程度や建物の規模、地盤改良の有無によっては1000万円近くかかるケースも報告されています。最適な工法は個別の状況によって異なるため、経験豊富な専門業者の診断を受けた上で、複数の見積もりを比較することが推奨されます。
ジャッキアップ工法・薬液注入工法など各種工法
ジャッキアップ工法は、建物を一時的に持ち上げて基礎や支持部を調整・補強する方法で、傾きの是正と水平復旧を同時に実現します。地盤に問題がある場合は、地盤改良工事を並行して実施することで再沈下の防止効果も期待されます。
一方、薬液注入工法は、地盤内にセメント系やウレタン系の薬液を注入し、空隙を埋めて地盤を強化・安定化させる手法です。作業規模が比較的小さいため、低コストで済むケースもありますが、地質調査によって適用可否を確認する必要があります。
修繕費用の目安と工期のポイント
軽微な傾きであれば、数日〜数週間程度の短期間で工事が完了し、費用も100万円未満で済む場合があります。一方、地盤沈下が広範囲に及び、基礎や構造に重大な損傷があるケースでは、工期が数ヶ月、費用も数百万円以上に達する可能性があります。
費用負担を軽減するには、補助金や保険制度の活用に加えて、複数業者による相見積もりや、工法選定の工夫も有効です。事前に地盤調査と建物診断を受け、長期的な耐久性を見据えた修繕計画を立てることが肝要です。
家が傾いたら売却できる?修繕する場合としない場合の比較

傾きのある家を売却する際、修繕してから売るか、現状のまま売るかという選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを整理して検討しましょう。
修繕してから売却する場合、建物の傾きが是正されることで資産価値が回復・向上し、売却価格が高くなる可能性があります。また、傾きが解消されることで住宅ローン審査や買主の不安材料が減り、取引がスムーズになる場合もあります。ただし、修繕には数十万~数百万円以上の費用が発生し、工期によって売却時期が遅れるリスクもあります。
一方、現状のまま売却する方法は、修繕費の負担が不要で早期に現金化できるメリットがあります。特に現金化を急ぐ場合や、修繕費を回収できる見込みが低いと判断した場合に有効です。ただし、建物の欠陥がある物件は市場価値が低く見積もられ、大幅な価格交渉が発生する可能性が高まります。
また、傾きをそのままにして売却する場合は、宅地建物取引業法(第47条)に基づく「告知義務」を果たす必要があります。買主に対して、建物の傾きや不具合箇所を正確に説明しなければ、契約不適合責任を問われるリスクも生じます。そのため、事前にホームインスペクション(住宅診断)を行い、物件の状態を客観的に把握・書面化しておくことが重要です。
まとめ・総括

家の傾きは放置することで建物の劣化や資産価値の低下、居住者の健康・安全への悪影響など、さまざまなリスクを招く可能性があります。したがって、早期発見と原因の特定、そして適切な対応が不可欠です。災害による傾きであれば、被災者生活再建支援制度や地震保険などの制度を活用することで、修繕費用の負担を軽減できる可能性があります。
また、契約内容によっては火災保険の風災・水災特約などが適用されるケースもあるため、加入中の保険プランを確認し、必要に応じて見直しておくことが大切です。傾きを直すための工法や費用相場は、地盤の状態や建物構造によって大きく異なります。信頼できる専門業者による診断をもとに、自宅の状況に合った工法と費用の見積もりを取得することが重要です。
さらに、傾いた家を売却する場合には、「修繕してから売る」「現状で売る」といった選択肢を比較検討し、告知義務や契約トラブルへの配慮も含めて判断する必要があります。
こうした情報を踏まえつつ、補助金・保険・修繕・売却といった選択肢を整理し、将来の住まい方と資産価値の維持を見据えて、専門家と連携した対応を心がけましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。