公開日:2026.11.05
NEW空き家の維持費はもったいない?年間コストと手放す判断基準

「誰も住んでいないのに固定資産税を払い続けるのはもったいない」「結局、年間いくらかかるの?」とお悩みではありませんか。
空き家の維持費がもったいないと感じるのは、使っていない建物にも固定資産税や火災保険料、水道・電気の基本料金などが継続してかかるためです。さらに、草刈りや剪定、遠方から管理に通う交通費、建物の劣化に伴う修繕費用など、想定以上に負担が膨らむこともあります。
そこでこの記事では、空き家の年間維持費の目安と内訳、放置リスクを解説。維持・賃貸・売却・解体にかかる費用や判断基準も比較するので、「持ち続けるべきか、手放すべきか」で迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家の維持費は年間いくらかかる?相場の目安

空き家の維持費として代表的なものに固定資産税といった税金がありますが、それだけではありません。水道・電気の基本料金や火災保険料、管理費、修繕費用、現地へ通う交通費なども含まれます。空き家の年間維持費は、通常10万〜30万円ほどです。ただし、修繕や庭木の剪定、管理委託をすると、年間30万〜60万円以上かかるケースもあります。
「思ったよりお金がかかっている……」と感じやすいのは、一つひとつの支出が小さく、全体の負担が見えにくいためです。固定資産税に加え、光熱費の基本料金や保険料、見回りの交通費などが少しずつ積み重なります。
空き家は放置すると換気や通水ができず、建物の傷みに気づきにくくなります。維持費は毎年一定とは限らず、放置期間が長くなるほど修繕費用が膨らむ可能性があります。
そのため、まずは1年分の支出を項目別に洗い出し、将来かかりそうな費用まで含めて「持ち続けるコスト」を把握することが、維持するか手放すかの判断材料になります。
空き家の維持費の内訳(税金・保険・光熱費・管理・修繕)
空き家の維持費は、毎年かかる「固定費」と、建物の状態や管理方法によって変わる「変動費」に分けると把握しやすくなります。
| 費用の項目 | 主な内訳 | 年間の目安額 | 費用が発生する特徴 |
|---|---|---|---|
| 税金 | 固定資産税・都市計画税 | 5万〜15万円 | 所有しているだけで毎年必ず発生する固定費 |
| 保険料 | 火災保険・地震保険 | 1万〜5万円 | 建物の構造や空き家特約の有無で変動 |
| 光熱費 | 水道・電気の基本料金 | 1万〜3万円 | 管理(通水・清掃)のために契約継続が必要 |
| 管理費 | 草刈り・剪定・巡回委託 | 3万〜10万円 | 自主管理か管理会社へ委託するかで変化 |
| 修繕費 | 雨漏り・外壁・設備補修 | 5万〜30万円 | 老朽化が進むほど突発的に高額化する |
| 交通費 | 現地への往復ガソリン代・高速代 | 1万〜5万円 | 遠方にあるほど負担が大きくなる |
なかでも管理費や修繕費用は、放置期間が長くなるほど膨らむ変動費。遠方にある空き家では、現地へ通う交通費や時間も見落としやすい負担です。
ここからは、空き家を所有する際にかかる主な維持費について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定資産税・都市計画税の計算の考え方
空き家には、原則として毎年、固定資産税がかかります。税額は課税標準額に標準税率1.4%を掛けて算出します。市街化区域などでは都市計画税もかかり、税率は自治体によって異なりますが上限0.3%です。
基本的な計算式は以下のとおり。
- 固定資産税=課税標準額×1.4%(標準税率)
- 都市計画税=課税標準額×最大0.3%
住宅がある土地には「住宅用地の特例」が使えます。200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)なら、固定資産税の課税標準額が6分の1、都市計画税が3分の1に安くなります。
たとえば、土地の固定資産税評価額が1,500万円で、その全体が小規模住宅用地に該当すると仮定した場合、固定資産税の概算は次のとおりです。
1,500万円 × 1/6 × 1.4% = 約3万5,000円/年
建物の課税標準額を800万円と仮定すると、
800万円 × 1.4% = 約11万2,000円/年
となり、土地と建物の固定資産税は単純計算で年間約14万7,000円です。都市計画税が課税される地域では、これとは別に都市計画税もかかります。
ただし、実際の税額は土地・建物の課税標準額や自治体の税率、負担調整措置などによって異なります。毎年届く納税通知書や課税明細書を見て、現在の税額や特例が使われているか確認してみましょう。
管理費・メンテナンス費(草木・換気・通水・清掃)
空き家を自主管理する場合は、定期的な換気・通水、郵便物の整理、清掃、敷地の草刈りや剪定などが必要です。人が住まない家は湿気がこもりやすく、悪臭や害虫、カビなどが発生しやすいため、定期的な手入れが求められます。
<管理にかかる主な費用の目安>
| 管理内容 | 費用の目安 | 主な作業 |
|---|---|---|
| 自主管理 | 実費 | 換気・通水・清掃・郵便物整理など |
| 管理会社への委託 | 月5,000〜1万円前後 | 定期巡回・通風・通水・外観確認・ポスト整理など |
| 草刈り・剪定 | 数千円〜数万円/回 | 雑草・庭木の手入れ ※敷地面積などで変動 |
たとえば、管理会社へ月7,500円で委託すると年間9万円。草刈りや剪定などが基本料金に含まれない場合は、別途費用がかかります。
維持費を抑えたいからといって、管理費を削りすぎるのも考えものです。通風や通水をせず放置すると、カビや腐朽、設備の不具合などが進み、かえって修繕費用が膨らむ可能性があります。最低限の管理費は、将来の大きな支出を防ぐためのコストともいえるでしょう。
自主管理か委託かは費用だけでなく、無理なく管理を続けられる頻度も踏まえて選ぶのがポイントです。
修繕費の目安(雨漏り・外壁・設備故障)
空き家では、雨漏りや屋根・外壁の破損、雨樋の不具合、水回りの漏水、給湯器などの設備故障によって、まとまった修繕費用が発生することがあります。
| 修繕内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 雨漏り修理 | 5万〜30万円程度 |
| 屋根の部分補修 | 5万〜30万円程度 |
| 外壁の部分補修 | 5万〜20万円程度 |
| 雨樋の修理・交換 | 1万〜30万円程度 |
| 水漏れ・配管修理 | 1万〜10万円程度 |
| 給湯器の交換 | 10万〜30万円程度 |
※建物の状態や工事範囲、使用する設備などによって費用は大きく異なります。
修繕費用は、不具合を放置するほど高額になりやすい傾向があります。たとえば小さな雨漏りでも、水分が建物内部に入り込むと、天井や壁、断熱材の交換、木部の腐朽やカビ、シロアリ被害への対応まで必要になることも。
毎年必ず発生する費用ではありませんが、数年単位でまとまった出費が必要になる可能性があります。年間の維持費を考える際は、修繕予備費も見込んでおくとよいでしょう。
火災保険料と空き家特約の注意点
空き家でも火災や落雷、風災、水災、盗難などのリスクはあります。人の目が届きにくいため、放火や漏水などの発見が遅れ、被害が広がる可能性もあります。
火災保険料は建物の構造や築年数、地域、補償範囲などによって異なりますが、年間1万〜5万円程度がひとつの目安です。
ただし注意したいのが、すべての火災保険で空き家を同じように補償できるわけではないこと。これまで居住用として加入していた火災保険も、空き家になることで契約条件から外れたり、補償内容が変わったりする場合があります。
相続や転居などで家が空き家になったら、まずは保険会社へ状況を伝え、現在の契約を継続できるかどうか確認を。空き家を対象とした保険や特約を利用できる場合は、補償範囲と火災保険料を比較して選びましょう。
光熱費・通信費・交通費・ごみ処分費
電気・水道・ガスは、契約を続けている限り、空き家でも基本料金がかかります。通水や清掃、防犯のために完全停止しにくいケースもあるため、契約アンペアを下げるなど、管理に必要な範囲で契約内容を見直すと固定費を抑えられます。通信回線や警備サービスを利用している場合は、その月額料金も維持費に含めましょう。
遠方に空き家を所有している場合は、見回りのための交通費も見落とせません。電車代や高速料金、ガソリン代などに加え、往復や管理作業にかかる時間も負担になります。管理の手間が大きいほど足が遠のき、建物の劣化や異常の発見が遅れるという悪循環に陥ることもあります。
さらに、不法投棄や残置物の処分など、予定外の費用が発生するケースも。空き家の維持費は、毎月・毎年かかる固定費だけでなく、こうした突発的な支出まで含めて考えておきましょう。
放置すると維持費が増えるリスク

空き家の放置が危険なのは、維持費がかかり続けるだけではありません。税負担の増加や近隣トラブル、資産価値の低下など、所有し続けるうえでのリスクも大きくなります。
さらに、空き家が荒れてくると管理のハードルも上がり、「なかなか現地へ行けない→さらに放置が進む」という心理的な悪循環に陥ることも。その結果、必要な対応を先送りし、負担が利息のように膨らんでしまいます。
ここからは、空き家の放置によって生じる主なリスクを見ていきましょう。
特定空家等の指定で固定資産税が上がる可能性
空き家の管理を放置すると、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、自治体から「管理不全空家等」や「特定空家等」として指導・勧告を受けるリスクがあります。
「管理不全空家等」は放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家を指し、改善指導に従わず自治体から「勧告」を受けると、固定資産税の課税標準額を最大6分の1に減額する「住宅用地の特例」の対象から除外。これにより、翌年度からの税負担が実質的に跳ね上がります。
たとえば200㎡以下の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準額が1/6に軽減されています。この特例が外れると課税標準額が大きくなり、固定資産税の負担も増える可能性があります。
よく「固定資産税が最大6倍になる」といわれますが、これは小規模住宅用地の課税標準額を1/6にする特例が外れることから使われる表現です。実際の税額は負担調整措置などの影響を受けるため、税額そのものが単純に6倍になるわけではありません。
自治体から指導を受けた場合はそのままにせず、雑草の繁茂や外壁の破損、ごみの散乱、倒木のおそれなど、指摘された箇所を早めに改善しましょう。
近隣トラブルと損害賠償リスク
空き家を放置すると、雑草の繁茂や害虫、悪臭、ごみの不法投棄などが原因で、近隣から苦情が寄せられることがあります。
さらに、建物や敷地の管理不足によって周囲に被害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を問われる可能性もあります。
<損害賠償につながる可能性がある例>
| 空き家で起こる事故 | 想定される被害 |
|---|---|
| 屋根瓦・外壁などの落下や飛散 | 通行人のけが、車・隣家などの破損 |
| 庭木・枝の倒木や落下 | 通行人のけが、隣家・車などの破損 |
| ブロック塀・建物の倒壊 | 通行人のけが、周辺建物などの損壊 |
| 管理不良による漏水 | 隣接する建物・土地などへの被害 |
被害によっては、建物や車の修理費だけでなく、けがの治療費なども損害賠償の対象になる可能性があります。
また、不法侵入や放火などの防犯リスクもあります。被害が発生すれば、片付けや修繕、施錠強化など予定外の費用がかかることも。無人の空き家は異常に気づきにくいため、定期的な見回りでトラブルの兆候を早めにつかむことが重要です。
老朽化で売却価格が下がる
空き家期間が長くなるほど建物の劣化が進み、雨漏りやシロアリなど、買主から見えにくい部分への不安も大きくなります。その結果、値下げ交渉につながったり、状態によっては買い手がつきにくくなったりすることもあります。
また、老朽化した空き家をそのまま売却する場合、引き渡し後に雨漏りや柱の腐朽などが見つかると、売主が「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を問われ、補修費用や契約解除を請求されるリスクがあります。個人間で売買する際は契約書に免責特約を設けるか、契約不適合責任が免除される不動産会社への直接買取を検討するのが安全です。
特に築古物件は、建物の状態や担保評価などによって住宅ローンの審査が厳しくなるケースも。融資を利用できる買主が限られれば、売却価格にも影響する可能性があります。一方、修繕した時期や内容を記録しておけば、建物の状態を買主へ説明する材料になります。
空き家は「いつでも売れる」とは限りません。将来的に使う予定がないなら、老朽化によって選択肢が狭まる前に売却を検討するのもひとつの方法です。
維持費を抑える方法(自主管理・管理委託・補助金)
空き家の維持費を抑えるには、現在かかっている費用を整理し、削減できる支出から見直すのがポイントです。
| 方法 | 削減できる主な費用 | 向いているケース | 見直しのポイント |
|---|---|---|---|
| 補助金を活用する | 改修費・解体費など | 改修・解体・利活用を検討している | 自治体の対象工事・補助額・申請期限を確認する |
| 自主管理する | 管理委託料 | 近隣に住み、定期的に通える | 劣化やトラブルにつながる箇所を優先して管理する |
| 管理委託を見直す | 管理委託料・作業費 | 遠方に住んでいる・自主管理が難しい | 巡回頻度やサービス内容を必要な範囲に絞る |
自治体によっては、空き家の改修や解体、利活用などに補助制度を設けています。条件に合えばまとまった費用を抑えられる可能性があるため、工事を始める前に空き家がある市区町村の制度を確認しましょう。
定期的に通える距離なら、自主管理によって管理委託料を抑える方法もあります。換気・通水や雨漏り、外周の状態など、劣化につながりやすい箇所を優先すると効率的です。
遠方などで自主管理が難しい場合は、管理委託をやめるのではなく、契約内容を見直すのも手。巡回頻度や草刈り・剪定など、必要なサービスだけに絞ることで毎月の管理費を抑えられます。
ただし、こうした工夫で出ていくお金の蛇口を細くすることはできても、完全に閉めることはできません。将来使う予定がないなら、節約できる金額と今後も持ち続けるコストを比較し、所有そのものを見直すことも選択肢です。
維持するか手放すかの比較(維持・賃貸・売却・解体)
空き家を持ち続けるか迷ったら、費用だけでなく、管理の手間や将来の利用予定、資産価値も含めて比較しましょう。
| 活用・処分方法 | 向いているケース | 費用面のメリット | 主なリスク・注意点 |
|---|---|---|---|
| 維持(所有継続) | 将来自分や親族が住む予定がある | 初期費用がかからない | 毎年維持費がかかり老朽化が進む |
| 賃貸に出す | 立地が良く賃貸需要が見込める | 家賃収入が得られる | リフォーム費用と空室リスクがある |
| 売却(手放す) | 今後使う予定が一切ない | 維持費ゼロになり現金化できる | 状態が悪いと値引き要求されやすい |
| 解体して更地化 | 建物が倒壊寸前で活用できない | 土地として売りやすくなる | 解体費がかかり固定資産税が上がる |
将来使う予定があるなら維持も選択肢ですが、「なんとなく維持」では、使わない間も費用がかかり、建物の劣化が進みます。
賃貸は家賃収入を得られる一方、築年数や状態によってはリフォームや設備更新が必要です。想定できる家賃と初期費用を比べたうえで検討しましょう。
今後使う予定がなければ売却も検討できます。特に需要が弱い地域では、時間が経つほど建物の劣化が進み、売却しにくくなる可能性もあります。損をしないためにも、早めに査定して現在の市場価値を把握しておくとよいでしょう。
老朽化が進み、そのままの活用や売却が難しい場合は解体も選択肢。ただし、建物を解体して更地にすると「住宅用地の特例」が外れ、土地の固定資産税の課税標準額が最大6倍に戻ります。税負担の急増を緩和する「負担調整措置」があるため実際の納税額そのものが6倍になるわけではありませんが、一般的には実質3〜4倍程度に跳ね上がる点に注意が必要です。
先に解体せず、「そのまま売る」「解体して売る」の両方を査定・比較してから判断すると、余計な出費を避けやすいでしょう。
まとめ|空き家の維持費がもったいないと感じたら最初にやること
「空き家の維持費がもったいない」と感じたら、まずは年間の支払額を一覧で整理することから始めましょう。固定資産税や保険料、光熱費、管理費、交通費、修繕費などを整理すると、気づかないうちに積み重なっていた負担が見えてきます。
また、最低限の管理は、大きな出費を防ぐための先行投資です。雑草や雨漏り、外壁の破損など、放置によって負担が膨らみそうな箇所は早めに対処しておきましょう。
そのうえで、維持・賃貸・売却・解体をなんとなく先延ばしにせず、期限を決めて検討することが大切です。たとえば「あと1年は維持し、その間に査定や賃貸の可能性を調べる」と決めるだけでも、もったいない維持をずるずる続ける状態から抜け出しやすくなります。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






