公開日:2025.07.28 更新日:2026.05.27
家の傾きに使える補助金一覧|火災・地震保険の適用条件を解説
家が傾くと、構造上の危険だけでなく、健康被害や資産価値の低下を招きます。この記事では、傾きの主な原因や、利用できる補助金、火災保険・地震保険の適用範囲、修繕方法と費用相場、そして傾いた家の売却選択肢までを総合的に解説します。
公的支援制度や保険を上手に活用すれば、修繕費用の負担を軽減できる可能性があります。「家が傾いていて、建て替えたいけれどお金がない」とお悩みの方は、まずは現状把握と支援制度の確認から始めましょう。
目次
家の傾きの基礎知識|症状と放置リスク

家の傾きは、軽微な症状から始まります。しかし、気づかずに放置してしまうと、より大きなダメージを招きかねません。ここでは、初期症状と放置した場合のリスクについて見ていきましょう。
家の傾きは、床のわずかな傾斜や段差など、日常の小さな違和感として現れることが一般的です。初期段階では気づきにくいこともありますが、進行するとドアや窓の建て付けが悪くなり、開閉が困難になるなど、明らかな不具合へとつながっていきます。
放置すれば耐震性が低下し、地震時の倒壊リスクが高まるだけでなく、住む人の健康にも影響を与える可能性があります。さらに、修繕費が膨らみやすくなるため、早期の点検と対策が非常に重要です。
また、家が傾いている状態では住宅の資産価値が大きく下がることもあります。建て替えやリフォームを検討する際には、傾きの修正を行っていないと、買い手から敬遠される原因となるでしょう。
ドアや窓の開閉不良は傾きの初期サイン
家の傾きは、ドアや窓の開閉がスムーズにいかなくなるといった形で初期段階に現れやすいです。
たとえば、ドアが床に擦れるようになったり、鍵がかかりにくくなったりする場合は、建物の歪みが原因である可能性があります。これらの症状を発見したら、できるだけ早く住宅診断士や地盤調査の専門業者に相談し、傾きの度合いや原因(土台沈下・不同沈下など)を調査してもらうことが重要です。
家の傾きがもたらす健康被害や耐震性への影響
家の傾きは、単なる構造問題ではなく、生活の質や安全性に直結する重大な課題です。建物が安全に使えない状態になる前に、初期症状を見逃さず、早期の点検・補修を検討することが、修繕費用の抑制にもつながります。特に傾きが目立ち始めた場合には、耐震補強やジャッキアップ工法による修正など、状況に応じた適切な対策を検討する必要があります。
家が傾く原因とは?地盤・老朽化・シロアリなどを解説

家の傾きの主な原因には、地盤沈下・老朽化・シロアリ被害・施工不良などがあり、これらが複合的に影響するケースも少なくありません。特に築年数が長い木造住宅では、複数の要素が同時進行していることも考えられるため、専門家による診断と原因の特定が非常に重要です。
また、新築時に地盤調査や適切な基礎工事がなされていない場合、数年以内に傾きが顕在化するリスクがあります。さらに、気候変動や土地条件の変化により、10年単位でゆるやかに傾きが進行する事例も見られます。
地盤沈下・液状化
地盤が不均等に沈下することで、建物が一方向に傾く現象が起こります。これは地震による液状化現象や、水はけの悪い軟弱地盤、埋立地・造成地で特に多く見られます。こうしたリスクは、地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験など)を通じて早期に把握できるため、必要に応じて地盤改良や杭打ちなどの対策を講じることが重要です。
老朽化・施工不良
建物は年数の経過とともに劣化が進み、基礎や柱の歪み・沈み込みが起こることで傾きや構造的なゆがみが生じます。特に施工段階での基礎配筋ミスやレベル調整不良があった場合、早期から不具合が現れるリスクがあります。施工時の図面や瑕疵担保責任保険の記録があれば、状況の把握と対応に役立ちます。
シロアリ被害
シロアリによる被害は、住宅の構造躯体である土台や柱を内側から侵食し、建物の荷重バランスを崩す要因となります。目視では発見が難しく、基礎の一部が沈下することで家全体が傾くケースも少なくありません。定期的な防蟻処理とプロによる点検が、長期的な傾きリスクの回避につながります。
家の傾きに使える補助金|災害支援制度と申請条件を解説
家が傾いた場合、その原因や被害の程度が特定の公的要件を満たしていれば、支援金や補助金の給付対象となることがあります。建て替えや修繕を行いたいものの資金に余裕がないという場合は、まずは公的な支援制度が利用できるか確認しましょう。
被災者生活再建支援制度の概要
住宅が傾いた直接の原因が、地震や台風、土砂崩れといった自然災害(被災者生活再建支援法が適用される大規模災害)に起因する場合、「被災者生活再建支援制度」を活用できる可能性が高くなります。
自治体が発行する「罹災(りさい)証明書」において、住宅の被害状況が一定の判定基準(中規模半壊以上など)を満たしている世帯に対し、生活や住宅の再建を後押しするための支援金が支給されます。
災害時の傾き認定基準
罹災証明書の発行にあたり、建物の「傾き(沈下・傾斜)」は、内閣府の指針に基づき専門の調査員が計測して等級を判定します。
- 全壊(柱の傾きが1/20以上/約2.9度以上): 構造の前提が崩壊しているとみなされ、最も手厚い支援の対象となります。
- 大規模半壊(柱の傾きが1/30以上1/20未満): 構造に重大な被害があると判定されます。
- 中規模半壊(柱の傾きが1/60以上1/30未満): 令和2年の法改正により新設された区分で、この段階でも支援金の支給対象となります。
- 半壊(柱の傾きが1/100以上1/60未満): 原則として支援金の対象外ですが、倒壊リスク等により「やむを得ず家を解体した(解体世帯特例)」に該当する場合は全壊と同等の支援が受けられるケースがあります。
災害時以外の公的補助金
自然災害ではない通常時の「不同沈下(地盤の圧密沈下)」や施工不良、シロアリ被害による傾きの場合、上記の災害支援金は使えません。しかし、傾きを修正する工事が自治体の定める「耐震改修(住宅耐震化)」の基準を満たしている場合、各自治体が独自に実施している耐震改修補助金やリフォーム助成金を利用できるケースがあります。補助金の上限額や条件は市区町村ごとに異なるため、工事を契約する前に必ず地元の役所の建築指導課などの窓口へ相談しましょう。
家の傾きに活用できる保険|地震保険・火災保険

公的な補助金と合わせて確認したいのが、加入している損害保険の適用可否です。保険を上手に活用できれば、自己負担額を大幅に抑えてジャッキアップなどの修繕工事や建て替えを進めることができます。
地震保険の補償範囲と傾きの認定基準
住宅の傾きが地震、噴火、またはこれらによる津波を原因とする「不同沈下」によって生じたものである場合、火災保険ではなく「地震保険」の補償対象となります(※通常の火災保険では地震由来の被害は一律で免責となります)。
地震保険の損害認定は、建物の主要構造部(基礎・柱・壁・屋根など)の被害状況や「建物の傾斜度」に基づき、以下の4段階で判定され、契約している保険金額の一定割合が支払われます。
| 損害区分 | 傾斜度(柱の傾き)の目安 | 支払われる保険金の額 |
| 全損 | 1度を超える傾き | 保険金額の 100%(満額) |
| 大半損 | 0.8度超 〜 1度以下の傾き | 保険金額の 60% |
| 小半損 | 0.5度超 〜 0.8度以下の傾き | 保険金額の 30% |
| 一部損 | 0.2度超 〜 0.5度以下の傾き | 保険金額の 5% |
※0.2度(1000分の3.5の傾き)未満の軽微な傾きや、主要構造部へのダメージが認められない場合は不担保(支払対象外)となります。
火災保険で補償されるケースと注意点
火災保険は原則として火災や落雷、破裂のほか、オプション(特約)による風災・雪災・水災といった自然災害を補償するものです。
例えば、「大雨で裏山が土砂崩れを起こし、その土砂に押されて家が傾いた(水災・落雷等の該当特例)」といった明確な外因による災害であれば、火災保険の補償対象となる可能性があります。
しかし、これといった引き金のない「地盤そのものの経年劣化(圧密沈下)」や、新築時の「施工不良」が原因でゆっくり家が傾いてきたケースについては、明確な突発的自然災害とは認められないため、火災保険・地震保険ともに原則として補償対象外となります。
補助金・保険の申請に必要な書類と手続きの流れ

補助金や保険を受けるには、所定の書類の提出と正式な手続きが欠かせません。スムーズに進めるためにも、あらかじめ必要書類と申請の流れを把握しておくことが重要です。手続きの遅れや書類の不備によって、支給が遅れたり申請期限を過ぎたりするリスクもあるため、早めの準備が求められます。
自治体や保険会社に連絡を取る際は、「住宅がどのような被害を受けたのか」「傾きに気づいた時期」「被害の進行状況」などを具体的に説明できるよう、記録を残しておくと手続きが円滑に進みます。
補助金の申請では、所定の申請書類のほかに、所有者確認書類や修繕見積書などが求められる場合があります。不備があると再提出が必要となり、手続き全体が遅延する可能性があるため注意が必要です。
保険金の請求手続きにおいても、被害状況を証明する資料の提出が不可欠です。傾いた建物の全景・近景の写真、破損箇所の詳細写真、診断業者の調査報告書、工事見積書などをそろえておくことで、客観的な証拠として認定されやすくなります。
罹災証明書・被害届などの取得方法
災害時に家が傾き、被災者生活再建支援制度などを利用する場合、まずは役所や自治体に被害の届け出を行い、罹災証明書を取得する流れになります。自治体職員による現地調査が行われ、被害認定の等級が決定されるケースが一般的です。
罹災証明書の交付までには日数を要する場合があり、災害直後は申請が集中するため、早めの届け出が推奨されます。証明書の写しは、補助金申請・保険請求の両方に使用されることが多いため、大切に保管してください。
補助金と保険の併用は可能?
原則として、補助金と保険金の併用は可能です。補助金は公的支援制度であり、地震や風水害などで住宅に重大な損害があった場合に支給されます。一方、保険金は民間事業者との契約に基づく支払いであり、補助金と目的が重複しない限り、併用が認められるのが一般的です。
たとえば、補助金により住宅の再建費用の一部をまかない、保険金で残りの自己負担分を補填するという形が取られることがあります。ただし、自治体ごとの運用方針や保険会社の契約内容によって制約が異なる場合があるため、事前に確認しながら進めることが大切です。被害認定の等級や支給上限額に注意しつつ、計画的な申請を心がけましょう。
傾いた住宅の修繕費用はいくら?工法別に比較・解説

傾いた家を修繕する方法には複数の工法があり、工期や費用もさまざまです。ここでは代表的な修繕方法と目安の費用を紹介します。
家の傾きを直す工法は大きく分けて、建物の土台を持ち上げる方法(ジャッキアップなど)、地盤を補強する方法(薬液注入など)、そして建物自体を補強する方法(耐震補強等)の3つに分類されます。選択のポイントは、傾きの根本原因と建物構造、地盤の状態、さらに予算や工期といった要素を総合的に検討することです。
実際の修繕費用は、数十万円から数百万円台が一般的ですが、傾斜の程度や建物の規模、地盤改良の有無によっては1000万円近くかかるケースも報告されています。最適な工法は個別の状況によって異なるため、経験豊富な専門業者の診断を受けた上で、複数の見積もりを比較することが推奨されます。
ジャッキアップ工法・薬液注入工法など各種工法
ジャッキアップ工法は、建物を一時的に持ち上げて基礎や支持部を調整・補強する方法で、傾きの是正と水平復旧を同時に実現します。地盤に問題がある場合は、地盤改良工事を並行して実施することで再沈下の防止効果も期待されます。
一方、薬液注入工法は、地盤内にセメント系やウレタン系の薬液を注入し、空隙を埋めて地盤を強化・安定化させる手法です。作業規模が比較的小さいため、低コストで済むケースもありますが、地質調査によって適用可否を確認する必要があります。
修繕費用の目安と工期のポイント
軽微な傾きであれば、数日〜数週間程度の短期間で工事が完了し、費用も100万円未満で済む場合があります。一方、地盤沈下が広範囲に及び、基礎や構造に重大な損傷があるケースでは、工期が数ヶ月、費用も数百万円以上に達する可能性があります。
費用負担を軽減するには、補助金や保険制度の活用に加えて、複数業者による相見積もりや、工法選定の工夫も有効です。事前に地盤調査と建物診断を受け、長期的な耐久性を見据えた修繕計画を立てることが肝要です。
家が傾いたら売却できる?修繕する場合としない場合の比較

傾きのある家を売却する際、修繕してから売るか、現状のまま売るかという選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを整理して検討しましょう。
修繕してから売却する場合、建物の傾きが是正されることで資産価値が回復・向上し、売却価格が高くなる可能性があります。また、傾きが解消されることで住宅ローン審査や買主の不安材料が減り、取引がスムーズになる場合もあります。ただし、修繕には数十万~数百万円以上の費用が発生し、工期によって売却時期が遅れるリスクもあります。
一方、現状のまま売却する方法は、修繕費の負担が不要で早期に現金化できるメリットがあります。特に現金化を急ぐ場合や、修繕費を回収できる見込みが低いと判断した場合に有効です。ただし、建物の欠陥がある物件は市場価値が低く見積もられ、大幅な価格交渉が発生する可能性が高まります。
また、傾きをそのままにして売却する場合は、民法の「契約不適合責任」に基づく告知義務を果たす必要があります。買主に対して、建物の傾きや不具合箇所を正確に説明しなければ、契約不適合責任を問われるリスクも生じます。そのため、事前にホームインスペクション(住宅診断)を行い、物件の状態を客観的に把握・書面化しておくことが重要です。
家の傾きと補助金・保険に関するよくある質問
Q:地震や災害で家が傾いた場合、どのような公的補助金(支援金)が使えますか?
A:自然災害で家が傾き、自治体の罹災証明書で「中規模半壊」以上の認定を受けた場合、「被災者生活再建支援制度」に基づき最大300万円の支援金が支給されます。また、災害時以外でも、傾きの修正工事が「耐震改修(住宅耐震化)」の要件を満たしていれば、各自治体独自の耐震補助金やリフォーム助成金を利用できるケースがあります。
Q:家の傾き(不同沈下)は、地震保険や火災保険の対象になりますか?
A:地震や噴火、津波が原因で家が傾いた場合は「地震保険」の対象となり、建物の傾き度数(0.2度〜1度超)に応じて5%〜100%の保険金が支払われます。一方、大雨による崖崩れ等を除き、地盤の経年劣化や施工不良による通常の不同沈下は「火災保険」の対象外となるため注意が必要です。
まとめ・総括

家の傾きは放置することで建物の劣化や資産価値の低下、居住者の健康・安全への悪影響など、さまざまなリスクを招く可能性があります。したがって、早期発見と原因の特定、そして適切な対応が不可欠です。災害による傾きであれば、被災者生活再建支援制度や地震保険などの制度を活用することで、修繕費用の負担を軽減できる可能性があります。
また、契約内容によっては火災保険の風災・水災特約などが適用されるケースもあるため、加入中の保険プランを確認し、必要に応じて見直しておくことが大切です。傾きを直すための工法や費用相場は、地盤の状態や建物構造によって大きく異なります。信頼できる専門業者による診断をもとに、自宅の状況に合った工法と費用の見積もりを取得することが重要です。
さらに、傾いた家を売却する場合には、「修繕してから売る」「現状で売る」といった選択肢を比較検討し、告知義務や契約トラブルへの配慮も含めて判断する必要があります。
こうした情報を踏まえつつ、補助金・保険・修繕・売却といった選択肢を整理し、将来の住まい方と資産価値の維持を見据えて、専門家と連携した対応を心がけましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。