公開日:2025.12.05 更新日:2026.09.16
不動産売却と税金を徹底解説|費用・計算方法・節税対策まで網羅

不動産売却では、印紙税・登録免許税・譲渡所得税など複数の税金が課され、税額は所有期間や売却価格によって変わります。
3,000万円特別控除や空き家特例などの制度を活用すれば税負担を軽減できるため、本記事では税金の種類・計算方法・適用できる特例を解説します。
目次
不動産売却にかかる主要な税金とは?

不動産売却時にはさまざまな税金の支払いが必要です。まずは主な税金の概要から確認していきましょう。
| 税金 | 課税されるタイミング | 概要 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 売買契約時 | 契約書に貼付する国税。取引金額に応じて金額が変わる |
| 登録免許税 | 名義変更・抵当権抹消の登記時 | 登記の種類や評価額に応じた税率が課税標準に乗じられる |
| 譲渡所得税・復興特別所得税 | 売却翌年の確定申告時 | 譲渡所得(売却益)に対して課税。所有期間で税率が変わる |
| 住民税 | 売却翌年以降、自治体の納期に応じて | 譲渡所得を基準に算定。原則年4回に分けて納付 |
不動産を売却する際には、契約関連の印紙税や名義変更にともなう登録免許税、さらには譲渡所得税や住民税、復興特別所得税などが関係します。売却価格や所有年数、使途などによって計算方法が変わるため、個々の制度をしっかり理解することが大切です。
特に居住用財産を売却する場合には、軽減税率や特別控除の特例が複数存在します。それらを適切に活用することで、税負担を大幅に抑えられるチャンスもあります。いずれの税金も支払いタイミングや必要書類が異なるため、あらかじめスケジュールを把握して準備を進めると、売却手続きがスムーズに進みます。
印紙税|売買契約書に貼付する税金
印紙税(印紙税法第3条)は、不動産売買契約書の作成時に課される国税です。契約書に貼付する収入印紙の額は取引金額に応じて定められており、不動産譲渡契約書には軽減税率が適用されています(2027年3月31日作成分まで)。小規模取引では数千円規模ですが、高額になるほど印紙税も上がります。
正規の印紙を貼らずに提出した場合、契約は無効になりませんが、過怠税が課される可能性があります。契約締結前に金額を確認し、経費計上しておくと良いでしょう。
登録免許税|名義変更手続きにかかる税金
登録免許税は、不動産の名義変更や抵当権抹消を行う際にかかる税金です。所有権移転や抵当権設定などの登記手続きを行うときに課されるため、売主・買主どちらが負担するかは契約によって異なります。
税率には土地や建物などの用途、評価額に応じた基準があり、具体的な金額は法務局での計算によって決まります。一般的には、登記の種類によって定められた税率を課税標準に乗じて求めます。不動産売却を円滑に進めるためには、登録免許税の計算や支払い時期を理解しておくことが重要です。登記費用の一部としてあらかじめ資金を確保しておきましょう。
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税の仕組みと違い
不動産の売却で手にした利益は「譲渡所得」と呼ばれ、これに対して課される税金が所得税、住民税、復興特別所得税です。これらはまとめて計算されることが多いのですが、正確には所得税と復興特別所得税、そして住民税の3つに分かれます。
住民税や復興特別所得税も、譲渡所得を基準に計算されることから、売却後の確定申告は非常に重要です。適切に申告を行わないと、後から追徴課税やペナルティが発生する可能性があるため注意しましょう。
譲渡所得と課税譲渡所得の計算方法

不動産売却によって得た利益のうち、「譲渡所得」と「課税譲渡所得」の算出方法を解説します。
売却価格の全額が課税対象になるわけではなく、売却価格から取得費と譲渡に要した諸経費を差し引いた利益が「譲渡所得」として扱われ、これを基に所得税・住民税・復興特別所得税が計算されます。課税譲渡所得を求める際は、建物部分の減価償却費を正確に反映することが重要です。保有期間が長いほど累積額が増えるため、購入時の契約書や固定資産税評価証明書を確認して根拠資料を整えておきましょう。
居住用財産の場合は「3,000万円特別控除」や「買換え特例」などの優遇措置を適用できることもあり、これらを適切に活用することが節税の鍵となります。
譲渡所得の基本計算式と減価償却費の考え方
譲渡所得は、所得税法第33条・第38条および同法施行令第85条に基づき、
譲渡所得 = 譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)
で算出します。
取得費には土地・建物の購入代金、仲介手数料、登記費用などが含まれ、譲渡費用には不動産会社への仲介手数料、建物の解体費用、測量費など売却に直接要した経費が該当します。建物の取得費からは、経年による価値の減少を反映する減価償却費を控除します。これを正確に算出することで課税譲渡所得を適切に把握でき、確定申告時の過大納税を防げます。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分・税率
所有期間が5年を超えるかどうかで、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類されます。長期譲渡所得は税率が低く抑えられ、居住用財産では「軽減税率の特例」(特に10年以上保有したマイホームには追加の軽減措置)も活用できます。一方、短期譲渡所得(所有期間5年以下)は税率が高く、売却時期を誤ると想定外の税負担を招くおそれがあります。売却を検討する段階で登記簿謄本を確認し、自身の所有期間を正確に把握しておくことが重要です。
不動産売却時の納税スケジュールと支払い方法

不動産売却にかかる所得税・住民税・復興特別所得税は、売却の翌年に確定申告(原則2月16日〜3月15日)を行い、その後住民税は年4回に分けて納付するのが基本的な流れです。
所得税に加え、住民税も同じ課税所得を基準に算定されます。住民税は自治体ごとの納期に基づいて課税され、原則として年4回に分けて納付します。
所得税の申告・納付は、税務署窓口での納付のほか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えばオンラインでも完結します。一方、住民税は自治体から届く納付書での支払いや口座振替が基本です。スムーズな資金管理のためにも、売却前にそれぞれの支払い手段を確認しておくと安心です。
不動産売却で活用できる代表的な特例・控除
一定の要件を満たすことで、大幅に税金を軽減できる特例や控除制度が用意されています。
| 特例名 | 内容 | 適用期限 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除(居住用財産) | 居住用不動産の譲渡所得から最大3,000万円を控除 | 期限の定めなし(恒久的な措置) |
| 買換え特例 | 新居への買換え時、譲渡益への課税を将来に繰り延べ | 2027年12月31日まで |
| 10年超所有の軽減税率の特例 | 所有期間10年超のマイホームに低い税率を適用 | 期限の定めなし(恒久的な措置) |
| 空き家特例(相続した空き家の3,000万円控除) | 被相続人の居住用家屋を売却した場合に最大3,000万円を控除(相続人が3人以上の場合は2,000万円) | 2027年12月31日まで |
特に居住用財産に関する制度は充実しており、マイホームを売却する際には数百万円規模の節税が可能になる場合もあります。
買換え特例は2027年(令和9年)12月31日までに売却した場合に適用できる時限措置です。恒久的な制度ではないため、利用を検討する場合は早めに確認しましょう。
相続によって取得した不動産を売却する場合も、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」などの相続特例が適用されるケースがあります。これらを活用すれば、実質的な手取りを大きく確保できるでしょう。
マイホーム売却時の3,000万円特別控除
マイホームを売却する際に最も代表的な制度が「3,000万円特別控除」です。居住していた家屋や敷地を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。
適用を受けるには、「自分が住んでいる家を売ること(住まなくなった場合は、その日から3年を経過する年の12月31日までに売ること)」「配偶者や親族など特別な関係にある人への譲渡でないこと」(同条第2項)などの要件を満たす必要があります。この控除を適切に活用すれば、たとえ大きな売却益が出ても課税額を大幅に抑えられるため、売却時期を見据えた計画的な活用が重要です。
買換え特例・10年超所有軽減税率の活用
買換え特例は、マイホーム売却後に一定要件を満たす新居を取得した場合、譲渡所得の課税を将来に繰り延べられる制度です。また、所有期間10年超の居住用財産に適用される「軽減税率の特例」は、通常よりも低税率で課税されるため、長期所有者に有利な措置といえます。
これらはいずれも適用要件が厳密に定められており、申請手続きや添付書類の不備があると適用が認められない場合もあります。売却前に税務署や専門家に確認しておくことが重要です。
相続不動産の売却で使える特例と注意点
空き家特例は2027年(令和9年)12月31日までに売却した場合に適用でき、控除額は相続人が2人以下なら最大3,000万円、3人以上の場合は最大2,000万円になります(令和6年1月1日以後の譲渡が対象)。
相続税評価額や相続税の支払い時期によって譲渡所得が変動するため、評価方法の確認が不可欠です。取得費が不明な場合には概算取得費(売却額の5%)を用いることも可能ですが、できるだけ正確な資料を揃えることで不要な税負担を避けられます。また、相続した不動産を短期間で売却すると短期譲渡所得として高税率が適用されるため、所有期間の計算方法と売却タイミングを慎重に見極めましょう。
シミュレーション事例|売却益が出た場合と出なかった場合
仮の数値例を用いて売却益が生じたケースと損失が出たケースの税負担を比較し、重点ポイントを確認します。
例えば、購入価格2,000万円の不動産を3,000万円で売却した場合を考えてみましょう。取得費と諸経費を差し引いて譲渡所得を算出すると、数百万円程度の利益が出るケースがありますが、3,000万円特別控除や買換え特例などを使えば大幅に税負担を減らせます。
一方、購入価格2,000万円の不動産を1,500万円で売却し、譲渡所得がマイナスになった場合、損益通算による還付が受けられるのは自分が住んでいた「居住用財産」の譲渡損失に限られます。相続した空き家など居住実態のない物件の売却損は、原則としてこの特例の対象外である点に注意が必要です。
こうしたシミュレーションを事前に行うことで、どの程度の税金が発生するのか、どの特例や控除を使ったときに最大の節税効果を得られるのかが明確になります。
不動産売却時の節税対策とポイント

課税額を正確に把握しつつ、無駄な支出を抑えて節税を行うにはどうすればよいでしょうか。ここでは、具体的な対策と実務上の注意点を整理します。
まず、取得費や譲渡費用に関する領収書・契約書などを確実に保管しておくことが基本です。取得費を正確に算出できれば、その分譲渡所得が小さくなり、結果的に税負担を軽減できます。
また、売却のタイミングを慎重に見極め、短期譲渡所得(5年以下)ではなく長期譲渡所得(5年超)として扱われるよう計画すると、税率差によって節税効果が期待できます。
取得費が不明な場合の対処法と注意点
購入時の契約書や領収書が見つからない場合、概算取得費として売却価格の5%を取得費とみなせます。ただし、実際の購入額が大きい場合には概算を用いると不利になるため、可能な限り実際の取得費を示す資料を探しましょう。
また、過去に行ったリフォームや増改築の費用も条件を満たせば取得費に含められます。古い書類でも金額の記録があるものは大切に保管することが、長期的な節税につながります。
確定申告に必要な書類と手続きの流れ
譲渡所得の確定申告には、売買契約書・譲渡費用の領収書・取得費を証明する書類などが必要です。
売買契約書、譲渡費用の領収書、取得費を証明する書類を揃えます。
3,000万円特別控除は住民票の写し、買換え特例は新居の登記事項証明書などが必要です。
取得日・売却日・譲渡価格を正確に記載し、計算過程を明示します。
税務署窓口またはe-Taxで、繁忙期を避けて早めに提出します。
特例を利用する場合、「3,000万円特別控除」では住民票の写し、「買換え特例」では新居の登記事項証明書など追加書類を提出します。
申告書には取得日・売却日・譲渡価格を正確に記載し、計算過程を明示することが求められます。添付書類の不備があると特例が適用されなかったり、追徴課税の対象となる場合があるため注意しましょう。
申告は税務署窓口のほか、電子申告(e-Tax)も利用可能です。繁忙期を避け、早めに準備を進めることが望まれます。
適切な売却時期と高値売却のコツ
不動産の売却時期は、税率面と市場動向の両方を考慮する必要があります。短期・長期の区分(5年基準)を意識しつつ、税率が有利になる時期を選ぶのが賢明です。
高値で売却できれば譲渡所得が増えますが、その分税負担も上がります。したがって、節税特例を組み合わせて実質的な手取りを最大化することが重要です。
まとめ|知識を活かして不動産売却を成功させよう
不動産売却では、印紙税・登録免許税に加え、譲渡益に応じた譲渡所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。
3,000万円特別控除や買換え特例、相続した空き家なら空き家特例など、要件を満たす特例を活用できるかどうかで手取り額は大きく変わります。特例には期限や要件があるため、売却を具体的に検討し始めたら、早めに専門家や査定窓口に相談して自分のケースに合う制度を確認しておくと安心です。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。






