公開日:2026.09.24 更新日:2026.08.31
NEW空き家が倒壊したときの責任は誰にある?所有者・相続人の法律と対策

「誰も住んでいない空き家が倒壊した場合、誰が責任をとるの?」と不安に感じる方は多いですよね。空き家であっても、建物の安全性に問題があり、それによって被害が発生した場合は、所有者が損害賠償責任を問われる可能性があります。
さらに、未登記の空き家や、兄弟などで共有している空き家は、責任の所在がわかりにくくなりがちです。また、地震や台風をきっかけに倒壊した場合でも、以前から建物の劣化を放置していたなどの事情があれば、自然災害だからといって必ずしも責任を免れられるとは限りません。
そこでこの記事では、空き家が倒壊したときに誰が責任を負うのかを中心に、所有者・相続人・共有者それぞれの考え方や、民事・行政・刑事上の責任について解説します。あわせて、倒壊が起きた直後の対応や、責任問題を防ぐために確認しておきたいことも紹介します。
目次
空き家が倒壊したときは原則として所有者が責任を負う

空き家の倒壊責任とは、民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)に基づき、原則として建物の所有者が負う損害賠償義務のことです。
賃貸中などで占有者がいる場合は、以下の順で責任が問われます。
- 第一次責任者(過失責任):建物の占有者(賃借人など)
- 第二次責任者(無過失責任):建物の所有者
まずは、誰も住んでいない空き家と、占有者がいる建物に分けて、それぞれ誰が責任を負うのかを見ていきましょう。
空き家に占有者がいない場合の所有者責任
誰も住んでおらず、占有者がいない空き家では、建物の設置や保存に瑕疵があり、それによって第三者に損害を与えると、民法717条にもとづいて所有者が賠償責任を負う可能性があります。建物全体の倒壊だけでなく、屋根材や外壁の落下、塀の倒壊などによって被害が生じた場合も対象になり得ます。
ここでいう「瑕疵」とは、建物が通常備えているべき安全性を欠いている状態です。たとえば、腐食して落下するおそれのある屋根材や、倒れそうな塀をそのまま放置していた場合などが考えられます。
「遠方で状態を知らなかった」「定期的に見に行けなかった」という事情だけでは、所有者の責任を免れません。誰も住んでいないからこそ、所有者自身が建物の状態を把握し、危険があれば修繕するなどの対応が求められます。
占有者がいる場合の占有者・所有者の責任
賃貸中などで建物に占有者がいる場合は、まず占有者の責任が問題になります。民法717条では、建物の瑕疵によって第三者に損害が生じた場合、占有者が損害を防ぐために必要な注意をしていなければ、占有者が責任を負います。
一方、占有者が必要な注意をしていたことが認められれば、所有者が賠償責任を負います。そのため、建物を貸しているからといって、所有者が倒壊事故の責任から当然に外れるわけではありません。
また、賃貸借契約で入居者と所有者の管理範囲を決めていても、それだけで第三者に対する責任が決まるわけではありません。実際にどのような不具合があり、占有者や所有者がどのように対応していたのかなど、事故までの状況を踏まえて判断されます。
空き家の倒壊で問われる3つの法的責任

空き家の倒壊で所有者に生じる可能性があるのは、被害を受けた人への損害賠償だけではありません。管理状態によっては自治体から改善を求められたり、倒壊によって人が死傷した場合には刑事責任が問題になったりすることもあります。
| 責任の種類 | 根拠となる法律など | 責任の内容 |
|---|---|---|
| 民事責任 | 民法717条(工作物責任) | 被害を受けた人に対する損害賠償責任(治療費や修理代の支払いなど) |
| 行政上の責任 | 空家等対策の推進に関する特別措置法 | 自治体からの指導・勧告・命令、行政代執行(解体費用の請求) |
| 刑事責任 | 刑法(業務上過失致死傷罪など) | 人が死傷した場合に、管理上の過失が認められれば刑事罰に問われる可能性 |
ここでは、空き家の所有者に関係する主な責任を「民事責任」「行政上の責任」「刑事責任」の3つに分けて見ていきましょう。
民事責任|民法717条の工作物責任
前述した、空き家の倒壊によって隣家や通行人などに被害を与えた場合の損害賠償は、民事責任にあたります。
民法717条では、建物や塀などの土地の工作物に設置・保存上の瑕疵があり、それによって第三者に損害が生じた場合の責任を定めています。占有者がいない空き家では、所有者が賠償責任を負う可能性があります。
そのため「空き家の状態を知らなかった」「遠方に住んでいて確認できなかった」というだけで、所有者の責任がなくなるとは限りません。倒壊前の建物の状態や、それまでどのように管理・修繕していたかなどを踏まえて責任が判断されます。
行政上の責任|指導・勧告・命令・行政代執行
倒壊の危険がある空き家を放置すると、改正空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)に基づき、自治体から行政指導を受けます。
窓の破損や雑草繁茂などを放置すると、2023年12月施行の改正空家法に基づき「管理不全空家」として指導・勧告の対象となります。「管理不全空家」または倒壊寸前の「特定空家」に指定され、自治体から勧告を受けると、いずれの段階でも固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1減額)が解除され、税負担が最大約6倍に跳ね上がります。さらに、行政代執行によって自治体が解体などを行った場合、その費用は所有者へ請求されます。
刑事責任|管理上の過失がある場合の過失致死傷
空き家の倒壊によって人がけがをしたり死亡したりした場合は、民事上の損害賠償とは別に、過失傷害や過失致死などの刑事責任が問題になる可能性があります。
ただし、倒壊によって人が死傷したからといって、所有者が必ず刑事責任を負うわけではありません。建物の危険を予見できたか、必要な対応を怠っていたか、その管理上の問題と事故との間に因果関係があるかなど、個別の事情によって判断されます。
たとえば、屋根や外壁が落下しそうな状態を把握していたにもかかわらず長期間放置し、その部分が落下して人が死傷した場合などは、管理状況が問題となり得ます。近隣住民や自治体から危険を指摘されていた場合は、いつどのような指摘を受け、どう対応したのかも責任を判断する材料になります。
自然災害・第三者要因がある場合の責任はどう判断する?

空き家の倒壊が地震や台風、第三者の行為をきっかけに起きた場合でも、それだけで所有者の責任がなくなるとは限りません。ここでは、責任の所在を考えるうえで重要な2つのポイントを解説します。
地震・台風が原因でも所有者責任がなくなるとは限らない
地震や台風をきっかけに空き家が倒壊した場合も、自然災害だったという理由だけで所有者の責任が一律になくなるわけではありません。建物が通常備えるべき安全性を保っていたか、その安全上の問題が倒壊や損害に影響したかなどを踏まえて判断されます。
もともと柱の腐食や屋根・外壁の劣化などがあり、それが被害の発生や拡大に関係していれば、所有者側の責任が問題になる場合があります。一方、建物に通常求められる安全性が保たれており、通常では防ぎきれない規模の災害によって倒壊した場合は、その事情も責任判断に影響します。
第三者の行為が関係している場合も原因を個別に判断する
放火や破壊行為、隣接地の工事など、第三者の行為が倒壊に関係している場合は、第三者の行為と建物の状態のそれぞれが、倒壊や損害にどのように影響したのかを確認する必要があります。第三者の行為がきっかけであっても、もともと建物に安全上の問題があり、それが被害の発生や拡大に関係していれば、所有者側の責任が問題になる場合もあります。
責任を判断する際には、建物に安全上の問題があったか、その問題と倒壊・損害に因果関係があるかなどが確認されます。また、被害を受けた側にも危険な場所へ立ち入っていたなどの事情があれば、過失相殺が検討される場合もあります。
相続・共有・相続放棄が絡む場合の責任はどう考える?

名義が故人のままであっても、相続人が責任を問われないわけではありません。また、相続放棄をした場合や、複数人で空き家を共有している場合は、それぞれの立場によって責任や管理の考え方が異なります。
ここでは、相続した空き家の責任を整理するために知っておきたい3つのポイントを見ていきましょう。
相続登記前でも相続人の責任がなくなるわけではない
所有者が亡くなると、相続開始と同時に相続人が権利・義務を包括承継します。2024年4月からは相続登記が義務化されており、遺産分割前であっても法定相続人全員が共有者として管理責任を負います。 相続人が複数いる場合は、遺産分割が終わるまで共同で相続している状態となるため、登記名義が故人のままでも空き家を放置してよいわけではありません。
倒壊のおそれがある場合は、まず相続人のなかで現地を確認する人や連絡窓口を決め、落下しそうな部材の撤去など必要な安全対策を進めましょう。売却や解体など今後の方針は、そのあとで相続人同士で整理すると進めやすくなります。
相続放棄した人は「現に占有しているか」がポイント
相続放棄をした場合でも、その時点で空き家を現に占有している人は、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、その財産を保存する義務を負います。一方、遠方に住んでいて空き家を占有していなかった人まで、一律に保存義務を負い続けるわけではありません。
2023年4月施行の改正民法(第940条第1項)により、相続放棄者の義務は「相続財産を現に占有しているとき」に限定され、名称も「保存義務」に改められました。同居等で事実上支配していた場合は、相続財産清算人や他の相続人に引き渡すまで適切な保存管理を継続しなければなりません。
倒壊のおそれがある空き家を相続放棄する場合は、放棄後にどこまで対応が必要なのかも含めて、弁護士などへ確認しておくとよいでしょう。
共有名義では管理・修繕の役割を決めておく
複数人で空き家を共有している場合は、誰が点検するのか、修繕費を誰が負担するのかが曖昧になり、必要な対応が遅れやすくなります。共有者同士で話し合っている間にも建物の劣化は進むため、管理の役割を決めておくことが大切です。
代表して現地を確認する人や連絡窓口を決め、点検の頻度、修繕が必要になった場合の連絡方法、費用負担などを共有しておきましょう。売却や解体などは必要となる合意の範囲が異なるため、共有者が多い場合や意見がまとまらない場合は、早めに専門家へ相談すると進めやすくなります。
空き家の倒壊で想定される損害

空き家が倒壊すると、建物そのものの修理や撤去だけでなく、周囲の建物や車、人にまで被害が広がる可能性があります。具体的には、次のような損害が考えられます。
- 隣家への損害:瓦や外壁材、建物の一部が倒れ、屋根や窓、カーポート、塀などの破損
- 車への損害:駐車中の車の破損や、走行中の車の事故など
- 道路・周辺設備への損害:倒壊した建物やがれきによる通行の妨げ
- 通行人・近隣住民のけが:倒壊や落下物による通行人や近隣住民のケガ。治療費や休業損害、慰謝料などが発生する可能性がある
- 死亡・後遺障害による損害:ケガを負わせた相手に後遺障害が残るケースや死亡するケース。賠償額が高額になりやすい
特に、人身事故では被害が大きくなりやすいため、事故が起きた場合は救命と安全確保を最優先にします。その後の賠償や責任割合については所有者だけで判断せず、事故の状況や保険の補償範囲を確認しながら、保険会社や弁護士などと相談して進めましょう。
空き家が倒壊した直後にやること
空き家が倒壊した直後は、責任の確認よりも人命と二次被害の防止を優先します。そのうえで、関係先への連絡や記録の保存を順番に進めましょう。
けが人の救護、立入禁止措置。道路をふさぐ場合やガス・電線の異常は110番・119番へ連絡。
安全確保後、自治体の空き家窓口や加入している火災保険会社へ状況を連絡する。
安全な場所から被害状況を撮影し、過去の点検記録や修繕履歴の書類を手元に準備する。
被害者との連絡先交換。個人の判断で賠償を約束せず、保険会社や弁護士に相談し対応を進める。
空き家の倒壊を防ぐための管理・点検方法
空き家の倒壊を防ぐには、建物の劣化を早めに見つけ、危険な状態になる前に対応することが大切です。主な確認項目を以下にまとめました。
| 確認項目 | チェックする内容 |
|---|---|
| 屋根・外壁・基礎 | 屋根材のずれ、外壁や基礎のひび割れ、建物や塀の傾き、雨漏りの有無 |
| 換気・通水・清掃 | 室内の湿気、排水の状態、落ち葉やごみの詰まり、シロアリや害獣の痕跡 |
| 災害前後の点検 | 地震・台風・積雪の前後に、屋根や外壁、雨どい、傾きなどの異常を確認 |
| 点検・修繕記録 | 点検日や写真、修繕内容、見積書や施工記録などを保管 |
大きな傾きやひび割れなどが見つかった場合や、高所など危険な場所を確認する必要がある場合は、無理に自分で点検せず、建築士や工務店などの専門家へ相談しましょう。
空き家を管理できない場合の選択肢
遠方に住んでいる、管理に通う時間がない、修繕費の負担が大きいといった場合は、空き家を持ち続ける方法そのものを見直す必要があります。主な選択肢は次の3つです。
| 選択肢 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 管理会社へ委託する | 定期巡回、換気、清掃、災害後の点検などを任せる | 遠方で通えないが、実家をひとまず残しておきたい場合 |
| 賃貸・売却で空き家状態を解消する | 建物を活用する、または手放して管理負担をなくす | 資産として活かしたい、または現金化して手放したい場合 |
| 修繕が難しい場合は解体を検討する | 老朽化が進み、活用や修繕が現実的でない | 倒壊の危険が高く、修繕費用もかけられない場合 |
倒壊のおそれがある状態では、対応を先送りするほど選択肢が狭まりやすくなります。今後使う予定があるのか、修繕して残せる状態なのかを整理し、早めに方針を決めましょう。
まとめ|倒壊リスクがある空き家は早めに今後の方針を決めよう
空き家は人が住んでいなくても、倒壊によって隣家や通行人などに被害を与えれば、所有者が責任を問われる可能性があります。きっかけが地震や台風だったとしても、もともとの劣化や管理不足が被害を広げたと判断されれば、責任が問題になることもありますので、日ごろから建物の状態を確認し、必要な点検や修繕を行っておきましょう。
そのうえで、定期的な管理が難しい、今後使う予定がないといった場合は、事故が起きるまで抱え続けるのではなく、売却や活用なども含めて今後の方針を早めに考えることが大切です。
とはいえ、空き家は建物の状態や立地によって、最適な選択肢が変わるため、自分で方針を決めるのが難しいこともよくあります。
そんなときは「アキサポ」に相談してみるのも一つの手です。「アキサポ」では、空き家の専門家に活用方法を相談できるほか、空き家を使いたい人とのマッチングにも対応しています。自分だけで今後の方針を決めるのが難しい場合でも、物件の状態や希望を踏まえながら選択肢を整理できるので、管理や活用にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






