公開日:2025.10.26 更新日:2026.09.29
不動産相続を徹底解説!手続き・税金・費用と注意点

「不動産を相続するとき、どんな手続きが必要?」「相続税はどれくらいかかるのだろう?」将来の不動産相続を考えたとき、このような疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
不動産は現金と違って分けにくく、誰が受け継ぐかによって、その後の住まいや管理の負担も変わります。さらに相続登記や税金の申告には期限もあるため、早めに手続きの全体像をつかみ、専門家に相談するかを検討しておく必要があります。
そこでこの記事では、不動産相続の基本的な流れや法定相続人の仕組み、遺産の分け方、税金や費用の目安などを解説します。相続した家に住む予定がない場合の選択肢も、あわせて確認していきましょう。
目次
不動産相続とは

不動産相続とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた土地や建物などの不動産を、法律や遺言に基づいて受け継ぐことです。現金や預金などと違い、不動産は分割や評価が難しく、相続手続き全体の中でもトラブルが生じやすい部分です。
相続で取得した不動産の名義を登記簿に反映するには、法務局で「相続登記」を行います。2024年4月から相続登記は義務化されました。相続による所有権の取得を知った日から原則3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
ちなみに、不動産を相続する際には、相続財産に課税される「相続税」や相続登記を行う際に発生する「登録免許税」、被相続人が生前に納めていた「固定資産税」といった複数の税金が関係してきます。特に相続税は金額が大きくなりやすく、不動産の価値が高いと数百万単位の額になることもあります。
このように、不動産相続は法律・登記・税務といった複数の分野にまたがる複雑な手続きです。法律の知識がないと対応が難しいため、司法書士や税理士といった専門家の助言を受けながら進めるのが現実的です。
不動産相続の手続きの流れ

不動産相続は、財産と相続人を確認し、誰が何を受け継ぐかを決めてから、登記や税金の手続きを進めるのが基本です。遺言書がある場合は分け方や必要な手続きが変わるため、最初にその有無を確認します。
ここでは、不動産相続の手続きを5つのステップに分けて見ていきましょう。
1. 遺言書と相続財産を調べる
まず取り組むべきは、被相続人が残した財産を正確に把握することです。不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書を取得し、不動産の所在地や評価額を確認します。
預金や株式に加え、住宅ローンなどの借金も調べて財産目録にまとめます。不動産だけを見て相続を決めると、あとから債務が判明することもあるため、契約書や郵便物、取引金融機関も確認しておきましょう。
遺言書が見つかった場合は、内容だけでなく形式や保管方法も確認します。自筆証書遺言などは家庭裁判所の検認が必要ですが、公正証書遺言と法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が不要です。封印された遺言書は、自分で開封せず家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封する必要があります。
2. 法定相続人を確定する
次に、被相続人の戸籍に基づいて、法定相続人となる人を調査・確定します。
このとき、家族が把握している関係だけでは、前の婚姻で生まれた子や養子などを見落とす可能性があります。遺産分割協議は相続人全員で行うため、必要な戸籍をそろえ、誰が相続人になるのかを確認することが大切です。
3. 遺産の分け方を決める
遺産の分け方は、遺言書の有無によって変わってきます。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って手続きを進めますが、遺言書がなく、相続人同士で取得する財産を決める場合は、全員で遺産分割協議を行います。
合意した内容は遺産分割協議書にまとめます。不動産を取得する人や対象の土地・建物を明確にし、売却して代金を分ける場合は費用の負担や分配方法も決めておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。
なお、不動産の表示や署名押印に不備があると、登記の際に修正が必要になります。登記を依頼する司法書士に確認しながら作成し、分け方自体で争いがある場合は弁護士へ相談しましょう。
4. 不動産の相続登記を行う
不動産の取得者が決まったら、遺言書や遺産分割協議書などに基づいて相続登記を申請します。相続登記は2024年4月から義務化されており、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です。遺産分割がまとまらず期限内の登記が難しい場合は、相続人申告登記を利用して義務を履行する方法もあります。
なお、必要書類は相続の方法によって異なります。戸籍や住所を証明する書類、申請書などの詳しい準備方法は、相続登記の必要書類をまとめた記事で詳しく解説しています。
5. 相続税の申告・納付を行う
相続税の申告が必要な場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告と納付を行います。申告先は被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。
なお、相続税の申告と納付は期限を過ぎると延滞税や加算税が課されるため、余裕を持って手続きを行いましょう。
相続手続きで確認しておきたい期限
相続手続きには以下の表のように複数の期限が設定されています。
| 手続き | 主な期限・注意点 |
|---|---|
| 相続放棄 | 原則、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述 |
| 相続税の申告・納付 | 原則、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 |
| 相続登記 | 原則、相続の開始と不動産を取得したことを知った日から3年以内 |
相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に相続し、すでに取得を知っていた未登記の不動産も対象となります。申請期限は原則として2027年3月31日までです。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になります。
なお、期限までに遺産分割がまとまらない場合は、簡易に相続登記の申請義務を履行できる「相続人申告登記」を利用する方法があります。ただし、相続人申告登記だけでは不動産の権利関係は確定せず、売却する場合には別途相続登記が必要です。その後、遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内にその内容に基づく登記を行う必要があります。
相続する権利を持つ「法定相続人」とは?

被相続人との関係によって相続人となる順位が決まり、民法では相続人の組み合わせに応じた「法定相続分」も定められています。 法定相続人の順位と法定相続分は以下の表のとおりです。
| 相続順位 | 被相続人との関係 | 法定相続人になる条件 | 法定相続分 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 必ず相続人になる | 子と相続する場合は2分の1、直系尊属と相続する場合は3分の2、兄弟姉妹と相続する場合は4分の3。他の相続人がいなければ全部 | |
| 第1順位 | 子(養子を含む) | いる場合は必ず相続人になる | 2分の1 配偶者がいない場合は全部 複数人いる場合は等分する |
| 第2順位 | 直系尊属(父母、父母がいない場合は祖父母など) | 子やその代襲相続人がいない場合 | 配偶者がいる場合は3分の1配偶者がいない場合は全部 複数人いる場合は等分する |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 子やその代襲相続人がおらず、第2順位の相続人もいない場合 | 配偶者がいる場合は4分の1 配偶者がいない場合は全部 複数人いる場合は等分する |
子が先に亡くなっている場合などは、孫等が代襲相続することがあります。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合なども、その子である甥・姪が代襲相続することがあります。また、父母の一方のみが同じ兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の2分の1です。
なお、法定相続分は遺産を分ける際の法律上の基準です。実際の取得割合は、遺言の内容や相続人全員による遺産分割協議によって異なる場合があります。
遺産の分割方法と遺言書の効力
不動産は現金や有価証券のような動産とは違って、現物を直接分けるのが難しい財産です。そのため、以下のような方法によって分割されます。
| 方法 | 仕組み | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 現物分割 | 土地は長男、預金は次男など、財産をそのまま分ける。土地を分筆して分ける方法もある | 財産ごとの価値に差があると調整が必要 |
| 代償分割 | 一人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を支払う | 不動産を残せるが、代償金を用意する必要がある |
| 換価分割 | 不動産を売却して現金化し、代金を分ける | 売却費用や税金を差し引いた手取り額も確認する |
| 共有分割 | 複数の相続人が持分を持って所有する | 不動産全体の売却には原則として共有者全員の合意が必要 |
遺言書で分割方法や取得者が指定されている場合は、原則としてその内容に沿って手続きを進めます。遺言書がない場合や、相続人全員で別の分け方を決める場合は、遺産分割協議で方法を決定します。
遺言書がある場合の決まりと遺留分の扱い
遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます。ただし、兄弟姉妹以外の一定の相続人には、最低限の取り分である「遺留分」が保障されています。
遺留分の総体的な割合は、直系尊属のみが相続人の場合は算定の基礎となる財産の3分の1、それ以外は2分の1です。各人の遺留分は、これに法定相続分を掛けて求めます。遺言によって遺留分を侵害された場合は、侵害額に相当する金銭を請求できることがあります。
不動産相続手続きにかかる費用

不動産相続の手続きでは、登記や申告に伴ってさまざまな費用が発生します。主な内訳は以下のとおりです。
- 専門家への依頼料:司法書士や税理士に手続きを依頼した場合の報酬。金額は相続登記や相続税申告の内容によって変わり、数万円~数十万円程度
- 必要書類の発行手数料:戸籍謄本・住民票・印鑑証明書・固定資産評価証明書など。1通あたり数百円だが、複数の自治体から取り寄せると数千円規模になることも
- その他の雑費:法務局や役所への交通費、郵送費、書類のコピー代など。遠方の土地を相続する場合は負担が大きくなりやすい
なお、専門家へ依頼するときは、報酬と税金・実費を分けた見積もりを確認しましょう。書類集めを自分で行う場合と、調査から申請まで任せる場合を比較すると、費用と手間の両面から選びやすくなります。
不動産相続に関係する税金

不動産に関係する税金は、登記するとき、相続するとき、所有を続けるとき、売るときで異なります。すべてが相続時に一度にかかるものではないため、発生する場面ごとに確認しましょう。
- 登録免許税
- 相続税
- 固定資産税
- 譲渡所得税
相続する不動産の価値が高い場合、これらの合計が100万円単位になることもあります。税額の事前の試算が必須になりますので、それぞれ算出方法を見ていきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、法務局で不動産の相続登記を行う際に納める税金です。不動産の名義変更に伴って原則として納める必要があり、以下の計算式で求められます。
- 相続登記に関する登録免許税額 = 固定資産評価額 × 0.4%
例えば、課税標準額が3,000万円なら、3,000万円×0.4%=12万円です。
一方、不動産の価額が100万円以下の土地には、要件を満たす場合の免税措置があります(建物は対象外)。適用期限は2027年3月31日までで、申請書への記載も必要なため、法務局の免税措置の案内で対象を確認しておきましょう。
相続税
相続税は、各人の課税価格を合計し、基礎控除額を差し引いた「課税遺産総額」をもとに計算します。基礎控除額は法定相続人の数によって異なり、以下の式によって算出されます。
相続税の基礎控除額の算出式
- 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の数 × 600万円)
なお、相続税の計算で法定相続人の数に含められる養子は、原則として実子がいる場合は1人、いない場合は2人までです。特別養子など実子として扱われる例外もあります。この人数制限は税額計算上のもので、養子の相続権を制限するものではありません。
計算は、まず課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したものとして各人の金額を求め、以下の税率・控除額から算出します。その税額を合計して相続税の総額を算出し、実際の取得割合に応じて配分したうえで、各人の加算や税額控除などを反映します。
相続税の税率と控除額
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | - |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
なお、不動産相続は税負担が大きいため、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例制度が用意されており、適用することで数百万円単位で納税額を減らせる場合があります。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を利用するには、適用後の税額がゼロになる場合でも相続税の申告が必要です。
相続税の控除については、以下の記事で詳しく説明しています。
相続税の基本を徹底解説|初心者向けにわかりやすく仕組み・税率・控除を紹介
固定資産税
固定資産税は、原則として毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。所有者が亡くなった場合は、未納分を含めた納税義務を相続人が引き継ぐことがあります。
固定資産税の額は、毎年市区町村から送られてくる、固定資産税の納税通知書で確認できます。空き家でも課税されるため、取得後の管理費とあわせて毎年の負担を確認しておきましょう。翌年の税額は評価替えや建物の解体などでも変わるため、前年の金額は目安として扱います。
譲渡所得税
相続した不動産を売却し、利益が出た場合は、その譲渡所得に所得税・住民税などがかかります。基本となる計算式は「売却価格-取得費-譲渡費用」です。適用できる特別控除があれば、さらに差し引きます。
| 売却した年の1月1日時点の所有期間 | 税率(復興特別所得税を含む) |
|---|---|
| 5年以下:短期譲渡所得 | 39.63% |
| 5年超:長期譲渡所得 | 20.315% |
所有期間と取得費は、原則として被相続人から引き継ぎます。購入時の売買契約書などが残っていれば取得費の確認に役立つため、相続時にほかの資料とまとめて保管しておきましょう。
相続した家に住まない場合の選択肢

相続した家に住む予定がない場合は、売却する、貸す、管理しながら保有するなどの方法があります。遠方で管理が難しいのか、思い出のある家を残したいのかによっても、合う方法は変わります。
売却を考えるなら、物件の状態と売却価格の目安を確認します。貸す場合は、必要な改修費や賃貸需要、管理の負担を調べましょう。しばらく保有する場合も、換気・通水・草木の手入れを誰が行うか決めておく必要があります。
アキサポでは、空き家の活用や売却に関するご相談を受け付けています。相続した家を残したい方には賃貸での活用、手放したい方には売却など、物件の状態やご希望に応じて使い道をご提案します。
A1. 相続放棄という方法がありますが、不動産だけを選んで放棄することはできず、預貯金などの財産や借金も引き継がなくなります。原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。財産を処分すると放棄できなくなる場合があるため、検討中は早めに弁護士などへ相談しましょう。
A2. 共有名義にすることはできます。ただし、不動産全体の売却には原則として全員の同意が必要で、管理費や修繕費の分担も決めておく必要があります。将来の使い方まで話し合い、一人が取得して代償金を支払う方法や、売却して代金を分ける方法とも比較しましょう。
A3. 自分で申請することもできます。相続の方法に合った戸籍や遺言書・遺産分割協議書などを準備し、法務局の申請案内を確認しましょう。相続人が多い、相続が何代も続いている、書類の準備が難しいといった場合は、司法書士への依頼を検討するとよいでしょう。
まとめ|不動産相続は手続きとその後の使い道をあわせて考えよう
不動産相続を進めるときは、財産と相続人を確認し、期限のある手続きから準備を始めましょう。家族で話し合う際には、誰が受け継ぐかに加えて、その後に住むのか、貸すのか、売るのかまで共有しておくと、管理や費用の負担も見通しやすくなります。
相続した空き家の使い道に迷ったときは、アキサポへお気軽にご相談ください。ご家族の思いと物件の状況を踏まえて、これからの選択肢を一緒に考えていきましょう。
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この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






