公開日:2026.08.28 更新日:2026.07.31
NEW地方に移住するには?仕事・費用・住まいの準備と始め方を解説

地方に移住するとは、都市部から離れた郊外や自然豊かな地域へ生活の拠点を移すことです。「地方に移住してみたい」と思っても、自分にもできるのかと不安になる方は多いと思います。特に、交通や仕事などの面で不安が残ると、どうしても一歩を踏み出しにくいですよね。
そんなときは「どのような暮らしをしたいのか」という観点から、仕事・費用・住まいを一つずつ確認して、自分に合う移住の形を整理してみましょう。
この記事では、地方移住を考え始めた方に向けて、準備の進め方や移住先の選び方、仕事、費用、住まいについて分かりやすく解説します。地方移住への不安を整理し、次に何をすればよいのか考えるためにお役立てください。
目次
地方移住を始める前に整理したい目的と希望条件

地方移住を考え始めたら、いきなり地域や物件を探しはじめるよりも、自分が移住に求めていることの整理から始めてみましょう。
実現したい暮らしや今の生活で感じている不満が分かれば、自分に合う地域を判断しやすくなるでしょう。反対に、目的や希望条件が曖昧なままだと、魅力的に見える地域が多く、候補を絞れなくなってしまいます。
地方移住でどんな暮らしをしたいか考える
まずは、地方移住によって実現したい暮らしを具体的に考えてみましょう。
たとえば、自然の近くで暮らしたい、広い家に住みたい、通勤時間を減らしたい、落ち着いた環境で子育てをしたいなど、移住を考える理由は人によって異なります。
大切なのは「地方ならどこでもよい」と考えないことです。海の近くと山間部では生活環境が大きく異なり、同じ地方都市でも交通や買い物の利便性には差があります。理想の一日や休日の過ごし方を思い浮かべると、希望する暮らしを具体化しやすくなります。
今の暮らしで変えたいことを整理する
実現したい暮らしとあわせて、現在の生活で変えたいことも書き出してみましょう。
住居費が高い、通勤に時間がかかる、人混みに疲れる、子どもをのびのび育てたいなど、移住を考えるきっかけを整理すると、地域選びの条件が見えてきます。
ただし、地方へ移ればすべての悩みが解決するとは限りません。通勤時間を減らせても車での移動が増えたり、家賃が下がっても収入が減ったりする可能性があります。「何を変えたいか」だけでなく「代わりにどのような負担なら受け入れられるか」まで考えておくことが大切です。
地方移住のメリット・デメリットを知っておく
地方移住には多くの魅力がありますが、暮らし方によっては不便を感じることもあります。主なメリットとデメリットを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 住まい | 都市部より住居費を抑えやすく、広い家や庭付きの物件を選びやすい | 築年数が古い物件では、修繕費や暖房費がかかることがある |
| 生活環境 | 自然が身近にあり、人混みや騒音から離れて暮らしやすい | 買い物や娯楽の選択肢が少なく、移動に時間がかかる場合がある |
| 仕事 | 通勤時間を減らせるほか、リモートワークを続けられる場合もある | 求人の種類が少なく、収入が下がる可能性がある |
| 交通 | 渋滞や満員電車の負担を減らしやすい | 車が必要な地域では、購入費や維持費がかかる |
| 医療・教育 | 落ち着いた環境で子育てしやすい地域もある | 医療機関や学校、習い事の選択肢が限られる場合がある |
| 人間関係 | 地域の人と助け合えるつながりを持ちやすい | 近所付き合いや地域活動を負担に感じることがある |
メリットとデメリットのどちらを重く感じるかは、家族構成や働き方、車を運転できるかどうかによって変わります。一般的なイメージだけで判断せず、自分や家族にとって受け入れられる条件かどうかを考えることが大切です。
地方移住は何から始めればいい?

地方移住の準備は、希望条件の整理、現地確認、仕事・住まい・時期の決定という順序で進めます。一度に決めようとせず、判断材料を一つずつ集めましょう。
ここでは最初に決めておきたい3つのポイントを順番に見ていきましょう。
実現したい暮らしや働き方を書き出し、譲れない条件を2〜3個に絞って候補地を比較します。
スーパー、病院、学校、駅、住宅地などを回り、実際の買い物や移動を体験します。
仕事と収入の見通しを立て、通勤範囲や予算に合う住まいを探したうえで、移住時期を決めます。
希望条件に合う地域を探す
まずは自分が望む暮らしを実現できそうな地域を探しましょう。このとき、人気の地域から選ぶのではなく、自分や家族の希望条件に合うかどうかを基準にするのがポイントです。
条件は、以下のような項目を書き出してみましょう。
- 海・山・田園など、どのような自然の近くで暮らしたいか
- 庭付き住宅や古民家など、どのような家に住みたいか
- 家庭菜園、アウトドア、地域活動など、休日をどう過ごしたいか
- 通勤を減らす、在宅で働くなど、どのような働き方をしたいか
- 子どもにどのような環境で育ってほしいか
- 地域の人とどの程度関わりたいか
- 都市部の便利さをどこまで残したいか
書き出す際には、すべての希望を満たす地域を探すのは難しいため「譲れない条件」と「妥協できる条件」に分けるのがポイントです。譲れない条件を2〜3個に絞ると、候補地を比較しやすくなります。
現地を訪れて暮らしやすさを確かめる
候補地が絞れたら、実際に現地を訪れて生活環境を確認してみましょう。現地では観光地だけでなく、スーパー、病院、学校、駅、住宅地など、日常的に利用する場所をしっかり見て回ってください。平日と休日、昼と夜など、時間帯で環境は変わるので、できれば複数回訪れた方がよいです。
また、お試し住宅や短期滞在制度があれば、数日から数週間暮らしてみるのもおすすめです。実際に買い物や移動を体験することで、自分にとって許容できる不便かどうかを判断しやすくなります。
仕事・住まい・移住時期を順番に決める
仕事・住まい・移住時期については、これらを別々に考えるのではなく、関連づけながら決めていくことが大切です。
具体的には、まず仕事と収入の見通しを立て、その後に通勤範囲や予算に合う住まいを探します。仕事が決まれば、住むエリアや必要な車の台数、毎月使える住宅費も考えやすくなります。
ただし、リモートワークを続ける場合や十分な貯蓄がある場合は、先に賃貸住宅を決めてから現地で仕事を探す方法もあります。自分の収入状況や家族構成に合わせて、無理のない順番を選びましょう。
仕事と住まいの目途が立ったら、退職日や入社日、賃貸契約、引越し、子どもの転校などから逆算して移住時期を決めます。
自分に合う移住先はどう選ぶ?
移住先が自分に合うかを見極めるには、その地域で無理なく生活を続けられるかを考えることが大切です。観光資源や地域の雰囲気も大切ですが、日常生活に支障が出てしまうと、長く住み続けるのが苦痛になる恐れがあります。
ここでは特に見ておきたい以下の3点を解説します。
| 確認する項目 | 主に確認したいこと | 現地で見るポイント |
|---|---|---|
| 買い物・交通・医療機関の利便性 | スーパー、病院、学校、駅、バス停などへの距離 | 坂道や道路状況、公共交通の本数、冬季の移動しやすさ |
| 子育て・教育環境の充実度 | 保育園や学校、塾、習い事、進学先の選択肢 | 通学時間や送迎の必要性、子どもの成長後に生じる負担 |
| 気候や災害リスク | 積雪、暑さ、湿気、洪水、土砂災害、津波など | 季節ごとに必要な備え、避難経路、周辺道路の安全性 |
買い物・交通・医療機関の利便性
まず確認したいのは、日常生活に必要な施設までの距離や位置です。
地方では、最寄りのスーパーや病院まで車で数十分かかったり、必要な店舗が点在していたりすることがよくあります。日常的な買い物に時間がかかるのは負担が大きいので、無理なく買い回れるか、食料品や雑貨などを買える店舗が近くにあるかなどは確認しておきましょう。ネット通販を前提に考えるのであれば、配送エリアや配送料なども確認しておきたいところです。
現地を訪れたら、次のような場所まで実際に移動してみましょう。地図上では近く見えても、坂道が多い、冬は通行しにくい、公共交通機関の本数が少ないといった事情があるかもしれません。
- 食料品や日用品を買える店
- 病院・歯科・薬局
- 駅やバス停
- 市役所や金融機関
- 職場や学校
子育て・教育環境の充実度
子どもがいる家庭では、保育園や学校の通いやすさだけでなく、教育環境や将来の進学先まで見据えて移住先を選ぶことが大切です。
地方では、少人数で学べる環境や自然を生かした体験が充実している一方、学校や塾、習い事の選択肢が限られる地域もあります。ただし、地方だから教育水準が低いとは一概にいえません。
実際に、2025年度の全国学力・学習状況調査では、秋田県の公立小学校が一部の教科で全国平均を上回っており、地方にも高い学力水準を示す地域があります。教育環境は自治体や学校によって異なるため、移住先を選ぶ際は、通学先や学習支援、進学先についても確認してみましょう。
また、学校へのアクセスも大切な要素です。小中学校までは近くても、高校進学後に長距離通学や保護者による送迎が必要になる地域もあります。現在の通いやすさだけでなく、子どもの成長に伴ってどのような負担が生じるかまで考えておくと、移住後のミスマッチを減らせます。
気候や災害リスクを確認する
地域の気候や災害リスク、人間関係も、長く暮らすうえで欠かせない確認事項です。
たとえば、積雪が多い地域では除雪や冬用タイヤが必要になり、暑さや湿気が厳しい地域では冷房費や住宅のカビ対策が負担になることがあります。年間を通じた気温や降水量だけでなく、実際に暮らすうえでどのような備えが必要かを確認しましょう。
また、ハザードマップを使って、洪水や土砂災害、津波などのリスクも調べておく必要があります。物件そのものが安全でも、避難経路や周辺道路が災害の影響を受けやすい場合があるためです。
地方に移住したら仕事はどうする?

地方移住後の働き方は、現在の仕事を続ける、現地で転職する、新しい働き方を選ぶという三つに整理できます。収入の安定性や勤務地の条件を下記の表で比べてみましょう。
| 選択肢 | 主な働き方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現在の仕事を続ける | リモートワーク、支店への異動、出社と在宅勤務の併用 | 収入やキャリアを維持しやすく、移住後の生活設計を立てやすい | 会社の勤務地規定や出社頻度、通信環境を事前に確認する必要がある |
| 現地で仕事を探す | 地方企業への転職、自治体やハローワークの求人を活用する | 地域に根付いて働きやすく、通勤時間を抑えられる場合がある | 都市部より求人の種類が少なく、収入が下がる可能性がある |
| 新しい働き方を選ぶ | 複業、フリーランス、起業、地域おこし協力隊 | 働く場所を選びやすく、地域とのつながりも作りやすい | 収入が安定するまで時間がかかることがある |
今の仕事を続ける選択肢には、収入を維持しやすく、移住後も生活を安定させやすいメリットがあります。ただし、勤務形態は会社によって異なり、完全リモートが認められている場合もあれば、月に数回の出社が必要な場合もあります。将来的に経営方針や人事制度が変わり、出社を求められる可能性もある点も無視できない要素です。
一方、現地で仕事を探す場合は、地域と深く関わりながら生活しやすくなりますが、現在よりも給与水準が下がる可能性があります。また、都市部に比べて求人の種類が少なく、これまでの経験を活かせる仕事や、本当にやりたい仕事が見つからないこともあるでしょう。
どちらにも決めきれない場合は、複業やフリーランス、地域おこし協力隊などを第三の選択肢として検討するのも一つの手です。
地方移住にはどのくらい費用がかかる?
地方移住の費用は、移動距離、世帯人数、住まいの契約方法、車の要否によって変わります。賃貸の場合も、下見・引越し・契約・家具家電に分け、移住後の生活予備費と合わせて見積もりましょう。
主な費用を整理すると、以下のとおりです。
| 費用項目 | 主な内容・目安 |
|---|---|
| 下見・お試し移住 | 現地までの交通費、宿泊費、レンタカー代など |
| 引越し | 単身で4万~12万円程度が目安。距離や荷物量、時期によって変動する |
| 賃貸住宅の契約 | 敷金・礼金、仲介手数料、前家賃、保険料など。家賃の4.5~5か月分程度が目安 |
| 住宅の購入 | 物件価格に加えて、仲介手数料、登記費用、ローン関連費用、税金、保険料などが必要 |
| 修繕・リフォーム | 屋根や水回り、断熱、給湯設備などの改修費。中古住宅や空き家では特に確認が必要 |
| 車・家具・生活用品 | 車両購入費、冬用タイヤ、家電、カーテン、暖房器具など |
| 移住後の生活資金 | 家賃や住宅ローン、食費、光熱費、車の維持費など、数か月分の生活費 |
住宅の購入においては、中古物件の場合、引き渡し後に見つかった欠陥の補修費用を誰が持つかという「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の範囲を契約書で必ず確認しましょう。修繕・リフォームについても、2026年現在の最新の空き家法(空き家対策特措法)では、適切な管理がされていない空き家は「管理不全空き家」に指定され、固定資産税の優遇措置が解除されて税金が最大6倍になるリスクがあるため、事前の修繕計画が不可欠です。
また、地方では数百万円以下の安い空き家が見つかることもありますが、屋根や外壁、水回り、断熱設備などの状態によっては、購入後の修繕費が物件価格を上回ることもあります。
地方移住の費用は「引越しにいくらかかるか」だけでなく、住み始めるまでの総額と、移住後の収入が安定するまで生活できる資金を合わせて考えましょう。
地方移住で使える支援制度|移住支援金・住宅・仕事

地方移住を支援する制度は自治体によって異なりますが、主に次のようなものがあります。
| 支援制度の種類 | 主な支援内容 |
|---|---|
| 移住・引越し支援 | 移住支援金や引越し費用の補助 |
| 住宅支援 | 住宅購入費や家賃の補助 |
| 改修支援 | 空き家の改修・リフォーム費用の補助 |
| 仕事に関する支援 | 就職・起業・就農に関する支援 |
| 子育て支援 | 子育て世帯への加算や保育・教育支援 |
| お試し移住支援 | お試し移住住宅や現地滞在費の補助 |
代表的な制度に、国の地方創生移住支援事業があります。これは、東京23区に在住していた方や、東京圏から東京23区へ通勤していた方が、対象自治体へ移住して就業・起業・テレワークなどの条件を満たした場合に、自治体から支援金が支給される制度です。
支給額は単身で最大60万円、世帯で最大100万円です。18歳未満の子どもと一緒に移住する場合は、子ども1人につき最大100万円が加算されます。ただし、移住前の居住・通勤期間や移住後の仕事などにも要件があり、支給額や対象者は自治体によって異なります。
自治体独自の制度もあります。例えば熊本市では、熊本県外から移住して中古住宅を購入する方などに、購入費を最大50万円補助しています。ただし、売買契約を結ぶ前に申請し、交付決定を受けなければなりません。
また、山形県河北町では、移住希望者が町での生活を体験できる「ちぇっと移住体験住宅」を用意しています。通常は3泊4日から7泊8日まで利用でき、施設利用料と3日間までのレンタカー利用料は無料です。
最後に、地方移住に関して特に不安を持ちやすい3つのポイントにFAQ形式で回答します。
A. 基本的には、仕事と収入の見通しを立ててから住まいを決めるほうが安心です。勤務先が決まれば、通勤できる範囲や毎月支払える家賃、車が必要かどうかも判断しやすくなります。
ただし、現在の仕事をリモートで続けられる場合や、当面の生活費を十分に用意できる場合は、先に賃貸住宅を決めてから現地で仕事を探す方法もあります。
A. 必要な予備資金は、移住先や家族構成、仕事の状況によって変わります。
移住初期費用のほか、転職後に初めて給与を受け取るまでの生活費、車や住宅の修繕費、元の住まいとの二重費用などを書き出し、何か月分の生活費があれば安心できるかを考えてみましょう。最初から正確に計算できなくても、想定される支出を整理するだけで必要な金額が見えやすくなります。
A. 地方移住では、基本的に車が必要になると考えておくのが現実的です。地方都市の中心部なら車なしで暮らせる場合もありますが、郊外や山間部では、買い物や通院、通勤、子どもの送迎まで車が前提になることが少なくありません。
候補地では、公共交通だけで日常の移動をまかなえるか、実際の生活動線に沿って確認しましょう。
地方移住は不安を一つずつ整理しながら進めよう
地方移住では、すべての希望を満たす地域を探すよりも、理想の暮らしと受け入れられる不便のバランスを見つけることが大切です。仕事や住まい、交通などを具体的に調べていくと、自分が本当に重視したい条件も見えやすくなります。
まずは気になる地域を2〜3か所に絞り、求人や家賃、車の必要性、利用できる支援制度などを比べてみましょう。そのうえで現地を訪れれば、地方移住を憧れのままで終わらせず、現実的な選択肢として検討しやすくなるはずです。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






